心臓外科はやりがいのある職業

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徳島大学大学院医歯薬学研究部 心臓血管外科学分野
徳島大学病院心臓血管外科長 手術部長 ME管理センター長 北川 哲也 教授

1980 徳島大学医学部医学科を卒業し、 同第二外科医員。以降、徳島県立中央病院外科、国立循環器病センター心臓血管外科レジデント、徳島大学医学部附属病院心臓血管外科助教授を経て、1996 米国ミシガン大学胸部外科留学、2000 徳島大学医学部附属病院心臓血管外科教授、2002 同集中治療部長、同超音波センター長、2003 同循環機能制御外科学分野教授、2005 同病院長補佐・卒後臨床研修センター長、2012 同手術部長 2014 同外科長、現在に至る。■所属学会:日本心臓血管外科学会理事 日本外科学会代議員 日本胸部外科学会評議員 日本循環器学会 日本小児循環器学会評議員 日本静脈学会理事 日本血管外科学会評議員 日本脈管学会評議員 日本再生医療学会代議員
http://www.toku-cvs.umin.jp/

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心臓の手術、特に成人先天性心疾患について聞かせてください。

 心臓は生体の中で唯一ダイナミックに動いている臓器で、その機能を維持することは"生きる"ことそのものです。心臓の手術は外科の最たる分野であるとよく言われますが、何よりも"正確に速く" が大事です。

 心臓手術は生理学とか解剖学、生化学、蘇生学、消毒法、輸血法、麻酔学、人工臓器や放射線学...など、さまざまな科学の進歩に支えられて発展してきましたが、心臓内部の病気に、人工心肺法を用いた現代のような外科手術が始まったのは1953年です。翌年に初めて生存例が得られ、それから60年あまり過ぎましたが、現代のわが国では年間6万例を越す心臓・胸部大血管手術がなされ、さまざまの心臓病において標準化された手術により世界の水準を凌駕(りょうが)する良好な手術成績が得られるようになっています。

 特に小児の心臓病に関しては、年間1万例弱がわが国で手術されていますが、心臓外科手術治療の発達や内科治療の進歩によって、その85%は思春期、成人期まで到達することが可能になり、複雑な先天性心疾患の子供も学校に通い、社会に出ていくようになってきました。

 私が医師になったころに手術を受けた患者さんはすでに多くが40歳台に突入しつつあります。先天性心疾患の患者さんの半数以上は大人であるという時代が、目の前にきております。そのような、成人期に入った先天性心臓病の方々の心臓弁とか、心臓の筋肉の質とか、大動脈が太かったりするような問題点を途切れないように診療を継続していくことが重要です。小児循環器医がずっと診るのか、トレーニングを積んだ循環器内科医で診るのか、または心臓血管外科医が診るのか、医療におけるシステムとして解決していかねばならない喫緊の現実問題です。

 私たちは、15年ほど前から心臓血管外科学会が他の医学会分科会に先行してナショナルクリニカルデータベースを立ち上げて、本邦の心臓手術を行っているほとんどの施設が参加して、実データを蓄積してきた、世界に誇るべき日本成人心臓血管外科手術データベースと日本先天性心臓血管外科手術データベースをもっています。このデータベースはナショナルクリニカルデータベースとして心臓血管外科医療の質向上と安全管理に今後ますます寄与していくでしょう。先ほど話題にした成人先天性心疾患の方たちに、より良い治療計画や手術治療を提供できるようにするには、両者をうまく連携させてデータ利用して、今までよくわかっていなかった成人先天性心疾患の方たちの病態の理解を深め、問題点を把握して治療指針を作成していくことが重要です。成人期になると、やはり動脈硬化とか不整脈とか経年的な疾病の予防を考えねばなりませんが、子供のころに治療を受けた先天性心臓病の性格とか調子をよく知っていなければなりません。

―手術はアートだと常々言われている真意は。

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下は今年9月に開院した徳島大学病院新外来棟の外観、上は手術室での北川哲也教授。

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 私たち心臓外科医は基礎医学ならびに臨床医学に関する知識を高めるだけではなく、日ごろから手術手技について、実臨床での手術助手として研鑽を積みながら、simulation training やブタ心臓を用いたWET LAB trainingで練習を重ね、術者として自立することを最大の目標としています。プロフェッショナルとして社会環境やニーズにあった工夫を重ね、標準的医療を超えて独自のやり方(手術)を編み出すまで究めようとしているからそのように言っているだけで、真意は"手術に芸術性は不要で正確さのみ"が求められています。

 手術は、"一人一人、一つ一つコツコツと"の言葉に表現される個別治療です。手術の成功にはプランニングが必要で、手術の適応、術式の選択、手順の周知、患者さん個々に応じた工夫、不測の事態への対応...など、十分に準備をして、さまざまなイメージを作り上げてから臨みます。手術に際しては、熱い心と冷たい頭をもち、冷静で現実的な打開策をとることのできる"もう一人の冷静な自分を日頃から培っておく" ことが大事です。

―心臓外科医に必要なのは。

 外科医として意識することは、まずは責任感、チームワーク、大事なことは細部にこだわる、明るさとくじけない心、持続する志、勇気と誠実さ、そして創意と工夫、どれをとっても難しいことですが......。

 もう一つ、意識していただきたいことがあります。大事な素養、資質に、"祈る心"を加えていただきたい。ときには、エイヤーといった火事場の決断力、馬鹿力も必要です。しかし、残念ながら外科医一人が頑張ってもたいしたことはない。

physician-scientist/academic surgeon あるいは、evidence-based medicineといっても、その力の及ぶ範囲には自ずと限界があり、最後は神様に頼まなくてはいけない、そのような瞬間が多々ある。見えないものに頭を下げているというのが大事です。このような気持ちがあってこそ、病める方たちと「共に生きる」ことができ、彼らや仲間からも、人として、外科医として敬愛され、いつまでもメスを握り続けられることでしょう。"鬼手仏心"とはそのような"祈る心"を具備する外科医をいうのではないでしょうか。

̶若い医師に伝えたいことがあれば。

 私は、外科医になった当時は手術が楽しく、来る日も来る日も自分が進歩するのが実感できるし、家にもあまり帰らない日々が続き、家内や子どもたちにはずいぶん迷惑をかけてきました。そんなのは決して良いことではありませんが、心臓外科医は、手術で患者さんの生きようとする力を助けてあげられる、本当にやりがいのある職業です。若い皆さんには、外科医の楽しさを知ってほしいと思います。次代を担うのはあなたです。

 私は1980年の卒業生ですが、若き外科医がこれから歩もうとする世界は、私が育ってきた時代と異なり、厳しいものだといわれますが、何もひるむことはありません(絶対にひるまないでください)。医師にしろ、研究者にしろ、こんな楽しい仕事はないと思います。自らの心に素直に、希望する目的を定めて、情熱をもって歩んで欲しい。卒後10年が勝負です。せめて5年の目標をおいて一生懸命駆けて欲しいですね。近視眼的になる必要はありません。目的への旅程、道程は千差万別、人それぞれ、さまざまでいいと思います。くれぐれも柔軟に対応してください。こうじゃなければだめだとrestrict になる必要はさらさらありません。

 そのために、具体的にこころがけてほしいことが2つあります。将来のために、毎日、日記をつけること。夜眠る前に、その日に覚えたこと、気になったことを一つ文で書く、絵を描く。そうするといつのまにか、毎日、毎日、来る日も、来る日も進歩しているのがわかるかもしれません。もうひとつ、燃え尽きないために、楽しく、余裕をもって歩むために週1日の決められた時間に"ぼうっとする、机に足をあげて、これからしたいこと、仕事で不思議だと思うこと、疑問点に思いをめぐらしてみる時間をもつこと"をぜひ実行して下さい。いつか、どこかで一緒に仕事をしましょう。

―徳島大学医学部を色でたとえたら。

 四国を発して世界に羽ばたく人材を生み出す悠久の流れを象徴する吉野川と、若人の夢を象徴する徳島の青い空、青い海、さらには徳島の誇る特産物である藍の色のブルーがスクールカラーです。


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