医療法人 永田会東熊本第二病院馬場太果志 院長
―住民の要望で病院が再開されたそうですね。
2002年の12月に現行体制になる前は、別法人が同じ建物を使って病院を運営していました。医師不足が原因で閉院したと聞いていますが、閉院が決まった際に、住民の方が、わずか3カ月で8千人の署名を集めて病院再開を要望したそうです。そういう意味では地域住民が主体となった病院だといえます。
現在、厚労省の方針として、在宅医療の促進ということがさかんに言われるようになりました。もちろん、医療費を抑制するためにはそういう方針も必要になるでしょうが、実際に病状が悪化すれば、どうしても入院する必要も出てきます。その際に、この菊池地区の強みとしては、在宅医療と病院がネットワークを作っているということがあげられます。
当院は在宅医療を担うこともできますし、入院施設を持った病院として後方支援もできます。本当に充実した在宅医療を実現するためには、病院機能を低下させずに維持しなければならないと考えています。
―極端に少子高齢化が進んだ社会を迎えます。
高齢化社会を迎えるにあたっては、これまでのように医療と介護を分けて考えるべきではなく、「医療・介護」として連携させる必要があります。さらには、「生活」との連携も考えなければならないでしょう。
たとえば、当院内には有料老人ホームがありますが、これによって医療の場面だけでなく日々の生活の細かい場面まで一緒にケアすることができます。
さらに、医療・介護・生活が一体となった場を俯瞰(ふかん)することは、必要な支援を具体的に把握できるという効果を生みます。「この患者さんは医療よりも生活のこの部分に困っている」ということがわかれば、行政などの関係機関に効果的につなぐことができるでしょう。
また、インフォーマルな部分であり、正式な病院としての活動ではありませんが、今後は、たとえば職員のボランティア活動などにも取り組んでいきたいと考えています。
―10年先、20年先の医療の形が見えない時代です。
そうですね。菊池地区のネットワークで地域の方を支えていくことが基本ですが、地域医療構想の中では、当院もおそらく3割から4割は病床が削減されると予想しています。
もっとも、当院に入院されているのは重症で動けないような方が多いので、実際には非常に悩ましい問題です。多くが脳卒中の最重症にあたる方ばかりで、ほとんど動くことができない。すぐそばに熊本リハビリテーション病院がありますが、その日本で最高峰のリハビリテーション病院でリハビリをしても、自宅に戻れなかった方が当院に入院されているのです。
入院が可能な病院であることは大きな強みですので、それを前面に出して広報することも必要になるでしょうね。
もともと、医師になると決めた時から、地域の方と向き合いたいという思いがありました。
看護師や職員にもよく言うのですが、最重症の方々が当院に来られる以上、最期の「看取り」も含めて覚悟を決めなければなりません。
入院されている方に自分の家族と同じように向き合えば、もしご臨終されることがあってもご遺族と同じ気持ちで悼むことができます。医療者や職員がそういう姿勢を持つことで、医療を信頼していただけるのではないでしょうか。