寄稿VOL.5|スキルス胃がんの患者会NPO法人「希望の会」理事長 轟哲也さん

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◇色々な治療法の提示

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 腹膜播種を伴うスキルス胃がんの病期(ステージ)はⅣであり、一般に外科根治手術の適応はありません。そのため、標準治療では化学療法、すなわち抗がん剤治療による延命治療及び症状を緩和する治療を行うのが一般的です。従って、主治医は告知した後、当たり前のように抗がん剤治療を勧めてきます。

 通常、患者は、告知の時点でスキルス胃がんやその治療法に詳しいわけではありません。そのため、主治医の勧めに従って抗がん剤治療を開始します。そして、一次選択薬の治療がすぐに開始され、気がつくと二次選択薬に至ってしまいます。三次選択薬、四次選択薬と進み、やがて使える抗がん剤がなくなり、抗がん剤治療は終了となります。このように、ステージⅣにおける抗がん剤治療は、決して治ることを前提としたものではなく、延命やがんの症状緩和を目的としています。

 一方で、ステージⅣであっても、術前化学療法が奏効して腹膜播種が消滅したら、外科手術で病巣を取り除く治療を行う医師もいます。術前化学療法では、抗がん剤の経口摂取や点滴による全身化学療法の場合もあるし、例えば先進医療として行われているような腹腔内に抗がん剤を投与する局所的な化学療法もあります。また、手術中に腹腔内にこぼれたがん細胞を死滅させるために、手術中に温めた抗がん剤で腹腔内を洗う温熱化学療法(HIPEC)もあります。

 さらに、手術にしても、原発巣の胃を中心に最小限の範囲を切除する医師もいれば、再発・転移のおそれのある臓器や部位も切除する医師もいます。

 できるだけ臓器を残してQOL(生活の質)を保ちたければ前者の医師を選択し、再発・転移による将来的なリスクを少しでも減らしたければ後者の医師を選択することになるのでしょうか。

 告知後、医師の勧めに従って抗がん剤治療をしながらネットなどで病気に関する情報を検索しているうちに、標準治療以外の前述したような積極的な治療法が存在することを患者は知ります。

 しかし、腹腔内に抗がん剤を投与する治療法を受けるには、告知後すぐ、例えば抗がん剤治療が始まる前、始まっていても1、2コース程度、期間にして告知後1カ月程度の間にそのような情報に巡り会い、治療を開始しなければなりません。

 一次選択薬を何コースも繰り返した後や二次選択薬や三次選択薬に進んでからでは遅いのです。すでに二次選択薬や三次選択薬に移行していると、腹膜播種に効く抗がん剤に対する耐性ができていることがあります。また、スキルス胃がんの場合は特に進行が速いので、他の臓器に転移していることもあります。そうなると、根治手術不適応となってしまい、標準的な抗がん剤治療を続ける道しか残されていません。つまり、根治を目指す積極的な治療の選択肢はなくなります。

 ステージⅣの患者が、標準治療以外の選択肢があるのを知らずに標準治療のみを続けていき、気づいたときには選択肢がなくなっていたというのは残念でとても悔しいことです。

 実際に、前述した積極的な治療法を私が知ったのは、抗がん剤治療がかなり進んだときであり、手遅れでした。希望の会には、私と同じような悔しい思いをした患者が何人もいます。

 ステージⅣに限って言えば、標準治療から外れる治療法であっても、例え、それがステージⅣの患者全員に効くわけではなくても、一部の患者に効果が見込める治療法であるのならば、抗がん剤治療を始める前に主治医が患者にメリット・デメリットやベネフィット・リスクを十分に説明し、患者が自己責任のもとで治療法を選択し得るような臨床の現場があってもよいのではないでしょうか。

 患者にとって、何が不安かというと、治療開始前であれば医師から提示されている治療法、あるいは治療中であれば実際に行っている治療法が、最も自分に適したものであるか否かということです。

 色々な治療法とそのメリット・デメリットやベネフィット・リスクの説明を受けて、熟考の末に治療法を選択することができれば、迷うことなく治療に専念することができます。主治医との間にも信頼関係を築くことができます。仮に熟考の末選択した治療法で良い結果が出なくても、患者や家族はその結果に納得することができます。医療不信を招くことを避けることができます。

 患者は、治療法に納得していないと、世の中にはもっと素晴らしい治療法があるのではないか、治せる医師がいるのではないかと思ってネット上を検索します。ネット検索では「腹膜播種」、「腹腔内投与」、「温熱化学療法(またはHIPEC)」、「先進医療」、「治験」などの適切なキーワードを入力しないと、上述した積極的な治療法のサイトにたどりつけません。

 このようなキーワードを知らずに安易に検索すると、自由診療の、高額で怪しげな治療法を紹介するサイトばかりがヒットし、患者は一層、混乱してしまいます。

 患者に、何でもかんでも説明すればいいということではありません。標準治療以外に、臨床試験や治験や先進医療の情報など、ある程度、効果が見込めて、なおかつ怪しくない治療の情報でよいと思います。

 また怪しい治療法については、エビデンスのない怪しいものであることを、きちんと伝えた方が、患者が変な民間療法などを選択するのを避けることができると思います。

 主治医には、告知後、標準治療、特にステージⅣの場合の抗がん剤治療を安易に始めるのではなく、いくつもの可能性を示して、患者が最良の治療法を選択するための手助けをしてほしいと願っています。なぜならば、ステージⅣの患者の場合、個々人の人生観や生活の背景によっては、リスク覚悟で手術を選択する人もいるからです。

希望の会ホームページ=http://npokibounokaihp.wix.com/kibounokai轟さんのブログ「スキルス性胃ガンに勝つ」=http://benimitsu.blog.fc2.com/ では医療者への願いだけでなく、患者に対しても「直面している病を受け入れ、向き合い、正しい情報を手に入れるよう努めてほしい」などの願いがつづられている。


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