地域に支えられ、求められてこそ「地域医療」

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大田市立病院 西尾 祐二 院長

西尾 祐二(にしお ゆうじ)
1982 島根医科大学(現・島根大学)医学部医学科卒、島根医科大学医学部附属病院麻酔科1985 ~ 1987 アメリカ合衆国エール大学麻酔科(留学) 1991 島根医科大学医学部附属病院麻酔科講師 1994 鳥取県立中央病院麻酔科医長 1999 大田市立病院外科系診療部長兼麻酔科医長 2002 同院副院長 2013 同院院長 2014 大田市病院事業管理者

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おすすめのご当地グルメは、ふぐのみりん干しとバラ酒だと語る西尾院長。

―中核病院としての役割は。

 当院は、島根県中央部で、大田二次医療圏(大田市と近隣を含む地域)の急性期医療を中心的に担っています。

 自治体病院として政策医療を一手に引き受け、5疾病(がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病・精神疾患)5事業(救急医療・災害医療・地域医療・周産期医療・小児医療)を担う機能を持ち、救急医療・DMAT、へき地医療、訪問看護・訪問リハビリなど、幅広く患者さんの需要に対応しています。

 島根県内7 圏域の中で、大田二次医療圏では脳卒中、心筋梗塞など血管系の病気を発症する患者が多く、今後は治療だけでなく予防にも対応していかねばならないと考えています。

―新病院建設について。

 1999年に国立病院から委譲されました。建物の老朽化や耐震性も懸念されることから、委譲時にはすでに「10年後には新病院建設」という話があり、大田市と連携し、2013年に「新病院基本構想」を策定しました。2017年の開院をめざし準備を進めてきておりました。

 しかし、地域の人口減、医療の受療動向や疾病構造の変化、さらには、医療制度が変わり、国の方針で医療機能分化や在宅医療への流れが進む中、未来を見据えると、計画を少し変えていかなければならないと思うに至りました。

 そこで、2013年に決定した新病院の建築規模を縮小する方が、健全な病院運営を行うには懸命であるという判断を下し、現在、見直し作業を進めています。

―総合医育成センター。

 時代のニーズである総合医の育成の成功例として、筑波大学の取り組みがあげられます。

 学内に「地域医療教育センター」という名でサテライトキャンパスを設置し、総合診療教育を始め、これにより研修医が集まり、キャンパスが設置された病院も活性化しました。

 これをモデルに「島根で総合医の育成をやってみないか」という声が島根大学から上がり、その地域での教育・研究、研修の実践の場として当院が選ばれました。

 症例数の多い当院が場所を提供し、2011年、オープンしたのが「島根大学医学部大田総合医育成センター」です。

 外科2人、内科2人、泌尿器科1人という公募で選ばれた5人の先生による総合医育成が始まっています。

 大田市の寄附講座ですので、市の理解が得られる限り、当院の特徴として継続していきたいと思っています。

―地域医療について。

 地域医療は、地域に根ざし、地域から求められる医療であり、逆を言えば、地域に支えられているものです。

 元々国立病院だった当院は、地域との距離感を、地域の方々の反応から感じていました。しかし、それではいけないという思いから「地域の方々に近い病院」を目指しています。病院まつりや毎年の病院清掃作業・院内ボランティアにも、たくさんの地域の方々に参加して頂いています。

 職員には「患者さんの笑顔も、不平不満も、どちらもあなた自身の心と行動が鏡となって返ってきているに過ぎない」と伝え続けてきました。

 結局、自分たちがきちんとやっていれば、患者さんはそのまま返してくれるもの。今はたとえ、経営的には厳しくとも、常に自分たちのスタンスを持ち、地域の人たちの心に寄り添う医療を提供していれば、採算は必ず後からついてくると思います。

―専門について。

 私の専門は麻酔科です。麻酔科医は手術の麻酔を担当するのが主な仕事ですが、その本質は患者さんの容態の変化を迅速に察知し、正確に判断し、的確な対応をすることで患者さんの安全を守ることです。患者さんを見る時は、数値だけでなく直接目で見て、膚(はだ)で感じた感覚も大切にしています。

 急変時のようなダイナミックな場面での対応能力は救急医療の現場で生かされます。呼吸器や循環器を含め患者さんの生命現象を把握し、きめ細やかな対応を行うことが出来る麻酔科は、地域医療にも向いているかもしれません。

―医療の道を志す人へ。

 医療の基本は、まず患者さんの話によく耳を傾け、きちんと診ることです。

 患者さんと真摯に向き合うことで信頼関係も構築されると思います。医療は、学問として学ぶだけでは不完全であり、常に完璧な医療を提供できるとは限りません。人が人を信頼するから医療が成り立つのです。医学書に習熟していても、それだけで医者になれるわけではないのです。

 医療の道を志す若い人たちには、医療人とはどうあるべきかという基本に立ち返って考えてほしい。病気を治すのではなく、人を治す医師になってほしいと思っています。地域医療は、そんな医療の基本を学び、実践できる素晴らしい場所だと考えています。


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