愛媛大学大学院 医学系研究科 病因・病態領域 産科婦人科学講座 杉山 隆 新教授 インタビュー

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【11 月は子宮頸がん征圧月間】患者さんから学び、患者さんに還元する

【略歴】1988 関西医科大学卒業、三重大学医学部附属病院産科婦人科学研修医 1993 三重大学大学院医学研究科(博士課程)修了 1995 米国テネシー州バンダービルト大学医学部分子生理生物学教室研究員 2000 大阪府立母子保健総合医療センター産科主任 2002 三重大学大学院医学系研究科病態解明医学生殖病態解明学および附属病院周産母子センター助教授 2007 同准教授 2012 東北大学病院周産母子センター准教授 2013 東北大学病院産科長・特命教授 2015愛媛大学大学院医学系研究科産科婦人科学講座教授

地域もキャンパスにして

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 産婦人科は、連携がとても大切な科です。

 周産期領域では、たとえば胎児に形態異常が見つかった場合には、小児科や小児外科の先生方と出生前から連携し、出生後の管理や手術の準備を行いますし、母体に合併症があるときには、妊娠前あるいは妊娠中の管理を内科とともに行います。

 また、産科関係の救急疾患は大量出血が関連することがあります。状態がかなり悪く、「時間との闘い」という状況の時、病棟で対応することは危険を伴います。このような場合、産科の大量出血関連の救急患者を救命センターで受け入れられる体制が必要となります。救命センターには医師、看護師といった救急疾患に精通したスタッフがいますし、緊急CT検査も行えます。現在、愛媛大学病院においても救急外来で対応できるよう準備を進めているところです。

 腫瘍領域では、婦人科がんが直腸や膀胱(ぼうこう)にまで広がっている場合、適応があれば、麻酔科ならびに外科や泌尿器科、形成外科の協力の下、「骨盤除臓術」が施行されることもあります。このような時は、"チーム愛媛大学病院"で対応することになります。

―あらゆる診療科との連携が重要なのですね。

 病院内だけでなく、地域における連携が大事です。たとえば、この地域はA病院が守る、あちらの地域はB病院がカバーする、といった地域連携が必要だと考えています。

 一方で、「地域別連携」とは異なる「機能分担」も大切です。同じハイリスク妊娠でも、母体の合併症や胎児異常の種類により管理する病院を選別するという方法です。また、妊娠週数が早いことにより胎児がとても小さい時には、基幹病院である大学病院や県立中央病院、赤十字病院で管理する、あるいは妊娠週数が進めば他の総合病院において管理する、など現場で相談しながら決めていきます。このような役割分担も大切だと考えています。

―11月は子宮頸がん征圧月間です。子宮頸がんへの取り組みを聞かせてください。

 子宮頸がん検診の普及が重要であり、県としても広報を含め、対応しています。また6月に当院では、子宮頸がんに対する腹腔鏡下広汎子宮全摘を、四国で初めて実施しました。10月には2例目を行い、1例目よりも手術時間を1時間ほど短縮することができました。

 腹腔鏡下手術の利点は、低侵襲で、術後に患者さんが楽だということですね。すぐに動くことができますので、血栓症などの術後合併症も少なくなります。

 すでに子宮体がんに対する腹腔鏡下手術は20人以上の患者さんに受けていただいていますから、今後、子宮頸がんに対しても、低侵襲性の手術を拡大していく予定です。

―子宮頸がんは罹患者数増とともに、若年化も問題になっています。

 当科では妊孕(よう)性を温存する手術も積極的に行っています。子宮頸部上皮内病変については、円錐切除術よりも合併症がかなり少ない子宮頸部レーザー蒸散術を積極的に施行しています。2014年10月の導入後、年間100人を超える患者さんがこの手術を受けておられます。

 また、子宮頸部早期浸潤がんには広汎子宮頸部全摘術をこれまで5例実施。術後の妊娠には妊娠中や分娩時の合併症に細心の注意が必要ですが、幸い、この手術を受けられた1人の患者さんが元気なお子さんを無事に出産されました。

―教授の専門分野について聞かせてください。

 私の専門は周産期領域となります。その臨床を中心に、妊娠と栄養・代謝・内分泌に関した臨床研究や基礎研究に取り組んできました。

 妊娠糖尿病や肥満のお母さんの子どもは、大きく育ちやすい。一方で低栄養の子どもは小さく生まれる可能性が高くなります。興味深いことに、子宮内でこのような真逆の環境で育った子どもにいずれも将来、生活習慣病の発症率が高くなるため、そのメカニズムに関しマウスなどを使って研究しています。

 近年のわが国の食習慣は、欧米における高カロリー、高脂質摂取と異なります。すなわち、摂取カロリーは1970年ごろをピークに戦後のレベルにまで低下し、一方で脂質は約3倍に増加しており、特に妊娠可能年齢女性の場合、低カロリー、高脂肪摂取の状況があります。やせ志向の強いわが国の若い女性では、やせが増加している一方、肥満の方は横ばいで減少していないといった問題点が存在するのです。

 高脂肪食の食生活が、子宮内の環境を悪化させる可能性があるのです。ですから「お母さんの子宮内の環境を良くすることが、次世代の健康も守ることにつながる」という気持ちで、がんばっています。

 妊娠糖尿病に関する多施設共同臨床研究にも力を入れています。欧米にはすでに多施設共同研究が数多くあり、「二番煎じでは意味がない」と思われるかもしれませんが、そうではありません。人種によって遺伝的背景が全く異なります。「日本発」のデータが極めて重要になります。このようなわが国が発信するエビデンスが臨床への還元につながるのです。

―医療従事者を目指す若い人にメッセージを。

 私は、愛媛大学医学部のモットーである「患者さんから学び、患者さんに還元する」が大好きです。臨床だけでなく、教育や研究でも、現場の患者さんを常に意識し、それぞれの連携を強めることが大切だと思っています。それが医療の原点である「患者さんに喜んでいただき、医療者も喜びを共有する」ことにつながるのではないでしょうか。


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