社会医療法人石川記念会 HITO病院 石川 賀代 理事長・病院長
約40年にわたり愛媛県宇摩医療圏域の二次救急を担ってきた旧石川病院。地域医療再生計画による増床に伴い、2013年、HITO病院として新たに開院した。
「病院らしくない病院」と評判のHITO病院とは...。
就任から5年の石川賀代病院長。病院スタッフによると「仕事の時は厳しいけれど、プライベートや病院行事の時は一緒になって楽しんでくれる。院長先生だけれど身近なドクターで、私たちにとってはお姉さん的存在」。
―病院らしくない病院への思いは。
病気になると、精神的にも身体的にもストレスがかかります。その状態の時に落ち着く環境があれば、安心して入院したり外来に来たりしていただけるのではと考えていました。
そもそも病気の時だけ来ていただくより、地域の方にとって開かれた施設になればいいなという思いもありました。
前身の旧石川病院は増築を重ねていたので、つぎはぎな感じがありました。新築移転するにあたっては空間や職員のユニホームまで「統一感」にこだわりましたね。LED照明をすべてオレンジがかった色にするなど、温かみも意識しました。
病院として、エビデンスに基づいた治療方針と説明で安心していただくということが大前提ではありますが、プラスアルファとして、家具や設備、色彩から音楽までこだわり、療養環境を整えることで、少しでも快適に過ごせるよう配慮しました。
―来院者の反応は。
トイレなどを「ピクトグラム(絵文字)」でユニバーサルに表示した結果、移転当初は「わかりにくい」などの意見をいただきました。感染上の問題もあってセキュリティーも厳しくしたので、違和感を持つご高齢の方も多かったようです。今は、「安心して安らげます」という声が多く聞かれます。
―この地域での役割、ビジョンは。
この2年で救急搬送件数がかなり増えています。脳卒中の専門医、循環器の緊急カテーテル治療ができる専門医が、宇摩医療圏域では当院にしかいないという背景もあると思います。救急医療を円滑に進めるために、救急隊の方との勉強会も開催しています。
緩和ケア病棟は新病院になるときに整備しました。がんの患者さまは今後さらに増えていきます。緩和ケア病棟は亡くなるための場所ではなく、痛みを取ったり、症状をコントロールすることで、再び外来通院に戻るための場でもあります。そういう場所を、この地域で整えたいという気持ちがありました。
病状の進行を止めることは難しいかもしれませんが、環境を整え、専門職によって苦痛を軽減することはできると思います。当院は「いきるを支える」を掲げています。病院で亡くなるのか、自宅で亡くなるのか、自分の亡くなり方を選べる時代になる必要があると感じていますし、私たちの病院が選択肢の一つになり得ればいいなと思っています。
そのためには当院だけでできることは限られています。かかりつけ医の先生方との連携も必要ですし、医療・介護職の技術が一定のレベルである必要もあります。
介護職や訪問看護の方を対象とした研修・実技訓練も今年初めて開催し、定員を大きく上回る参加がありました。圏域内の方が安心して医療、介護を受けられる体制づくりのためにお手伝いしたいですし、この病院の医療資源を使っていただくことで貢献できればと思っています。
今、高齢化が進んでいます。現在、四国中央市の高齢化率は25%ほどですが、今後さらに急激に上がっていくと思われます。医療も大事ですが、病院から自宅に帰れるスムーズな仕組みづくりが必要です。当院、もしくは当グループも地域包括ケアシステムを構築していくための地域での役割を果たさないといけないと思っています。
当院には急性期病床だけでなく、回復期リハビリ病床50床、緩和ケア病床17床、地域包括ケア病床45床があり、ある程度機能分化が進んでいます。
高齢者の方に、安心して在宅で療養していただくために、必要な資源を使い、少しでも早く退院される状況にすることが必要で、それをこの病院、グループ、地域の医療機関、行政の方々と、四国中央市の地域全体でサポートできればと思います。