愛媛大学大学院医学系研究科放射線医学 望月 輝一 教授 / 越智 誉司 講師
愛媛大学放射線医学教室は愛媛から世界に発信する診療・教育・研究を目指して、放射線の診断、治療、核医学、IVR(画像診断を通じてカテーテル、または穿刺術を利用した治療)などを行っている。
画像診断や教室の特徴などについて望月輝一教授に、同席した越智誉司講師に放射線治療についての話を聞いた。
◆放射線診断は治療の第一歩
望月 画像診断の機械が発達して、より鮮明に病気が見える時代が来ました。
自分の目で診断して患者さんの病態をつきとめるのが、放射線科の醍醐味(だいごみ)です。診断は治療の第一歩ですが、それを我々が担っているわけです。
放射線治療は患部を切らずに治すことが可能です。治療成績は外科と同等か、それ以上の病気も多くあります。また外科的手術が施せないほど進行している場合に放射線治療をするなど、患者さんの病気を治したり、症状を和らげることも可能です。
◆心臓CTの開発
望月 心臓疾患のなかでもっとも多い病気が虚血性心疾患です。その診断の第一歩を行える機械が心臓CTです。
私が1996年に開発してから19年、機械の進化に伴って、とてもクリアに患部を見ることが可能になりました。
開発当時は「CTで冠動脈狭窄なんか見えるものか」などと陰口をたたかれ、相手にもされずに白い目で見られていたものです。
それも遠い昔の話です。今では、すっかり市民権を得て、中規模以上の病院であれば、ほとんどの病院で当たり前のように心臓CTを行っています。隔世の感がありますね。
◆大幅なリスク低減
望月・越智 放射線を一定以上の量浴びると、がんのリスクが高まりますが、現在の画像診断などの放射線量は大幅に減少し、もっとも多かったころと比べると10分の1の量に減少しています。
放射線を使うことで命にかかわるような重大な病気を発見し、治療をすることは患者さんにとってメリットの方がはるかに大きいのです。
放射線治療では遠隔操作をするので医療従事者が放射線を浴びるリスクはゼロです。安心して治療に専念できます。
◆最新の機械を導入
越智 放射線治療は、高精度にこだわって有害事象を出さない方向で治療を進めています。
具体的には、がんのある部分にのみ放射線を集中して照射して、それ以外の箇所には、なるべく当てないようにしています。
昨年末にバリアンメディカルシステムズ社製のトゥルービームという最新型の高精度放射線治療装置を導入して、稼働に向けた準備の最中です。愛媛県では初の導入で、これまでよりもさらに高精度で短時間の治療が可能になります。
放射線治療は低侵襲で機能形態を温存して治せるのが強みです。今までは病変以外の箇所にあたることで有害事象が発生していましたが、今は病変に集中して照射できるので、治療が終わったらそれまでと同様の生活を送ることができます。
日本人の半数が、がんになる時代で、そのうちの3分の1が亡くなってしまいます。そのなかで放射線治療の対象になる患者さんは全体の3割です。欧州では6割、米国では7割を超えていて、日本はまだ浸透していない部分がありますが、病気によっては手術と同等かそれ以上の治療成績を出しているので、手術か放射線か、という2者択一で選択しても差し支えない時代になりました。
◆充実した教育環境
望月 放射線は診断、治療とも長足の進歩を遂げていて、病変が動いてもそれを追従する技術も入ったりと最先端の分野だと言えます。
放射線診断、治療、IVRの魅力を知ってもらい、興味があれば、ぜひ当教室の門をたたいてほしいですね。
教室員には一人前以上の放射線科医になれるように教育を施します。新しい機械の利用方法を開発したり、治療成績を出したりなどの臨床研究を国際的な学会でたくさん発表しています。頭部の診断、腹部の診断、心臓の診断など各部門にも一流の先生が在籍しているので、しっかりした教育を行う体制が整っています。
◆多様な働きかたが可能
望月 医学部に入る女性の割合が年々増加しており、愛媛大学でも全体の4割前後と増加傾向です。
子宮がん、乳がんなど婦人科系の疾患は患者さんから女性医師へのニーズが高く、むしろ女性が活躍する場は男性よりもあるのではないでしょうか。
当教室は、出産や家庭の事情で休む状況になっても復帰しやすい体制です。常勤ではなくても半日勤務するとか、自宅で遠隔診断をすることもでき、各々のライフスタイルに合わせた働き方が選択可能です。