徳島大学大学院医歯薬学研究部 消化器内科学分野(旧第二内科) 高山 哲治 教授
◆核となるものを持つ
日本の疾患別死亡率のトップはがんで、徳島県においても同様です。がんの大半は消化器系のがんなので、我々は的確な診断と治療ができる専門家を育成しなければなりません。
また地域の大学として内科全般を診られる医師を育成する必要があります。地方は医師の数が不足しています。消化器内科だけでなく内科全般の仕事が期待されている側面もあるので、核となる専門性を持ったうえで、そこから枝葉を広げた幅広い診断ができる医師を育てねばならないと感じています。
◆内視鏡を用いたがん治療
当教室は若い医師が内視鏡を用いて、がん治療を積極的に行える土壌が整っています。
すい臓がんの診断をつけるために行う超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS‐FNA)を実施しています。この診断法は、患者さんに(小さい超音波装置のついた)カメラを飲んでもらい胃の壁に当てる。そこで、すい臓を診て、腫瘍が見つかれば患部に針を刺し、細胞を採取して診断をつける方法です。
内視鏡専門医も数多く在籍していますし、徳島県に7、8人しかいないがん薬物療法専門医のほとんどが当科の医師です。
診断から治療までを高いレベルで行えるのが教室の魅力です。
◆外の世界に目を向けて
医局員は積極的に研修や留学に行かせています。私がこちらに来たのは8年前ですが、それから現在まで国立がん研究センターに10人ほどが研修に行きました。アメリカにも多くの人が留学に行っています。
四国の人は、どうしても関西に目が行きがちですが、私は北海道の人間なので、どちらかというと東京志向が強いんですよ。だから医局員には東京や外国へ行って勉強をしてほしいと思っています。しっかりと学んで帰ってこられるように最大限のバックアップを惜しみません。
地域にいたらできない経験を積めるので、若いうちに外の世界を見ることは重要なことです。
◆県民へのがん啓発
市民公開講座などを通じてがん検診の普及・啓蒙活動をしています。
徳島大学のがん診療連携センターが中心となって、年4回、がん診療連携セミナーという徳島大学と市町村との連携を深めるセミナーを開催しています。
また、私が所属する中国四国広域がんプロ養成コンソーシアムを中心に毎年、市民公開講座と医師向けの研究セミナーを頻繁にやっています。
すべては、がんの診療をよりよいものにするための取り組みです。
◆異なる県民性
私は北海道出身です。北海道民と徳島県人は、同じ日本人なのかと思うくらい県民性が異なりますね。
徳島の人は、がんの告知を嫌がって家族にだけ伝えてくれと言います。しかし告知しないわけにはいかないので、必ずしていますが、簡単には受け入れてくれない人が多いですね。
逆に札幌の人は、自分だけに告知して家族には内緒にしてくれと言う人が多いんです。
徳島は人と人とのつながりが強い土地なのも関係しているのかもしれませんね。
◆進歩した遺伝子診断
肝臓がんのインターベンション治療をしています。この治療法はカテーテルを肝動脈に進め、血管造影を行い、がんのある部位に抗がん剤や治療物質を注入するものです。またラジオ波焼灼術という肝臓がんに針を刺して焼く治療も数多くこなしています。
今は遺伝子診断に力を入れています。分子イメージングといって1mm以下の小さな前がん病変を蛍光色素で光らせる診断法を開発中で、将来自分が、どのがんになるリスクが高いかがわかる仕組みを開発中です。近々論文を書いて発表する予定なんですよ。
◆充実した環境
うちの教室は若い人が自由にのびのびやれる風通しのよさが自慢で、消化器内科だけにとどまらない幅広い領域を学ぶことができます。
充実した臨床と研究に打ち込めて県でナンバーワン、四国でも有数の環境だと自負しています。ぜひとも多くの人が教室の門を叩いてくれることを願ってやみません。