鳥取赤十字病院 西土井 英昭 院長
6月に100周年を迎えた鳥取赤十字病院。4月に新院長となり、この節目を迎えた西土井英昭院長に、思いを聞いた。
―院長就任の気持ちは。
副院長職10年間を経て就任しました。患者さんにとってもっと分かりやすい病院、職員にとってもっと働きやすい病院にしなければならないと思っています。
歴史ある病院である分、建物が古く、受付から診察、治療を経て帰るまでの時間的・空間的な無駄があります。
また、新棟建設中ということもあり、駐車スペースも足りていません。課題はいろいろありますが、まずは今できることから始めたいと考えています。
―鳥取赤十字病院としての役割は。
全国92ある赤十字病院の中で、鳥取県内にあるのは当院だけです。
赤十字の使命として「地域医療」「救急医療」「災害救護」の他、血液事業、地域住民に対する啓発活動があります。
赤十字の強みである災害救護については、国内の災害に対応できるよう日々トレーニングを行い、全国のネットワークを通じて必要時に駆け付ける体制ができています。
当院は、1915(大正4)年に前身となる病院ができました。
戦中、戦後の動乱の時期を除くと、おおむね経営は右肩上がりでした。随時、病院の増床が重ねられながら、当時は医療が少し雑でも、需要と供給は成立していたと思います。
ところが、医療の質が問われる時代に入り、患者さん1人に対して、より細やかな手間と時間が必要になりました。
診療報酬の影響や厚労省の方針から、在院日数も短くなり、求められているのは、1人の患者さんの治療から退院までを効率よく進めること。そのためにはメディカルスタッフの数をそろえ、さらに質も上げなければなりません。
レベルの高い医療を求める患者さんのニーズに応えていきたいと考えています。
―100周年記念について。
6月7日に100周年の記念式典を行いました。当院を支えてくださった各界の方々約120人をお迎えしました。
当院OBの方々や県のご協力を頂き、100年前の写真なども掘り起こし、11枚の大きなパネルを作って、年代を視覚的に振り返る工夫をしました。
式典開始時、約6分の映像を流し、初代院長や当初の病院の建物、鳥取の火災・地震の際の救護活動の様子、病院増改築の過程から100年先の未来の想定図まで上映したところ、大変好評でした。
次の100年の一歩を担う同志である若い世代と、少なくとも50年踏みとどまっていけば、次の1世紀につながると思います。
―建設中の新棟については。
新棟完成については、2期に分けて工事する予定で今年11月末には1期が60%完了し、来年1月末に運用開始予定。全体の完成は、3年後の2018年5月を予定しています。
当院は消化器病を強みとしており、新病院には「消化器病センター」の開設も予定しています。内科と外科が同じフロアで一緒の診療ができるような造りにします。
ここで胃がん・大腸がん・肝がん・乳がんについても、化学療法・放射線治療を含め、全国レベルの医療をやりたいと考えています。早期がんに対しては、外科医が腹腔鏡手術をして完治させることを目標にしています。
また、鳥取大学の協力を得て、「リウマチセンター」も作りたいと思っています。鳥取市の他の病院との機能分担を果たしつつ、当院の特徴を明らかにし、職員一丸となり、分かりやすい医療に着手したいと思います。
―地域連携については。
地域医療連携室のスタッフを今年から増員し、開業医との間を取り持つ部分を作っています。
県内で初めて地域支援病院の資格を取り、紹介・逆紹介の連携をはかっています。当院OBの方々が開業医として町を守っておられ、スムーズな紹介ができるようになっています。
「地域連携懇話会」という一般の人向けの勉強会を年2回開き、毎回約200人の集客ができています。
医療と家庭の両方を支える立場である介護スタッフ、老健スタッフの方々も対象にしており、多数来てくださっています。
例えば、「褥瘡(じょくそう)」1つを取り上げてみても、適切な方法は意外と知られていないんです。
各回、1つの疾患に対し、認定看護師・医師・栄養士など専門の立場から、手当の仕方や予防法をアドバイスする会になっています。