社会医療法人 真泉会 今治第一病院 藤田 博 院長
4年目の新病院
システムが変わったので新設当初は不慣れでしたが、改良されたことがほとんどなので徐々に慣れてきています。
外来診療は「クラーク」(記録係)の席が用意され、内容をほぼ的確に入力してくれるので、医師は患者さんの顔を見て診察に没頭できる、それが旧病院の紙カルテとは一番違うことです。
また、電子カルテが導入されたおかげで過去の画像や履歴が即時に出せるので、それを使って患者さんに説明できることは助かっています。グラフや数字の流れなどが参照できるので説明しやすく、患者さんにとってもわかりやすいし、理解しやすいでしょう。
カトレアの会
私が主催する「カトレアの会」という勉強会を12年間にわたって続けています。100人ほど収容できるカトレア館という講堂を使って行なっていますが、累計で260回ほど続いています。
救急蘇生について研修をしたいということで始めた勉強会ですが、最初は医師の関係者のみで開催していました。看護師からも参加したいという要望があってオープンな会にすると、毎回100人くらいの方が集まってくれました。
ここ数年は医師だけでなくコ・メディカルの方にも講師をお願いし、看護師や臨床工学士、薬剤師に最近のトピックスについて話してもらっています。最近では院外の方、たとえば救急救命士の方などに話していただく機会も増えています。
総計10人前後の講師で研修を行なっています。近隣の病院にも案内を出し、参加者の半分くらいは別の病院から来ていただいています。
救急体制の危機
現在、今治の医師たちがもっとも頭を悩ませているのが、今治市の救急体制が危機にあるという問題です。今治市は、輪番制の救急体制を採っていて、これまでは365日を8院程度の病院が当番を担当していました。しかし、この輪番制がうまく機能しなくなる可能性が高くなっています。
病院が不足しているのではなく、支えてくれる医師がいなくなりつつあるのが最大の原因です。若い医師がとくに不足しています。
地方の救急医というのは外科医が担当することが多いんですが、内科も含めて若い医師が少なくなってきていますね。
現在は愛媛大学の支援の下でなんとか輪番制を維持できていますが、そもそも愛媛大学への入局者が少なくなったことを考えれば、いつまで支援が受けられるかわかりません。大学医局への入局者の数は、私が卒業した頃と比べると半分以下になっています。
地元の、たとえば当院もそうですが、救急を担っていただいていた医師も高齢化が進んで勤務がきつくなってきているのが実情です。現在は内科医師にもお願いして輪番制に入ってもらったり、一般開業された医師にもお願いして、輪番2人のうち1人をなんとか維持している状況です。
4月から、病院がひとつ輪番制からはずれるのですが、そこが担当していた月の3回の担当を埋めるのが非常に難しい。どの病院も上限まで担当しているので、4月以降の輪番制の予定が正確に決まっていません。今後、輪番制がどこまでがんばれるかの正念場が来ていると思います。
外科医不足
大学の先生と話すと、医学部が危機に瀕しているのがわかります。医局が維持できないほどではないが、主たる派遣病院に医師を送れないことが今後起こってくるでしょう。とくに、「外科はしんどい」という評判が定着しているので、なかなか成り手がいないのは寂しい限りですね。
たしかに外科医は体力勝負というところはあると思います。下働き的なことが多く、一人前になるまでに時間がかかるのも外科が敬遠されている原因でしょう。
外科医としての醍醐味は手術ですが、私の実感では、若くて頭の柔らかな時期に他の科で経験したことが現在の手術に役立っていることがあります。たとえば帝王切開でも、ふつうの腹部外科と似ているので、他科からみた所見というものを経験できる。
ほんとうは本を読んで自分で勉強するのが理想なんでしょうが、先輩が実地をもとに教えてくれるのは印象に残って覚えやすかったんです。
現実問題として、大学の入局者が増えないと当院にも医師がまわってきませんし、医師養成制度のありかたや国の方針にもかかわる問題だと思います。国も徐々にわかってきているようで、医学部地域枠の創設などがありましたが、まだ実際の効果としては現れていないですね。
今後、全国で高齢化が進むなかでも、地方の医療制度を手厚く保護することがとくに大切になってくるでしょう。