医療法人 昌平会 わきだ整形外科 楊 昌樹 院長
インタビューは予定時刻より1時間遅く始まった。「もうちょっと早く終わるつもりでしたが、手術方法を直前に変えなければいけなくなったんです」と楊昌樹院長。1978年、楊國雄現理事長がこの地に開業した「わきだ整形外科」の果たしている役割を中心に聞いた。
当院は現在、地域の医療も担いながら、熊本や宮崎、鹿児島全域、そして離島など幅広く患者さんに来院いただいています。
患者さんは高齢の方が多く、当院を選ばれる目的は、低侵襲な治療で、早く社会に復帰し、よりよい老後を送りたいと言われる方が多いようです。
̶脊椎内視鏡下手術はオリジナルだそうですね。
2001年に2cmしか切らずに椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の手術ができるMD法が日本に入ってきました。出血が少なく、痛みも少なく、退院も仕事への復帰も早い大変優れた手術で、世界でも最先端の医療です。
その導入を、広島赤十字・原爆病院整形外科部長の大賀正義先生と共に行い、多くの手術をするうちに、MD法の欠点もわかってきたんです。
そこで私が2005年から2年かけて「棘突起正中縦割進入MD・MED法」を開発し、従来法よりもさらに背筋に対し、低侵襲で骨切除が少なく、痛みが少ない手術が可能となりました。脊椎の手術を受けても、高齢の方でも、翌日より歩行が可能です。
ぜひ、ほかの施設で手術を受ける前に、棘突起正中縦割進入MD・MED法を検討していただきたいと思います。
̶若い院長の目に医療の将来がどう見えますか。
鹿児島ではすでに高齢化社会が進んでおり、2025年問題はあまり起こらないだろうと言われています。ですから私の担当している地域では少し忙しくなるくらいです。いま高齢の患者さんを見ていますと、一人暮らしの方がとても多いようです。そのような方が動けなくなれば非常に問題です。だから、わきだ整形外科としてやれることは、やはり低侵襲な手術で、なんとか最後まで自立できるような体を維持してあげることだと思っています。
現在のDPC病院は在院日数の縛りが厳しく、手術後、早期に転院になるケースが多いようです。転院となれば主治医はもう来てくれないし、元々の担当だった理学療法士もいないわけです。それで医療の質が落ちて、再入院となるトラブルが起きているのです。
当院はクリニックですから、在院日数の縛りはさほど厳しくありません。当院のクリティカルパスは在院日数を考えて作ったのでなく、自宅退院できるまで回復するのに十分な時間を取って作りました。だから、患者さんにも満足していただけるし、私たちも術後の治療をしっかり出来ます。
「わきだ整形外科は最後までみてくれる」という話を聞きつけて、遠方の人が、大きな病院をいくつも通り過ぎてここまで来てくれるんです。
̶職員の個性を生かしながら一つにまとめる工夫は。
患者さんが次々に、元気になって帰っていく姿を見ることで、それに自分が関わったのだという充実感が生まれています。特に症状の重い患者さんが来られたら、この患者さんをよくするにはどうすればいいかをみんなで話し合います。私も「こんなに具合の悪い人をよくするのが、わきだ整形外科なんだ!」と鼓舞して治療を進めます。さらに、6年くらい前から接遇研修を受けることでみんなの意識が変わり、患者さん目線の対応もできるようになってきました。
̶医療者を目指す人に言いたいことがあれば。
医者になって最初に教わった先生が「変わった患者でも、入院している間は毎日話をしに行きなさい」と言うので、意味が分からないままそうしていたら、どんな患者さんでも対応出来るようになりました。当院にもいろんな方が来られますが、みんなどこか困って、何か訴えたいんです。医療者には、いろんな場面でつらいこともありますが、大方はいい人です。人を助けるのは尊い仕事だと思います。くじけずに頑張って欲しいです。
ただし、たまには「忘れる力」も必要ですね。