医療と法律問題|九州合同法律事務所 弁護士 小林 洋二

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こばやし・ようじ/宮崎県立西高校理数科卒業 東京大学法学部卒 ■水俣病福岡訴訟弁護団、九州HIV訴訟弁護団、らい予防法違憲国家賠償請求訴訟西日本弁護団、患者の権利法をつくる会事務局長

九州合同法律事務所福岡市東区馬出1丁目10-2TEL:092-641-2007

 厚労省は、3月20日付で、「医療事故調査制度の施行に係る検討について」を発表しました。2月25日の第6回検討会は議論の取りまとめに至ることなく終了しましたが、その後、事務局と座長とで調整した結果、取りまとめに至ったという形になっています。

 この取りまとめのうち、医療法施行規則の改正部分について、現在、パブリックコメントが募集されています。ただ、委員の間で意見が厳しく対立した部分は、ほぼ通知レベルの問題であり、規則レベルで問題になるのは、いかなる死亡を「予期しなかったもの」として調査の対象にするかという論点くらいだと思われます。

 規則案は、これを以下の3つのどれにも該当しないもの、としました。

 ① 「管理者が、当該医療の提供前に、医療従事者等により、当該患者等に対して、当該死亡又は死産が予期されていることを説明していたと認めたもの」

 ② 「管理者が、当該医療の提供前に、医療従事者等により、当該死亡又は死産が予期されていることを診療録その他の文書等に記録していたと認めたもの」

 ③ 「管理者が、当該医療の提供に係る医療従事者等からの事情の聴取及び、医療の安全管理のための委員会(当該委員会を開催している場合に限る)からの意見の聴取を行なった上で、当該医療の提供前に、当該医療の提供に係る医療従事者等により、当該死亡又は死産が予期されていると認めたもの」。

 ここでいう「説明」や「記録」は、一般的な死亡の可能性についてのものではなく、当該患者個人の臨床経過等を踏まえて、当該死亡が起こりうることについての説明や記録であるという解釈は、通知で示されることが予定されています。

 つまり、当該死亡の可能性を事前に説明していれば「医療事故」には当たらないし、説明せずに記録に残しておくだけでもいい、または、説明、記録がない場合でも、管理者が事後的に事情聴取して予期されていたと認めれば「医療事故」には該当しないということです。

 通知による一定のしばりはありますが、結局のところ、「医療事故」に該当するかどうかはすべて、医療施設の管理者の判断ということになります。

 これは今回の医療事故調査制度における「医療事故」の定義に係る部分ですから、これに該当しないとなれば最初から調査の対象になりません。院内事故調査に納得できない遺族は、第三者機関である医療事故調査・支援センターに調査を依頼することができますが、医療機関の管理者が「医療事故」であると認めない限り、第三者機関も、何もできないのです。

 2003年12月、当時の坂口厚生労働大臣は、医療事故対策緊急アピールを発表し、「医療は生命を守り、健康を保持するためにあるものですが、医療事故の頻発はこのような医療本来の役割に対する国民の期待と信頼を大きく傷つけるものと言わざるを得ません」と述べました。長年にわたる医療事故調査制度に関する議論、その結果としての今回の医療法改正は、この認識の上に立ったものであると私たちは理解しています。

 この医療事故調査制度が、医療に対する国民の信頼を回復するものになるかどうか、まずは、一つひとつの医療施設の管理者が、「医療事故」の判断を適切に行なうか否かが重要な分かれ道になりそうです。


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