現在の医療体制を維持して次世代へ継承していきたい

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医療法人信和会 小林保養院 院長 今村 司

今村 司(いまむら つかさ) 1976 大阪市立大学卒業 九州大学医学部付属病院病理部研修医 1977 同大学院 1981 同医学部第一病理助手 1983 学位取得 1984 鞍手共立病院勤務 1985 産業医科大学精神科非常勤医師(兼任)1990 いまむらクリニック開業 1993 小林保養院院長

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◆身体合併症への対応

 当院は宮崎県西諸地区初の精神科・神経科の病院です。

 西諸地区は昔から統合失調症などの精神疾患患者の割合が多い地区です。急性期の患者さんは主に近隣の内村病院が診療されていますが、本院では主に慢性期の患者さんを診療しています。

 地域の高齢化が進み高齢の患者さんが増えるに従い、身体合併症も診なければならなくなってきています。当院は精神科なので、身体疾患の診察能力には限りがありますが、可能な限り対応しています。

 糖尿病や高血圧は当然ですが、腫瘍性疾患や泌尿器疾患など、広範囲に治療しています。高齢の患者さんで身体疾患を持っていない人はまれです。皆さん、なにがしかの持病があります。精神科ですべての疾患を診るのは不可能なので、急性期や専門的治療を要するときは近隣の病院へお願いして、症状が落ち着けば帰ってきてもらいます。

 認知症などの精神疾患を抱えた独居老人で身体疾患を同時に抱えてしまった。そうした患者さんをどう支えていくかを考えたとき、精神疾患だけであればグループホームなどの施設で対応が可能ですが、身体疾患まで抱えていると、対応が困難になります。そういう人たちを入院治療するのですが、最近ではこのことに対し「社会的入院」と問題にされます。受け皿が十分ならいざ知らず、そうでない地域では私共のような病院が支えるしか方法がないのではないでしょうか。

◆次世代への継承

 これから新たな取り組みをするよりも現在の医療体制を維持して、次世代へと継承していくことが重要です。今診ている患者さんの治療に全力を尽くし、新しく入院される患者さんに対しても、手厚い入院治療を行うことが我々の使命です。

◆経営回復への道のり

 3年半前に心筋梗塞を患って、気力を喪失してしまい院長辞任を申し出ました。1年くらい後任者探しに奔走しましたが適任者が見つかりませんでした。

 そうこうするうちに患者さんの数は減り、職員も病院の行く末を案じて、1人、2人と去っていきました。一時期は職員の数が足りず、困難な状況にありましたが、現在は改善されつつあります。とは言えまだまだ厳しい状況なので、なんとか乗り切らねばなりません。

◆精神科病院への理解を深めるために

 一昔前に比べると精神科病院に対する地域住民の偏見は弱まってきましたが、ひとたび精神疾患を抱えた人が事件事故を起こすと、一気に風当たりが強くなります。

 最近、てんかんの持病を持つ医師が交通事故を起こしました。何もないときは世間もてんかん患者に理解を示してくれていますが、ああいう不幸な出来事が起こると一気に病気に対する偏見が強まってしまいます。

 本院では毎年夏祭りや運動会、クリスマスパーティーを開催しています。患者さんの家族に参加を呼びかけ、一人でも多くのひとに見ていただき、精神疾患への理解をお願いしています。

◆嗅覚の重要性

 精神科医になって気づいたのは、患者さんは社会的に差別を受ける弱い存在だということです。私は「精神科の患者さんは守ってあげなければならない存在である」との思いで、これまで精神科の診療を続けてきました。

 精神疾患を単純な数値では表現できません。採血や画像診断もなかなか確定診断までには至りません。精神科医に求められるのは患者さんとの密接なコミュニケーションです。よく話を聞いて、患者さんの内に潜むものを嗅ぎ取る嗅覚が重要な資質だと思います。

 精神科の患者さんを診るとき、最初からこの疾患だと決めつけると判断を誤りかねません。私は精神科の疾患は、混沌としたカオスの状態にあるとの考えを前提にしています。

 統合失調症だから、うつ病だから、この治療をすると決めつけると、後で大きな間違いを起こします。症状は患者さんそれぞれです。私の治療方針は、出っ張った部分を少しづつ修正して全体を丸くすると考えてもらえたらわかりやすいと思います。妄想や幻聴が残っても、患者さんが落ち着きを取り戻すのであれば、治療はおおむねうまくいっていると考えています。

 精神科医は年齢を重ね、経験を積むことで実力が付いてきます。まったく同じ症状の患者さんは、ひとりとして存在しません。何よりも多くの患者さんを診て患者さんから教わることが大切です。


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