石田 照佳 病院長が語る再整備計画
新棟建設工事が進む広島赤十字・原爆病院(広島市)。今年9月中旬には竣工し、10月には稼働する。その後、さらに本館の改築計画も。石田照佳院長に病院の目指す姿を聞いた。
現在の耐震基準を満たしていない建物があること、老朽化が進んでいること、建物自体が狭くて使い勝手が良くないことや駐車場も足りていないことなどから、今回の再整備計画が始まりました。
現在工事中の新棟は、今年9月中旬竣工で10月中旬に稼働開始予定。その後、既存棟を改修し、2017年6月にグランドオープンという計画です。
◆機能充実快適性アップ
新棟は9階建てで、総面積は2万3千平方㍍。救急受け入れ体制強化のため、1階に救急センターを設けます。救急センターの面積は従来のおよそ7倍。初療室3つ、診察室3つ、当直室5つを備えます。さらにレントゲン、CT(コンピューター断層撮影)、内視鏡もすべて1階でできるように計画しました。
広島市内では、広島大学病院、県立広島病院、広島市立広島市民病院が3次救急を担っています。当院は、3次救急の病院がオーバーフローにならぬよう、2次救急の砦となりたいんです。
1階の救急センターと大型エレベーターで直結した3階には、手術室10室、ICU(集中治療室)とHCU(高度治療室)計20床を置きます。さらにその上層階には外科系の病棟、ヘリポートも造ります。高度医療、災害時にもしっかり対応できるよう、ハード面だけでなく医師や職員の意識改革も進めているところです。 患者さんの快適性も上がります。病室の半数近くは個室になり、1ベッド当たりが使える面積もこれまでの1・5倍ほどに。さらに女性病棟は、乳がんや子宮、卵巣のがんの患者さんと周産期の方はエリアを別にします。
また、これまで1台ずつだったリニアック(放射線治療装置)とMRI(磁気共鳴画像装置)はそれぞれ2台ずつにし、がん拠点病院として、診断と治療の機能も高めていきます。被爆や高齢化の影響で、当院の血液内科の外来患者数は1日平均200人を超えます。手狭になった血液・腫瘍治療センターを55床に拡充し、無菌室も60床に増床します。
◆1フロアの医局に
現在の医局はかつての病室を使っているため、2〜3人が1部屋です。しかし、今回の改修で、院長・副院長以外は、全員が同じ空間で過ごすようにしました。コミュニケーションがとりやすくなり、患者さんの情報を共有したり、他診療科の医師に相談したりということも、しやすくなると思います。
研修医にとってもいい環境です。いろいろな科の医師と同じ場所で過ごすことになり、仕事を目にし、吸収する機会も増えます。すぐ隣には病理解剖室が置かれますから、教育にも適した環境になると思いますね。「育ち、育てる環境」が整うことになります。
◆地域との連携強化も
従来は、病院完結型の医療でしたが、今は地域完結型医療の時代。われわれは高度急性期、急性期を担い、回復期などを診る病院、開業医の先生方との連携をますます強化していきたいと思っています。
そのため、この4月からは従来の副院長2人体制から1人増やし、新たに地域連携担当を設けました。新棟の1階にできる地域連携室およびがん相談支援センターは、現在の5・5倍。事務スタッフだけでなく、薬剤師、管理栄養士、看護師も配置し、入退院に関するさまざまな手続きを1カ所でできるようにします。
◆日赤の赤、カープの赤
通常、病院というとパステルカラーが多いですよね。でも、日赤の赤、広島カープの赤、ということで1階の外来アトリウムロビーなど一帯のテーマカラーは、赤にする予定です。アクセントとして使うことで、派手すぎない雰囲気になると思います。