しゃべる、食べるは人生の楽しみ 頭頸部がんから機能と整容を守りたい

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佐賀大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 倉富 勇一郎 教授

倉富 勇一郎(くらとみ・ゆういちろう) ■略歴 1982年九州大学医学部卒業、同附属病院、公立学校共済組合九州中央病院、国立病院九州がんセンター、新日本製鐵株式会社八幡製鐵所病院、九州大学医学部附属病院を経て、2004年佐賀大学医学部耳鼻咽喉科学講座(現耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)助教授。2007年同准教授、2014年より現職。

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―力を入れていることは。

 頭頸部がんを中心に診療と研究をしています。「頭頸部がん」は鎖骨から上で、目と脳、皮膚を除いた部分にできるがん。日本のがん全体に占める割合は5%前後です。

 リスクは圧倒的に喫煙と飲酒、そして口の中の不衛生です。それらの理由から、患者さんは男性、そしてがん年齢の60代以降の方が多いですね。

 頭頸部がんの内訳を細かく見てみると、日本全体の喫煙率が下がってきているため、喉頭がんの患者数は横ばいです。しかし、口腔と咽頭のがんは増えてきています。理由は飲酒による下咽頭がんの増加や、HPVウイルスによる中咽頭のがんの増加。高齢化社会となって、超高齢の女性の口腔がんも増えている印象です。

―頭頸部がんの治療で得意とするものは。

 全国的には放射線治療をするところが多い早期の喉頭がんですが、当科では全身麻酔をして口から管を通し、レーザーを使って病変を切除する経口的切除手術に積極的に取り組んでいます。

 この利点は、治療が最短2泊3日で済むこと、口から管を入れて切除することで機能障害が起きないということ。また、最初に放射線で治療をしてしまうと、その後、別のがんができたときに放射線治療を選択できず、非常に治療が難しくなるという理由もあります。

 早期のがんで、手術によって機能障害なく病変を取れるとなれば手術を。これからは全国的にもそういう流れになっていくと予想しています。今後、当科では早期の咽頭がんでも、経口的切除を増やしていこうと計画しています。

 一方で、進行した咽頭がんの場合には、抗がん剤を併用する放射線治療を積極的にしています。手術をすると、声帯を含めて大きく切除する必要があり、機能障害になる場合も多いためです。

 この抗がん剤併用の放射線治療では、セツキシマブという分子標的薬を併用する治療に1年ほど前から取り組み始めました。体力のない高齢者にも使えるという利点がある一方、皮膚や粘膜への傷害、それから間質性肺炎などの特殊な副作用がありますが、佐賀大学は血液腫瘍内科、皮膚科、呼吸器科、薬剤部などとうまくチームを組んで進められていると思います。

 その他、口腔のがんでわりと多い舌がんの手術で再建が必要な時には形成外科、口腔外科とチームを組むなど、チーム医療がスムーズにできています。佐賀大学は、診療科の垣根が低く、チームを組みやすいというのは感じますね。

 治療では、「しゃべる」「食べる」という機能面と整容的な面をなるべく保存・再建しようと取り組んでいます。食道発声が話題になっていますが、それを補助するためのシャント発声の手術も手掛けています。

―その他、医局の特徴は。

 少人数ということです。現在、大学に8人、医局からの派遣などを含めても11人。研修医制度が変わり、地方大学の、いわゆる「マイナー診療科」と言われるところに新人が入らなくなりました。当科でも今年1人、その2年前に2人入りましたが、その前は少しさかのぼらないといけません。

 ただ「マイナー科」と言われるだけで、私はそうは思っていません。耳鼻咽喉科は、その領域の中に感覚器もあれば、音声、言語、嚥下といったコミュニケーション機能やおいしいものを食べる機能もある。子どもからお年寄りまで診るし、患者数も多い。アレルギーも多くなっていますから、出番はたくさんあると思うんです。

 今は、初期研修の必修科目から外れてしまっていますから、学生に対して、耳鼻咽喉科の魅力をPRしないといけません。数年のうちに医局員の数を倍に。それが目標です。

―耳鼻科医、頭頸部外科医としての思いは。

 卒業時には外科に入ろうと思っていました。でもバドミントン部のOBで頭頸部外科医の小宮荘太郎先生から、「同じ外科だし、なり手も少ない。必要だから一緒にやろう」と誘われたんです。

 狭い範囲で、がんを治す手術をするため、どこを切るかの見極めが非常に大事です。経験も必要ですが、「メスを入れる以上は絶対に治す」という気持ちが重要。治らない方もいますが、それぐらいの気持ちがないと治せないんです。

 過去に、手術しかない、手術するなら、舌も喉頭も声帯も取らないといけない、という舌がんの患者さんがいました。話すことができなくなるが、その手術しか考えられない、と説明したら、「もうちょっと長生きしたいから手術を受ける」と。

 今、手術がうまくいって何年も経ちますが、経過観察で来院するたびに「元気、元気。楽しく過ごしています」と書いた紙を見せてくれます。機能障害を乗り越えて元気にしている姿を見ると、こちらが元気をもらえますね。


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