(一財)医療・介護・教育研究財団 柳川病院理事長付特命理事 嘉村敏治 久留米大学名誉教授に聞く

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急増する子宮体がんとは

 久留米大学医学部産婦人科学講座の主任教授を務めた嘉村敏治・同大名誉教授。現在は、医療・介護・教育研究財団柳川病院に、理事長付特命理事として勤務している。

 地域のみならず、アジアの産婦人科医療のため活躍を続ける嘉村名誉教授に、近年増加しているという子宮体がんについて聞いた。

1974 年 九州大学卒業。 デンマーク国立癌研究所留学、 九州大学医学部講師、 同助教授などを経て、1999 年 久留米大学医学部産婦人科学講座主任教授、久留米大学病院産婦人科診療部長。2000 年 産業医科大学医学部・鹿児島大学医学部・宮崎大学医学部非常勤講師、2009 年 久留米大学医学部先進漢方医学講座教授兼務、2013 年 久留米大学病院総合周産期母子医療センター副センター長。2014 年3月に久留米大学を定年退職、同年4月より現職。医学博士、公益社団法人日本婦人科腫瘍学会監事、公益社団法人日本産科婦人科学会監事

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■爆発的に増える子宮体がん

 2005年ごろから、子宮体がんの罹患(りかん)者数が、子宮頸がんを上回るようになり、現在は子宮がん全体の56%を占めています。

 子宮体がんは、子宮の内側にある子宮内膜から発生するがんです。食生活が欧米化していることが要因のひとつとされており、60〜64歳の患者さんがもっとも多くなっています。

■1番のリスクは閉経後の肥満

 子宮体がんの中の8割程度は、女性ホルモンの一種「エストロゲン」が発がんに関与している類内膜腺がんです。

 エストロゲンは、卵胞ホルモンとも呼ばれ、卵巣の卵胞から分泌され、子宮内膜の細胞分裂を促進する作用があります。細胞分裂によってDNAの複製が起こりますが、エストロゲンが過剰でその複製の回数が多くなればなるほど、コピーミスの可能性が高まり、がんのリスクが高まると考えられています。しかし閉経前で卵巣が正常に機能している場合は、排卵の後に、卵巣に形成される黄体から黄体ホルモンが分泌されます。黄体ホルモンはエストロゲンによる内膜細胞の分裂を止める作用があるので、内膜がんの発がんが抑制されると考えられます。そこで月経がある若い女性には内膜がんの罹患者は少なくなっています。

 もともと、卵巣から出ているエストロゲンですが、閉経後は副腎から分泌される男性ホルモンが脂肪細胞でエストロゲンに変化します。そこで脂肪細胞がたくさんある人ほど体内のエストロゲンの量が多くなるので、閉経後の肥満には注意が必要です。

 ちなみに理想体重の人が子宮体がんにかかるリスクを1とすると、理想体重プラス13.5キロの人で3倍、プラス22キロの人で10倍にもなるとされています。

■不妊症の人も注意

 排卵障害による不妊症も、子宮体がんのリスクを高めます。排卵がないことによって、エストロゲンによる内膜の細胞分裂を止める働きのある黄体ホルモンが分泌されないからです。

 未産の人の子宮体がんのリスクは、経産婦の約2倍。その理由は未産の女性の中には排卵障害による不妊症の女性が含まれていることによります。

 そのほか、閉経年齢が高い女性も子宮体がんのリスクが高くなるので注意が必要です。

■不正性器出血は受診を

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嘉村敏治・久留米大学名誉教授が理事長付特命理事を務める柳川病院。標榜診療科は19、全150 床。

 自治体などが実施する「がん検診」というのは、症状がない初期の段階のがんやがんの一歩手前の病変を見つけることが目的です。

 子宮体がんは、初期の段階で出血という症状が出ること、また検査に痛みを伴うことが多いことから、検診ではなく、症状が出た時点での早期受診が大切になります。

 この場合の症状とは、月経以外の時期あるいは閉経以後に出血がある「不正性器出血」です。量は多かったり少なかったりさまざまです。茶色のおりものも少量の出血です。

 子宮体がんの患者さんをみると、不正性器出血から受診まで平均6カ月ほど経過しています。その理由は出血が一時的で止まったら安心して受診しないことや、茶色のおりものを出血と認識していないことによります。そのような人はがんが進行して持続的な出血が生じて初めて受診することになり、その平均期間が6カ月ということになります。

 一般的に予後のいい子宮体がんですが、一部に進行が早いタイプもあります。また、主たる治療は子宮とその周囲のリンパ節を切除する「手術」ですが、妊娠の希望がある若い女性で、早期発見ができた場合には、ホルモン療法で子宮を温存できる可能性もあるので、とにかく早期発見が大切です。

 月経以外の時期、または閉経した後に出血や茶色のおりものがあったら、すぐに産婦人科を受診してほしいと思いますし、医療従事者の方も、患者さんにそのような症状があることを知ったら、早めの受診を勧めてほしいと思います。

■食生活の大切さ実感

 私が大学を卒業したころ、子宮体がんの患者さんは年に2〜3人。子宮がんの95%は子宮頸がんで、子宮体がんは5%程度に過ぎませんでした。

 しかし、近年は年間30例、40例の患者さんを治療するようになりました。増加傾向にあるがんには、子宮体がんのほか乳がん、大腸がん、前立腺がんなどがあり、いずれも食の欧米化に関連していると言われています。食べ物の影響というのは大きいと感じますね。

■アジア婦人科腫瘍学会にも力を注いで

 久留米大学を退職して、1年半になります。週5日、柳川病院へ通い、通勤は朝晩、電車で20分。学生時代以来なので、新鮮です。

 韓国の先生たちと一緒につくったアジア婦人科腫瘍学会の学術集会は、今年11月に韓国・ソウルで開催されます。2年に1度で、今年が4回目。まずは日本、韓国で3回ずつ開催し、その後は、アジアの中で手を挙げてくれる国に広げていけたらと考えています。アフリカから参加してくれる人もいて、ありがたいと思っています。


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