マニュアルを捨てて、病院「らしさ」を模索する

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独立行政法人 国立病院機構 高松医療センター 細川 等 院長

1982年 信州大学卒、香川医科大学第一内科入局。社会保険栗林病院内科、香川医科大学附属病院第一内科、香川医科大学第一内科を経て、1993年 米国 Tufts UniversityNew England Medical Center 留学。香川医科大学附属病院総合診療部、国家公務員共済組合連合会高松病院糖尿病センター、全国社会保険協会連合会社会保険栗林病院を経て、2011年 国立病院機構高松医療センター 総括診療部長、2013年より同センター院長。

 独立行政法人国立病院機構高松医療センターは、香川県における、神経・筋難病、呼吸器疾患の拠点病院。戦後間もなく国立高松療養所から発足し、2004年に独立行政法人化した。

 同センターでは、政策医療のみならず、心筋梗塞などの循環器疾患、骨・運動器に関する高度医療を行なっています。

 前回(2013年11月号)、院長就任1年目の抱負を語った細川院長に、その後のお話と今後の展望をうかがった。

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多くの患者さんを受け持つ細川院長。医療用PHS が院長の指示を仰ぐために何度も鳴った。電話の向こうに穏やかな口調で素早く指示を返して、外来へ、病棟へと駆けて行った。

― 院長就任から2年が経ちました。

 就任時に思い描いていたような成果は上げられなかった、というのが今の率直な感想です。

 当初より、大学に何度も足を運び若い医師を派遣してもらえるようお願いするなど、医師不足と医師高齢化の解消を目指して、様々な努力をしてきました。

 また、当院の診療に興味を持ってもらい、ぜひ当院で働いて欲しいという思いもあり、医学生実習の受け入れも積極的に続けています。

 幸い、外科・内科医師は増員に至りましたが、定年退職による減員も重なり、結果的に目標達成は果たせませんでした。

 看護師についても、卒業後に当院で働いていただければと、市内の高校で、看護科の学生を対象に、私の専門である糖尿病・内分泌・代謝の講義をさせていただいています。

 もっと足繁く多くの場所に出向いて人材確保を図りたいのですが、今はこれが精一杯です。

 昨年度は当センターの方向性を「模索」する年としていました。

 例えば、地域連携に限っても、そこに至るにはそれぞれの立場やタイミングをはじめ、多くのプロセスがあり、こうすればうまくいくという決まったマニュアルはありません。当センターに合ったやり方を構築していく必要があるわけです。

 2年前よりも目的は明確化してきています。しかし「模索」は完結しておらず、昨年に引き続き、今後もしばらく続きそうです。

― 就任時に計画されていた電子カルテ導入と病院建て替えは。

 ここのところ、香川大学医学部附属病院、香川県立中央病院、高松赤十字病院、さぬき市民病院など、周辺にある県の中核病院が、新築移転や建物の改修に次々と着手しています。

 当センターは、新築・増築した建物と開設した当時からの古い建物が混在していて、施設的にも機能的にも限界が来ています。

 院長就任時、5年後の建て替えを目標に掲げましたが、まず経営を軌道に乗せた上で、慎重に取り組もうと考えています。

3・11以降の建築資材の高騰、免震材料の偽装販売など、経済面や安全面から考えても、急ぐのは得策と言えないことも理由の一つです。

 電子カルテ導入については、できるだけ早い時期に実現したいと考えています。

 コンピューターが万能だとは思いませんが、データを明確化すると客観的な分析が可能になります。これは、業務改善、経営改善にも活用できます。

 また、近年の若い医師は電子カルテで教育を受けているため、紙よりも効率よく作業できるでしょう。

 地域医療においても、医療情報の電子化が進んでいるため、足並みをそろえることも必要です。

 国立病院機構本部と交渉しながら、早期の導入を目指しています。

― 高松医療センターの今後は。

 当センターはもともとは国立病院でしたが、10年前に独立行政法人化し、この春に非公務員化します。

 実際は半官半民といった位置付けに変わりはありませんが、公務員に課せられている規制が緩和され、独自に動きやすくなるのを期待しています。

 国立病院機構という大きな組織に属しているとはいえ、これからは独立した医療施設として、診療だけでなく経営改善がさらに重要になっていきます。

 診療については、これまで通り、政策医療としての神経難病や呼吸器疾患に取り組みつつ、一般診療に関しても専門性を高めて、バランスの良い診療体系を築いていきます。

 具体的には、急性期を縮小し、障害病棟を拡大させて活用していきます。その目標に沿って、昨年度は病棟を再編成しました。診療報酬改定をきっかけに、結核20床はそのまま、障害を120床から160床に増やし、一般急性期を100床から60床とコンパクトにしています。

 今後は、大病院と中小病院間の橋渡し的存在として、フレキシブルに機能する病院を目指します。

― 院長として今後の心構えは。

 私はもともと、なんとしても医師になりたいと思っていたわけではありませんでした。漠然とした気持ちのまま医学部にチャレンジして幸運なことに合格したのです。

 卒業後、信州大学に残ることも考えていました。

しかし、お世話になった先輩方の助言もあり、自分に何か貢献できることがあるのではないかと考えて、生まれ育った香川県に戻ってきました。

 今になって考えると、この道を選択して良かったと思います。縁あって「高松医療センター院長」という、リーダーシップを発揮すべき場が与えられ、今の自分があるからです。

 もともと私はリーダーとして優秀な人間ではありません。努力しても報われず、たいへん苦い思いをすることがあります。

 しかし、四苦八苦しながら最善策を模索して奔走する中で、医師としての自分を見つめ直し、医療に貢献することの喜びを職員と分かち合う機会にも恵まれました。

 この先、これまでに蒔いてきた種が健やかに芽を出してくれることを期待しつつ、まずは医師・看護士の増員、ハード・ソフト面の充実から、目標の実現に向けて努力していきます。


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