独立行政法人 国立病院機構 三重病院 藤澤 隆夫 院長
1980 三重大学医学部卒業 同小児科入局 1986 ~ 1988 米国メイヨークリニック留学。Gerald J Gleich 教授のもとで好酸球の研究を行う 1988 国立療養所三重病院小児科 1999 同アレルギー科医長 2002 同臨床研究部長 2004 国立病院機構三重病院臨床研究部長 2013 同副院長 2015 同院長 2006 ~現在三重大学大学院連携教授(併任) 2009 韓国仁濟(いんじぇ)大學校諮問教授(併任) 2014 日本小児アレルギー学会理事長(併任)
三重病院は小さな子どもから高齢者まで社会的弱者を支える総合医療機関という位置づけのもと、地域医療に貢献すべく質の高い医療の提供に努めている。
今年の4月に院長に就任した藤澤隆夫院長に今後の抱負や小児救急、2017年に開院予定の三重県による小児医療施設についての話を聞いた。
―4月に院長に就任されました。今後の抱負を聞かせてください。
病院全体を見る立場になってもっとも気にかけていることは、職員のモチベーションを高いレベルで保ち続けることです。そのために定期的に各セクションを回って職員の声に耳を傾けるようにしています。
患者さんに質の高い医療を提供するためには、ハード面はもちろんのこと、人材というソフト面が果たす役割がとても大きいんです。
医療従事者の目標は非常にシンプルです。「患者さんのために為す」これがすべてです。全職員が目標に向かい、ひとつになれるように私も全力でサポートしていくつもりです。
―小児救急医療拠点病院としての特徴を教えてください。
この地域での小児二次救急を一手に引き受けており、24時間体制の受け入れを行います。一次救急については、22時までは隣接する「津市夜間こどもクリニック」で診てもらい、入院が必要だと判断されれば、当院で受け入れます。
三重県の小児医療は、三重大学病院の小児科を中心に機能分担されていおり、三重大学病院では血液疾患や悪性疾患、循環器疾患を中心に診ています。三重中央医療センターはNICU(新生児集中治療)が専門です。当院では小児救急のほか、感染症、アレルギー、神経疾患、腎臓病、糖尿病、小児肥満症などに対応しています。
当院と三重大学病院、三重中央医療センターの3病院でひとつの病院機能を果たすシステムが完成しており、県民にも認知されて医療の効率化に成功しています。
1万人に1人の割合で発症すると言われている小児糖尿病も当院がセンターとして、県内全域からの患者さんを診療しています。チーム医療として診療できるので、患者さんやご家族が安心できる環境を提供できているのではないでしょうか。
―敷地内に新しい施設が建設されるそうですね。
2017年に三重県こども心身発達医療センターが設置される予定です。
県内には児童精神病院の「県立小児心療センターあすなろ学園」と、肢体不自由の子どもたちを診る「県立草の実リハビリテーションセンター」という2つの小児医療施設があります。両施設とも建物の老朽化が著しく改築の必要があったため、患者さんの利便性の向上のために一カ所に集約して、小児医療を担う当院と連携して機能することを目指しています。
当院の小児病棟60床のうち30床は、肺炎、胃腸炎、川崎病などの急性疾患、残りの30床は慢性疾患のアレルギー、肥満、糖尿病のほか拒食症などの心の問題にも対応します。心と体は密接につながっています。主に身体面からの小児科的アプローチをする当院と精神科的な心のアプローチをする新センターとの連携がここに期待されます。
長期入院を要する患者さんは、当院のすぐそばにある三重県立緑ケ丘特別支援学校への登校も可能です。
また、当院は小児だけでなく、神経難病や成人の慢性呼吸器疾患や糖尿病、さらにリハビリテーション医療を行い、子どもから高齢者まで、地域の医療ニーズに応えています。
―日本小児アレルギー学会の理事長を務めていますね。
どの科にも頻度の高い病気が存在します。一次医療機関で医師によって異なる治療をされたら患者さんは困るでしょう。
私は日本小児アレルギー学会理事長として治療の均霑化(きんてんか)を図るためのガイドラインをまとめる役割を担っています。また、臨床研究を推進する事業も行います。研究は患者さんのためになるだけでなく、知的探究心を充足させてくれるので、とても楽しいですね。