4月16日から3日間、福岡国際会議場で開催された第44回日本脊椎脊髄病学会(田口敏彦会長=2面に記事)で、作家古川薫氏の特別講演を聞いた。題名は「吉田松陰『留魂録』の死生観」
NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の視聴率はあまり高くないそうだが、それでも松陰は門下生に「志(こころざし)を持ちたまえ」と語って、安政の大獄の中に消える
では、志とは何か。松陰を研究している人に聞いてみると、どれほど立派で必要とされる行ないでも、自分で決めて自分で達成したものはすべて「自己実現」だという
志は自己実現の対極にあり、自分で決めたわけではないのに激しい思い込みや使命感に駆られ、それに突き動かされて満足感を覚えることだという。「滅私して何かに操られることに生きた心地がし、実現は二の次」のだという。そうであれば松下村塾に集った者のうち、志を有した者は吉田松陰1人ではなかったかと思う
松陰が没して150年余が経つ。「志」、「維新」という言葉がふさわしい人物はどれだけ登場しただろう。