医療法人わかば会 俵町浜野病院 浜野 裕 理事長

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最後まで穏やかに、その人らしく

1979 久留米大学医学部卒 大阪大学医学部付属病院第1 内科入局 1986 桜橋渡辺病院循環器内科医長(大阪府循環器系3次救急病院) 2001 俵町浜野病院院長 2002 医療法人わかば会理事長 日本循環器学会専門医、日本内科医学会認定医、日本東洋医学会専門医、日本超音波学会専門医

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「医療・介護は、患者さんに目的・達成感・生きがいを感じてもらえるような関わり方をしないといけない」と、妻の浜野敦子常務理事

■わかばテラスについて

 浜野裕理事長(以降:裕)高齢化が進む現代、団塊の世代と呼ばれる人たちが85歳を超えるころになると、医療・介護への要求が多岐にわたるとともに増加し、既存の特養や老健のように決められた枠内でのケアでは、満足できない人たちが増えてくると思います。そうした人を幅広く受け入れられるように、有料老人ホーム「わかばテラス」を造りました。

 楽しく余生を過ごしてもらいたくて、毎年一緒に田植えをしたり、稲刈りをしたりしています。みなさん、毎日生き生きと楽しんでおられますよ。

 つい先日も「稲を刈らないと、年末におもちが食べられないよ」と言うと、「こんな姿勢で作業して大丈夫?」と心配になるような人が腰を曲げて一生懸命に作業される。稲を刈り取った瞬間の満足感なのか、1〜2束刈っても、なかなか交代されないんです。そのくらい潜在的な活動能力と気持ちをみなさん持ってらっしゃるんですね。

 われわれは、それを引き出す場をつくることが大事なのに、普通のデイケア・デイサービスではなかなか思うように得られないものがあります。

 確かに、室内でゲームをするだけでも笑顔は出ますが、里山で稲を刈ったり、芋を掘ったりした時の笑顔は比べものにならないほど素晴らしい。

 また、里山療法で外に出て活動するようになってからは、「今年は不作だったから、来年はもっと頑張ろう」という前向きな話が出てくるようになりました。病院のデイケアしか経験していなかったころには想像もできなかったことです。

■人生最後の里山療法

 浜野敦子常務理事(同:敦)外に出て太陽の光を浴びながら、みんなで一緒に作業するということには、特別な力があるようです。重度の認知症の方でも外に連れ出して、日差しのまぶしさや、風の冷たさを感じてもらい、ちょっとしたことでいいから農作業や園芸作業を手伝ってもらう。収穫した作物での調理作業をしていただく。これが里山療法です。

 すると、おいしそうな匂いと口に入れた瞬間の味、見た目の驚き、自分が作ったという達成感を感じることができます。その感覚によって免疫機能もいい方に向かい、たとえ死期が近づいた時であっても、その喜びは最後まで消えません。

 わかばテラスでの活動を経験された方は、死の直前の目の輝きが違いますし、今までご家族に感謝の言葉など言ったこともなかった方でも、優しい笑顔で「ありがとう」と言って亡くなられる。そんな奇跡みたいなことが起きています。そうした経験をするうちに、医療をしている側も癒やされて、やる気が出るんです。

 裕:最後、ほんのひとときでもその瞬間を見ることによって、残された家族の中に「自分の親はいい人生を送ってくれた」という思いが残る。それが大事だと思います。

 きっと自然に触れることが、みなさんを見違えるように変化させるんでしょうね。

 たとえば、リハビリの途中で患者さんを車いすのまま屋上のガーデンに連れて行き、季節ごとに咲く花を見ながら散歩したり、立ち上がったりすると、意欲が出てきて前向きになられます。理屈ではわからないし、脳のしくみもわからない。でも、私たちケアする側は日々体験しています。

 他院の先生方から「危なくはないか」「風邪をひかないか」「ガーデンのメンテナンスにお金がかかるのでは」という質問が来ます。そんな時は「小学生のころ、遠足に行って、外で食べるおむすびはおいしかった。でも、雨が降って教室で食べると、そうは感じなかったですよね」と言うと、素直に納得される。医学では証明されていないことですが、自然が持つ人を元気にする力を、できる範囲の中で証明しようとしています。

 敦:その試みとして、今年の春に造った日本庭園では、現在、長崎大学の五島聖子教授と、香港科技大学から来られたシン・シューチン医師が自然と脳の関係について研究されています。

 実際に、ここで庭園を眺めることによって、認知症の改善や手術後の疼痛が緩和されていることがデータにも表れています。

■医療と介護の密な連携で認知症をケア

 裕:認知症はこれから増えるといわれますが、実はイギリスと、オランダの一部の地域では減っています。イギリス政府が、がんや生活習慣病の予防を目的に生活習慣の指導を徹底したところ、がんや生活習慣病と同時に、認知症の発生率も下がりました。つまり、医療サイドがきちんと生活習慣病を予防・治療すれば、認知症の発症・進行を抑えられることがわかってきたのです。

 これからは、医療と介護の密な連携が必要になります。介護者は必要な医療のことを、医療者は必要な介護のことを理解するようになれば、患者さん一人ひとりに合った、より良い支えができるのではないでしょうか。

 医療と介護、その真ん中に患者さんとご家族がいるということが「わかば会」の理念です。認知症の人は決して悲惨じゃない。穏やかにその人らしく、最期まで笑顔で健やかに過ごすことができるはずです。その笑顔の部分は介護が、健やかな部分は医療が担っていくべきだと思います。


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