時代とともに変化するニーズに合わせ、模範病院としてあり続けます
地域医療の要として、JCHO 移行後1年半が経過-高齢化社会への対応を中京病院・絹川院長に聞く。
◆JCHOへの移行について。特徴など。
昨年4月に、JCHO(独立行政法人地域医療機能推進機構)としてスタートしました。地域包括ケアの要として地域医療に貢献するという、大きな使命が課せられています。
地域医療構想では、地域の特徴を考慮して、それぞれの地域独自の医療提供体制を構築することが求められています。
地域医療という言葉の現実的な射程としては、医療費の抑制、適正化も視野に入っていますが、私たちに与えられた課題としては、超高齢化社会にどのように良質な医療を提供するかだと考えています。
当院は高度急性期病院として地域医療の充実にまい進しており、名古屋市南部と知多半島の一部の地域における急性期の総合的な病院として、一定の評価をいただいています。名古屋の中でも若年層の人口が少なく、高齢化が進んでいる地域です。65歳以上の人口比率は約28%にまで上昇し、まさに国が懸念している超高齢化社会が現実化しています。
また、中京病院は地元では「やけどの病院」としても知られています。重症やけどを扱う病院としては全国のデータでトップを維持しており、三重県、岐阜県、静岡県などからヘリで運ばれてくる患者さんの約8割がやけどの患者さんです。
◆在宅医療のサポート体制などは。
当院が、その診療域よりせまい地域を対象とする在宅医療支援センターになることはありません。急性期総合病院である当院は、専門医集団であり、研修医を含めると200人近い医師が在籍しています。彼らが担ってきた高度で専門的な診療機能は維持、発展させたい。
ただ、高齢者は複数の病気を持っていますので、あまりに専門領域に特化しすぎると専門医の隙間に落ち込む病態が出てくるおそれもある。たとえば8人の専門医がいないとひとりの高齢者を診られないということはあってはならないことです。
これからの臨床医は小児科医以外は必ず高齢者を診療することになりますので、現在、研修医には、総合的な診療能力が大切になる時代になったことを説いています。
具体的には、研修医の2年目に、1カ月間、地域の病院で在宅医療研修を行います。ここでは、訪問看護師に連絡したり、リハビリに連絡をしたりなど、診療以外にやることがたくさんありますので、「在宅医療とはなにか」ということを実際に体験できます。患者の診断だけではなく、在宅医療が医師ひとりではなりたたないことを学ばせたい。
◆これからの中京病院。
急性期病床を削減する国の方針は変わらないと思います。重症患者さんの治療や難しいがんの手術をする医師を手放すつもりはありませんが、高度急性期が孤高の存在として君臨するべき時代ではないでしょう。ひとつの病院ですべてをまかなえるわけではないので、地域の病院と連携をとりながら地域の患者が必要とする医療を提供していきます。そのためには地域の医療施設とは、病診連携だけでなく、病院間の連携会議も開催しています。これからは病院間の連携や情報交換がないと患者さんが正しいところで診療を受けられなくなるので欠かせません。
個人的には、在宅医療がすなわちすべての患者さんの求めるものではないと考えています。家族が仕事をやめて面倒をみれば見かけの医療費は下がるかもしれませんが、はたしてそれで良いのか。介護のための退職が社会的問題になっており、落としどころをさぐるのは簡単ではないでしょう。
前身である社会保険病院は、健康保険を適正に運用するという目的で始まった病院ですが、時代の変化にともなってJCHOに改組し地域医療を推進する病院となりました。しかし、病院の根本的な使命が変わったわけではなく、時代とともにニーズが変化したのだと思います。これからも、その時々のニーズに合わせた模範病院でありたいですね。私たちのモットーは、「中京病院があるこの地域の医療はすばらしいという評価をいただける病院でありたい」です。