第87回日本胃癌学会総会を終えて / 会長として挑んだ「分化と統合」

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二宮基樹 広島市民病院副院長

■略歴 1977 岡山大医学部卒 1993 社会保険広島市民病院外科部長 1999 広島大原爆放射能医学研究所腫瘍外科非常勤講師 2002 社会保険広島市民病院外科主任部長 2003 岡山大学医学部臨床教授 2009 広島市立広島市民病院副院長、同病院通院治療センター主任部長
■資格 日本消化器学会指導医・専門医、日本外科学会指導医・専門医
■その他 1998 胃癌学会評議員 2006 日本胃癌学会ガイドライン検討委員 2007 日本臨床外科学会評議員 Hiroshima Oncology Groupof Gastric Canser 代表幹事

 第87回日本胃癌学会総会が3月4日〜6日、広島市内で開かれた。会長を務めた二宮基樹・広島市民病院副院長に、総会を終えての思いを聞いた。

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 参加者は約2,400人、応募演題数は1,144と、これまでの総会の中でも盛り上がった会の1つになると思います。

 学会のテーマは「分化と統合」としました。

 今、胃がん治療は内視鏡治療、手術、化学療法...それぞれの領域が専門分化しています。

 また医師、看護師、臨床心理士、栄養士といった職種が各々の専門性を発揮しながらチーム医療をする時代です。

 日中韓を含む東アジアは世界の胃がん患者数の60%を占めています。日本と韓国は共同研究をしており、将来的には中国も加わることでしょう。総会には韓国と中国を中心に海外からも数多く、質の高い演題の応募がありました。

 領域、職種、国...。分化しているそれらをまとめ、統合していくのが本学会総会の役目だったと思います。

 会場運営にあたっては岡山大学、広島大学、県立広島病院、福山市民病院、福山医療センター、四国がんセンターが協力してくださいました。当広島市民病院の職員も、科や業種を超えて延べ100人以上が運営に関わってくれました。

 「分化と統合」を内容でも、運営の面でも、貫くことができました。それが、一番目指していた形でもありました。

 プログラムの柱には、胃専門外科医と食道専門外科医とで異なっていた手術術式の共通化論議が進む「食道胃接合部がん」、予防的郭清が否定され、一度は衰退しかけていたものの、いま術前化学療法後の治療的郭清として復活しつつある「大動脈周囲リンパ節郭清」、これまでは切除不能だったがんを、化学療法奏功後に手術する「conversion therapy」を据えました。これらは参加者の関心が高く、活発な論議もされました。

 世界を主導してきた日本の胃がん治療の黎明期から現代に至るまでエポックメーキングなテーマを取り上げ、それらの証人に語って頂く「胃癌の歴史」もこれまでにない企画で、多くの聴衆を集めました。厳しい目を向けられている臨床研究のあるべき姿を考える企画や、胃がん治療の手技をエキスパートたちに映像付きで解説していただく企画も好評でした。

 学会が終わってから、参加された方から学会の内容や運営に対する高い評価の手紙やメールを数多くいただきました。ご協力いただいた方々に本当に感謝しています。2年間、ひたすら学会に向けてやってきました。今は残務整理の最中です。ホッとできるまであと少しでしょうね。

胃がん外科医としての道

 胃がんの名医を調べると、必ず二宮基樹・広島市民病院副院長の名前に行き当たる。二宮副院長のこれまでの歩み、そして後進への助言は...。

 高校のころはジャーナリストになり世界を飛び回ることを夢見ていました。親から「正直さだけが取り柄だから、世を生き抜いていくために技術を身に付けなさい」と医者を勧められても、だいぶ反発して。医学部に入ってからも卒業後はジャーナリストになろうと思っていたぐらいでした。

 それが医学部で学ぶうちに興味を持つようになり、救命救急をやるために外科の道に。救命救急医として30代半ばを過ぎ、大抵のことができるようになって生涯かけてやりたいことが分からなくなったころ、国立がんセンターの胃外科で勉強する機会を得ました。そこで胃がんの臨床と臨床研究の世界に触れて「これだ」とピンと来ましたね。日本で1番患者が多いこと、日本が世界をリードしていることにも魅力を感じました。

 いい医者になるためにはいいもの、本物を見ないとなりません。しかし自分の実力に応じたものしか見えてこない。ですから一所懸命に勉強する必要があります。

 その領域の成書を読んでアウトラインを知り、定期的に雑誌に目を通し、さらにパブメドをチェックして英文論文に目を通すこと。また、外科医なら手技の映像をたくさん見ることですね。

 さらに外科医は、シミュレーションが大切です。手術の皮膚切開から閉腹まで、何度も何度も、考えるのではなく自然に手が動くようになるまでやることが必要です。

 かつての外科は閉鎖的で、その施設外の外科医に手術を見せることはありませんでした。今は喜んで見せますし、志を持った人は全国どこへでも見学に行きます。私も多くの見学者を受け入れてきました。いいものを取り入れて、自分のスタイルをつくっていってほしいと思います。

 もう一つ言いたいのが「英語を話す力を磨いて」ということ。胃がん治療のトップを走る日中韓の中で日本の英語力は1番劣る。議論の場で見劣りし、アピールできないんです。英語は意見を伝える手段。これを身に着けないと日本の将来はありません。さらに外の世界を見てやろうという若い人がもっと出てほしいとも願っています。


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