問題に気づいたらそこでディスカッション多職種のダブルチェックがはたらいています

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医療法人住友別子病院 鈴木誠祐 理事長・院長 / 矢野琢也 薬剤部主任

鈴木 誠祐(すずき せいゆう) 1983 岡山大学医学部卒 同第一内科入局 住友別子病院診療部第2内科勤務 1995 同診療部第2 内科長 1998 同診療部長 2003 同副院長 2009 医療法人住友別子病院理事 2013 同院長 2014 同理事長兼務 ■愛媛大学医学部臨床教授 岡山大学医学部臨床准教授 日本消化器内視鏡学会評議員 同四国支部長/幹事 日本消化器内視鏡学会指導医/専門医 日本消化器病学会評議員 同四国支部幹事 日本消化器病学会指導医/専門医 四病院団体協議会認定医療安全管理者 日本がん治療認定医機構暫定教育医 日本内科学会指導医/認定医

 鈴木誠祐理事長/院長(写真右側)は昨年8月20日号に続き2度目の登場。院内の多職種がどう連携しながら治療に当たっているかを中心に聞いた。がん指導/専門薬剤師の矢野琢也薬剤部主任(同左側)も同席して現場の状況を語った。

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―地域がん診療連携病院に指定され、がんセンターも設置されていますね。

矢野 基本的に患者数の多い5大がん(胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がん、乳がん)のすべてを扱います。一般総合病院の中にあるがんセンターですから、新しい薬の副作用への対応も含めていろいろな科での診察が可能であり、当院で完結できるところが大きなメリットだと思います。

鈴木院長 がんセンターは主に医師が診察して患者さんの化学療法を行うわけです。でも医師だけではなく、看護師は看護師の立場に立った専門的な見方で患者さんを看ることができますし、薬剤師も加わって薬剤の副作用や注意点をチェックするという具合に、多職種の専門家が1人の患者さんを診る、その連携が当院では非常にうまくいっているのです。地方の病院ですから、1人の医師が「私は化学療法だけします」というわけにはいきません。そこで、手薄な領域の情報はがん専門薬剤師が助言してくれたり、管理をしてくれたりしてダブルチェックもできるようになっていて、それが私たちの病院の中で誇れる点だと思います。

―がん専門薬剤師とは。

矢野 がんの治療、病態、緩和の知識や薬物療法についての専門の薬剤師です。がん領域の薬物療法などに一定水準以上の実力を有し、医療現場で活躍しうる、薬剤師の資格の中では唯一医療法上広告ができる専門性資格です。薬剤師としての実務経験を5年以上有すること、生涯研修認定制度による認定薬剤師であること講習会で50単位以上履修すること、がん患者への薬学的介入実績50症例を提出すること、以上の条件を満たし、認定試験に合格した場合に取得できます。ただし、がん専門薬剤師になるには、一番ハードルの高い条件がもう一つあります。がん指導薬剤師のいるがん専門薬剤師研修施設においてがん薬物療法の研修歴を5年以上有することです。いくらがん専門薬剤師になりたくても、自施設に指導薬剤師がいなければ、指導薬剤師がいる病院へ研修のため5年間通うことが必要になります。当院はがん指導薬剤師が在籍する研修施設になっており、その制度が発足してから、今年で5年目になりますが、全国で第1号の研修生が他県より当院に来られています。研修全国に施設は268施設あり、四国には8施設あります。研修施設数は県ごとに偏りがあり、愛媛は4施設ありますが、研修施設がない県もあり、がん専門薬剤師のいない県も14ほどあります。

―院内の多職種間連携について聞かせてください。

矢野 この病院の風土かもしれませんが、医師に話しかけにくいような、いわゆる垣根がほとんどなく、定期開催されるカンファレンス以外にもミニカンファレンスがあちこちで行われています。

 我々が「薬学的に薬物相互作用の影響かもしれませんので、こうしてはいかがでしょうか」という意見を言うと、「画像上はこうなっているし、それでやってみようか」といったように、患者さんのためのミニカンファレンスが頻繁に行われているのです。

鈴木院長 たとえば今日も、私は化学療法を施行する患者さんを診る日でしたが、病院に来てすぐ数人の患者さんの治療について、がん専門薬剤師に相談しました。患者さんについておかしいなと思えば意見を出し合い、「ではそうしましょう」というふうにやっている。問題に気づいたらそこでディスカッションする。医師も患者さんをいろいろチェックしますが、薬剤師も事前に電子カルテで採血データや画像をチェックして、がん専門薬剤師としての意見をもっている。化学療法の施行が決定したら、主治医は直接電話でがん専門薬剤師に連絡して抗がん剤の調製を開始する運用になっているのですが、何か異常があればその際にすぐに相談ができる。いわゆるダブルチェックが常に働いていることになります。がんセンターについては、がん診療部長を兼務されている亀井副院長がこういう仕組みづくりを熱心にしてくれていますし、前々から医師とがん専門薬剤師、あるいは医師と認定看護師との関係が非常に良いのです。おそらく看護師や薬剤師のがん治療に対するレベルが高いのです。この人に任せておけば大丈夫とか、この人の意見を聞いてみようと思うくらいのレベルで、それだけよく勉強されているのだと思います。当院は医師臨床研修指定病院となっていますが、こうしたお互いをリスペクトした多職種との連携についても、十分研修していただけると思います。医師はもちろんのこと、がん専門薬剤師や認定看護師は、院内外でも指導的立場として、地域のがん診療を引っ張っていく存在となっています。

―新病院が建ちますね。

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鈴木院長 新しい病院には緩和病棟もできます。でも突然「緩和病棟をやります」というわけにはいかないでしょうから、そこに移行するまでに何床か緩和の病床を持って、緩和病棟に転換できるような素地を作ろう、と考えております。この10月から話し合いを始めて、2〜3カ月で緩和の病床を持てるようにすすめていきたいと思っています。がんの患者さんをずっと1人の主治医が診るのはなかなか難しい。やはりそれなりの病床を持って多職種全体が緩和治療に関わるべきです。さまざまな職種が論議しながらチームとして動く時代なのです。また外来化学療法室のベットが増設されますから、アメニティーも充実してより快適に化学療法を受けることができるようになります。

―今後の展望や希望は。

矢野 がんは全身疾患で、どの部位でも起こりうるものです。がんになった以上は最終的には痛みが生じてくる可能性もあります。いかに苦しまずに、痛みを改善して楽に生活していただくかという緩和領域についても専門性が問われます。そのような点も含めて医師、チーム、そして患者さんにとってがん専門薬剤師が不可欠な存在となれるよう、自己研鑽していきたいです。

鈴木院長 地方の病院は医師不足、看護師不足、薬剤師不足で、厳しい時代を迎えており、地域の医療を守るためには、病診連携、病病連携のほかに機能分化が大事です。私たちの病院は、がん診療を中心として、新居浜地区の医療を支える病院でありたい。がんの分野については病院の柱として取り組んでいきたいです。


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