医療法人社団 和恵会 猿原 孝行 理事長

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患者の尊厳を守るサービスの提供を

 医療法人和恵会は湖東病院のほか、ケアセンターや老健施設、グループホームなどを備え、地域の高齢者医療を支えている。

 猿原孝行理事長に多死社会が進行して死亡の状況や原因がわからない「不審死」が増加している日本の現状とその問題点について話を聞いた。

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病院ホームページのブログを更新するのが日課だと語る猿原孝行理事長。ブログ開設10 年目で、年間365日のうち80%以上更新する。これまでのアクセス数は36 万5千回以上で1日約100人に閲覧されている。

◎急増する不審死

 近年、独居世帯、認知症の人が認知症の人を介護する認認介護世帯の増加で不審死が増えています。誰にも気づかれずにお亡くなりになって数日後に地域の民生委員が様子を見に行くと亡くなっている。政府は在宅への移行を推し進めていますが、そうすると死因がはっきりしない不審死が増加するのです。残された家族にとっては、病院で亡くなり「お父(母)さんは、○○が原因でなくなりました」と言われた方が死因がわかって安心できるのではないでしょうか。

 厚労省は、2018年までに介護療養型医療施設を廃止することを発表していますが、これは日本社会にとって大きな損失だと思います。特別養護老人ホームやサービス付き高齢者住宅などの施設は医師が外部から来ているので、容体が急変した場合にただちに駆け付けることが、困難です。そうすると前述した不審死へとつながりかねません。

 現在、日本では年間40〜50万人が不審死をとげています。その方々全員を司法解剖するのは物理的に不可能です。80万都市の浜松においても、1日平均7・5人の不審死が発生しています。こういった事実を知るにつれて「日本に生まれてよかった」などとは思えなくなりました。

◎患者さんの意思に沿った医療を

 当院では、半数以上の患者さんが死亡退院をしています。死を避けて通れない医療機関ですが、われわれは過剰な診療をせず、患者さんの意思に沿った医療を提供したいとの思いで病院運営をしています。

 高齢化に伴う多死社会においては、過剰に医療が介入していると医療費の膨張に歯止めがかかりません。政府は、経済面からみた切迫感が強いのでしょう。しかし、そのようなプラグマティズム(実用主義)な考えが強まっていくと日本人のアイデンティティーが失われるのではないかと私は危惧しています。

 とは言え、本人の意向を無視した過剰な延命措置を取ることには、問題があります。たとえば認知症の方に胃瘻(いろう)を施すことも、世界の医療の趨勢(すうせい)とは逆行しています。フランスでは認知症の高齢者に対しての胃瘻を10年前から行っていません。その人が自らの力で食べられなくなった時が寿命だという考え方を、日本人も受け入れなければなりませんが、なかなか受け入れられないのが現状です。

 患者さんに水を飲ませようとすると、患者さんが口をつぐむ。その姿を見て、日本人は「水はだめか、それならお茶ならどうだろう」と考えます。水もお茶もだめだった場合はゼリーをあげようとします。

 デンマーク、ドイツ、フランスを視察してみて感じたことは、同様の状況で患者さんが口をつぐんだら、個人の意思だととらえ、それを尊重するためにその後は、水を与えようとはしません。しかし、日本では胃瘻をしようとの発想になるんです。欧米人から見ると虐待と見なされかねない行為です。

 本人の「あらゆる最新の医療技術を駆使して延命してもらいたい」という誓約書があれば別ですが、それ以外の人に延命措置を施すのはいかがなものかと思います。

 本人が望まないのに、ご家族が、「どうしても延命治療してほしい」と言うのは当人の意思を尊重していません。もちろん医療側にも問題があります。訴訟のリスクをおそれ、出来る限りの医療を提供してしまっているのが現状です。

 自分が亡くなるときの姿を想像して、一言でいいから一番身近な人に、どういう最期を迎えたいかを伝えておいた方がいいでしょうね。これからはそういう啓発も必要になってくるのではないでしょうか。

 近所の人の郵便受けに新聞が2日分たまっていたら家に入らせてもらって安否確認する。徘徊している人を見かけたら家まで送る。そういうことを町内会などで徹底しておかないといけないと思いますが、現代の日本では近所づきあいが減っています。隣の住人が誰だかわからないなどというのは都会では普通のことです。

 地域包括ケア制度は、古き良き時代の日本の村落をイメージしているように感じられてなりません。それが都市部に当てはめられるかというと、はなはだ疑問です。

 国が高齢者の地方移住を進めていますが、ある意味では効果的だと言えるかもしれません。高齢者が増えることで、新たな雇用が創出され、地方活性化につながるかもしれませんね。

 当法人の合言葉は「ずっと地元でみなさまの力になります」です。患者さんの尊厳を守り、最良のサービスを提供することが、われわれがこの地域で果たすべき使命だと感じています。


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