鬼手仏心。仕事柄、院長室にお邪魔することが多いが、冒頭の文字が書かれた掛け軸をよく目にする。ある院長は、「これがもし逆だと、あなたも不安に思うでしょ」といたずらっぽく笑った。
鬼の心になってはいなかったか。神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)では、4月までに生体肝移植手術を受けた患者4人が術後1カ月以内に死亡。事態を重くみた日本肝移植研究会が調査を実施し体制整備を求めていた。しかし、KIFMECは院長交代を実施したのみで、延期していた男性の手術を6月3日に実施。63歳の男性は手術から20時間後の5日に死亡した(『神戸新聞』
KIFMECは術前に成功率が50%以下であることを説明したという。遺族側も「いっさいの悔いはない」という趣旨のコメントを発表している。しかし、である。
神戸市は12日、医療安全監理体制に不備があると指摘し、改善指導を行なった。移植医療へ及ぼす影響は大きい。フロンティアという名称を開拓精神ではなく無謀な挑戦と解釈していたならとんだ鬼心であろう。