特定医療法人 竜操整形 竜操整形外科病院 角南 義文 院長
■学会等 1997 年 第10 回日本臨床整形外科医会学術集会会長 2006 年 第18 回日本運動器リハビリテーション学会会長 2008 年 第35 回日本臨床整形外科学会研修会会長2009 年 日本臨床整形科学会名誉会員 他、日本臨床バイオメカニクス学会 終身会員、日本腰痛学会幹事、日本運動器学会名誉会員
◆理想の実現のために
開院した1980(昭和55)年当初は、かつて留学したときに知ったヨーロッパ型の「一病院完結型医療」の実現を目指していました。
しかし、医療費削減政策、診療報酬改定で地域完結型医療への移行となり、当初の私の理想を継続するのは厳しい状況になっています。
在院日数を減らされ、転院を余儀なくされる。とりわけ高齢の患者さんにとって別の場所に移るストレスは、はかりしれません。
当院では急性期一般病床、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟を併設し、病棟を移動することで治療、リハビリを受けられるような体制を整えています。
◆メディカルケースワーカーの重要性
チーム医療を推進するうえで欠かせない存在なのがメディカルケースワーカーです。
独居や老老介護など帰宅困難な方の支援として、退院先の施設や転院先を探したり、高額医療制度の手続きや、介護保険制度の説明をします。昔は同様の仕事を看護師長や事務長がやっていました。片手間でこなせる仕事ではなくなってきているので、メディカルケースワーカーが医療の現場で果たすべき役割は大きくなりました。
◆リハビリのモチベーションを高める
リハビリには精神的な強さが求められます。手術後、精神的に落ち込みリハビリに身が入らない患者さんがいます。
一日も早い社会復帰と、歩いて退院する姿を想像させ、モチベーションを高めてやることが重要です。
リハビリはつらいこともありますが、その背中を押すのが理学療法士や看護師なんです。
◆家族の支え
若いころは朝8時に出勤して一日中外来診療、手術を行い、当直に入り、急患が入って徹夜で働くなんてことは日常茶飯事でした。
日曜日でも病院から呼び出しがあると休日返上で働いたものです。子供とは遊んでやれず寂しい思いをさせてしまいましたが、我々の世代の医師はみなさん同じような状況だったのではないでしょうか。家族の支えがあったからこそ今の私がいるんです。
医師には終業時間などは、あってないようなものです。目の前に患者さんがいるのに「終業時間なので帰ります」などとは言語道断です。
今と昔ではライフスタイルも違い、若い人に我々がやってきたようなことを要求するのは酷かもしれませんが、目の前の患者さんを救う気持ちだけは忘れないでほしいですね。
◆日本の医療を守れ
日本の医療制度は国民にとっては、世界一だと思っていますが、TPPが導入されるとそれが根幹から覆されてしまう可能性があります。
私が今読んでいるのはベストセラーになっている『沈みゆく大国アメリカ』です。この本はアメリカの医療制度の限界を描いた作品です。その崩壊したアメリカの医療制度を政府の財政諮問会議は導入しようとしているんですよ。
世界に誇れる日本の医療制度をなんとしてでも守りぬかなければならないと思っています。
◆失敗から学ぶ
今の子どもさんは、運動不足なのか足腰の関節の動きが悪く、和式トイレが使えない子が多いそうです。スクワットの姿勢をとると後ろに倒れてしまうんですよ。自転車に乗ってもハンドルを握ったまま転んでしまい受け身が取れません。
最近の親は過保護になってしまい、子どもを外で自由に遊ばせません。しかし子どもに限らず人間は失敗をすることで学ぶ生き物です。いろいろな経験をすることで対処法が分かってくる。転び方にしても同様です。たまには思いっきり親子で外で遊ぶのも良いでしょう。