新しき年を迎えて
あけましておめでとうございます。
古来より新しき年を厳かな気分で迎え、一年の多幸を願うお正月はめでたきものであり、多くの歌人によってお正月を題材とした歌がうたわれておりますが、万葉集に「物皆は新たしき良し ただしくも人は古りにしよろしかるべし」という詠み人知らずの一首があります。
「新年を迎えて、いろいろと新しい物に取り替えると、やはり物というのはみんな新しいものが良いが、人だけは年を重ねた方が良いものである」といった意味でしょうか。
遥か万葉の時代より豊富な経験や知恵があり、包容力を持ったお年寄りは人々から敬意を払われる存在でしたが、現代社会では老いることが醜く疎ましいものとなってしまいました。
戦後教育が悪かったのか!?いつから日本はこのような国になってしまったのでしょうか...。
昭和天皇が崩御され、国の内外にも天地にも平和が訪れるよう願いを込めて名付けられた「平成」の元号制定から早30年近くが経ち、また介護の社会化を掲げて始まった介護保険制度も15年が経ちましたが、今の日本はその頃、みんなが思い描いていた国となったのでしょうか?
この間、いくつもの内閣が誕生しては国民不在の権力闘争が繰り返され、有効な経済対策も打ち出せずに、未だ本格的な景気回復への道程はほど遠いのが現状です。
気付けば1000兆円以上の借金を抱え、1968年以来半世紀にわたり守り続けて来た「世界第2位の経済大国」の地位も中国に抜かれ、次に控えるインドをはじめとした新興国の発展も目覚ましく、このままでは凋落の一途を辿るばかりであります。
混沌とした時代や閉塞感漂う頽廃的な社会にはいつも強力なリーダーシップを持った為政者が求められますが、昨年再選を果たし、日本では稀な長期政権への礎を築きつつある安倍総理が掲げる新たなキャッチフレーズは「1億総活躍社会の実現」です。
高齢者や女性、青少年らが性差や年齢に関係なく、その能力やキャリアに応じて活躍できる社会を切に願うところです。
そんな難題課題が山積する中にあって、特に喫緊の課題は今や3300万人を超える高齢者への対応であります。
給付と負担のあり方を改めて国民的議論にまで高め、一人ひとりが自身の問題として、どういう社会を築き上げていくのかを真剣に考えなければなりません。
これまで以上に本格的かつ包括的な高齢社会対策の必要性が求められており、元気な高齢者による活力ある地域社会づくりは、官民が紐帯を強めて対応にあたらなければならない緊要の課題であり、制度設計や財政支援が官の大きな役割であるならば、民、取り分け我々医師にできることは、かかりつけ医として介護や認知症予防を通した健康寿命の更なる延伸に取り組んでいくことがその一つとして挙げられます。
全年齢層において、かかりつけ医を持っている方はいない方と比べて医療に対する満足度が高いという日医総研による調査報告があります。
身体のことなら何でもワンストップで相談できるかかりつけ医が求められる一方、医師の側もまたその期待に応えるために、プライマリ・ケアや急変時の対応を担い、地域活動にも積極的に参画する社会的機能を兼ね備えたかかりつけ医でなければなりません。
医師会では今年も様々な施策を通して、引き続きかかりつけ医をはじめとした会員各位の支援を行って参りたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
末筆ながら、皆様のご健勝とご活躍を祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。