三井造船株式会社 玉野三井病院 磯嶋 浩二 院長
― 長い歴史を感じさせる建物です。
1937年に創立された病院で、岡山県内でも屈指の歴史があります。造船が栄えていた時代に当時の建築技術の粋を集めて建てられました。昭和の香りを残す味わいのある建物ですが、そろそろ新しい建屋が必要かもしれません。関東大震災クラスの地震にも耐えうる堅牢な建物ですので、壊すのにもお金がかかるようです(笑)。
― 病院の沿革について。
三井造船営業部門のひとつとして造船職員の福利厚生のためにつくられた病院です。80年近い歴史を重ねて地元の方にも基幹病院として親しんでいただけるようになりました。
救急指定病院でもありますので、市民の健康と福祉を守るためには欠かせない病院になったと自負しています。
― 病院の特徴など。
救急の基本は地域に密着した2次救急ですが、岡山市内に近いこともあって、連携を密にすることで3次救急にも対応できます。
もっとも力を注いでいるのは在宅医療分野です。訪問診療を積極的に実施し、院長である私自身も35件ほど受け持っています。今後は療養病棟と地域包括ケア病棟も利用して、急性期から亜急性期、在宅といった流れを同じ病院で循環できるような仕組みを作っていきたいと考えています。
全国の地方都市と同じように玉野地区でも高齢化が進んでいます。
1991年に赴任した当初は週末になると商店街がにぎわっていたのですが、いまではシャッターが目立つようになりました。
造船不況でリストラが進んだため、6000人以上実施していた健康診断も3000人程度まで減りました。また、近くに岡山市という大都市があるため、若者はそちらに流れて高齢者が残ってしまいます。この流れは止められないのかもしれません。
― 医師としての背骨。
訪問医療などで患者さんのご自宅にうかがうと、まだまだ教えていただくことが多いんです。人生の終末期に向き合うと、結局は人間同士の信頼関係が一番大事だということに気付かされます。患者さんと真摯に向き合う得難い経験をすることで、それを次の患者さんに生かしていく。在宅医療に取り組むことで、教科書にはない人間同士の結びつきを教えていただきました。
― 今後の抱負について。
2017年から内科の専門医制度が始まります。当院としては、総合臨床医のような専門医を受け入れる「地域医療に特化した研修病院」として機能を充実させたいという展望があります。そのためには在宅復帰強化型の病院であることが必要で、その意味でも訪問診療や自宅での看取り、救急往診は病院運営の重要な柱になります。
地域連携でいえば、開業医の先生から訪問診療を依頼されることも増えてきました。開業医の先生方の高齢化も進んでおり、在宅医療にまで手が回らないという実情があるのでしょう。開業医のみなさんからの入院要請に応えられるような病院としても機能を充実させなければなりません。
地域の基幹病院としてあるべき姿を実現するために、まずは、玉野市の救急対応を充実させ、在宅医療に積極的に取り組んでいきます。