リビングウイル時代(2) 法制化議員連盟、名称改めて

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一般財団法人 日本尊厳死協会理事 白井 正夫

 国会内で十年余、活動する「尊厳死法制化を考える議員連盟」が今年5月、名称を「終末期における本人意思の尊重を考える議員連盟」(増子輝彦会長)と改めた。名称変更の背景には、「本人意思の尊重」という立法目的に「尊厳死」の枠をはめると運動への理解が広まらないという懸念がある。

 日本尊厳死協会の働きかけで超党派の法制化議員連盟が設立されたのは2005年だった。以降、議員連盟は関係各界とのヒアリングを重ねて法律案にこぎつけたが、国会提出には至っていない。現在、メンバーは7党会派の195議員となり、数ある議員連盟のなかでも大所帯である。

 議員連盟がまとめたのは「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律(案)」。その趣旨は、「延命措置の中止等について医師免責を規定し、医療側が安心して取り組め、患者の意思尊重を保証する」ことにある。法案の枠組みには、▽延命措置中止等の意思表示は書面、あるいは厚労省令で定める方法で▽終末期の判定は複数医師による▽対象は15歳以上、などがある。

 わが国では、終末期を迎えた患者の延命措置等の中止について法的整備がない。このため延命措置の中止等が刑法(嘱託殺人罪や保護責任者遺棄罪)に抵触する恐れがあるのではないかと、医師の腰が引ける状況があった。法律案は一定条件のもとで医師の法的責任は問わない免責を規定することで、「患者の意思尊重」を実現させる仕組みだ。

 法案の性格は、医師免責法とみられがちだが、その本分はリビングウイル法である。

 法律は社会の規範になるから慎重を期すのは当然だとしても、立法作業が進まないのはなぜだろう。日本弁護士連合会、難病団体、障害者団体は法制化に反対し、日本医師会も慎重論にある。それぞれ反対・慎重論には理由があり、それを払しょくするのは立法を推進する側の務めである。

「意思尊重」を前面に幅広い支持めざす

 その一つが「尊厳死法制化」の呼称にもあるというのだから由々しき事態である。

を中止して、自然の経過に委ねて迎える死を表す「尊厳死」は、揺るぎない概念として広まり、定着した。世界医師会宣言をはじめ日本医師会報告書(1992年)、日本学術会議報告書(1994年)、あるいは司法判断でも使われてきた。

 ただ議員連盟の勉強会やヒアリングで「尊厳死のためだけの立法」とみられたり、安楽死との混同や誤解からいたずらに反対論を招いたりする場面もみられた。米国の幾つかの州で、末期患者に対する医師の自殺ほう助を容認する法律が「尊厳死法」と名付けられ、近年、わが国の報道で混乱に拍車がかかった事情もある。議員連盟は法案名に即した名称に改め、「尊厳死法制化」が姿を消し、「患者の意思尊重」を前面に掲げた。それは議員連盟が新しい一歩を踏み出すことでもある。

 さて、前号で「リビングウイルは米国からの輸入品」と書いたが、その米国では1977年に世界で初めてのリビングウイル法となる「カリフォルニア州自然死法」が生まれている。その後、各州に広まり、現在では50州、1特別区の全州にリビングウイル法制化を含む事前指示法が制定されている。

 事前指示法の内容は州によって異なるが、延命措置や生命維持治療に対する諾否(リビングウイル)、意思能力がなくなった場合に備えて判断を委ねる人の指名(持続的代理権)の法制化が基本になっている。

 新名称の議員連盟のもとで立法作業がどう進むかわからない。ただ現在の「意思表示+延命措置中止」だけの枠組みから医療代理制度も視野に入れるのかも注目される。「世界初」から40年近く経たが、「日本初」の誕生が待たれる。

■一般財団法人 日本尊厳死協会=東京都文京区本郷2の27の8の501TEL:03-3818-6563

尊厳死協会九州支部が公開講座

 日本尊厳死協会九州支部は12月5日(土)午後1時半から同4時まで、公開講演会を福岡市中央区の天神ビルで開く。入場無料。NPO法人ナラン代表理事で、日本尊厳死協会九州支部理事の松股孝・海邦病院総合診療医が「農業と健康」について講演し、原信之支部長(国立福岡東医療センター名誉院長)はリビングウイル=事前指示書の必要性について語る。問い合わせは九州支部TEL:092-724-6008


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