「がん」と「男性医学」の2本柱で

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川崎医科大学泌尿器科学教室 永井 敦 教授

■略歴:私立愛光高校卒。1982年 岡山大学医学部医学科卒業。岡山大学医学部泌尿器科学教室入局。津山中央病院、日本鋼管福山病院、岡山大学医学部附属病院泌尿器科助手、同大医学部・歯学部附属病院泌尿器科講師を経て、2006年 川崎医科大学泌尿器科学教授。2013年 川崎医科大学附属病院副院長・医療安全管理部長。

■主な所属学会・役職・資格等:日本泌尿器科学会(監事・代議員、専門医・指導医)、日本性機能学会(副理事長、性機能専門医)、日本性科学会(理事、公認セックスセラピスト)、日本泌尿器内視鏡学会(評議員、泌尿器腹腔鏡技術認定医)など。

 川崎医科大学の泌尿器科学教室は、さまざまな特徴的な取り組みで注目を集めている。

 同教室の永井敦教授に、その内容や後進への助言を聞いた。

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日本最多の1080例高線量率組織内照射療法

 1997年に始めた前立腺がんに対する高線量率組織内照射療法の症例数は、日本で最も多い1080例(3月末日現在)です。

 前立腺がんの治療には手術、放射線療法などいろいろあります。高線量率組織内照射療法は、放射線治療の一つで、外照射と併用することで最大の効果が出ます。

 前立腺がんの腹腔鏡手術にも力を入れています。私が赴任したのが2006年。その時に、施設認定を取って始めました。以来9年間、後進を厳しく鍛えてきましたから、そのスキルに自負もありますね。

 今は、放射線治療と手術とで、件数を分け合うような形になっています。がんのある組織を残すのは嫌だという理由で手術を選ぶ人もいますし、尿失禁や勃起障害になる恐れのある前立腺全摘は避けたいと放射線療法を選ばれる方もいます。

 すべての治療法について、患者さんによく説明し、患者さん自身が決められています。その判断は、人それぞれです。

 2016年夏に、川崎医科大学総合医療センター(岡山市)が新築される計画です。その時に、こちらの川崎医科大学附属病院(倉敷市)でもロボット支援下手術を始める予定で準備を進めています。

 その他、高度先進医療の「悪性腫瘍に対する腹腔鏡下骨盤内リンパ節郭清術」もやっていますし、がん全般の治療に積極的に取り組んでいます。

"元気な男性"をつくり支える「男性医学」

 私が中心となってやっている男性医学は、中四国でもかなり評価を受けていると言ってもいいかもしれません。

 最近、患者さんが増えてきているのが、LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)。これは男性ホルモンの一種「テストステロン」の減少によって起こりますが、骨密度低下、筋力低下、メタボリック症候群、ED(勃起障害)などの性機能障害、うつややる気のなさと言った男性更年期症状など、多くの障害が出てきます。精神科からの紹介で受診する方も増えてきました。

 一番危険なのは、命を脅かす心筋梗塞など心血管疾患を引き起こす可能性があるということ。ですから、われわれはEDで受診した方にはすぐ「きちんと調べましょう」と言います。EDは循環器疾患の前触れと言っていいでしょう。ばかにしてはいけないんです。

注目はアンチエイジング

 LOH症候群の治療も、それに付随するEDの治療もアンチエイジングです。うちは、アンチエイジングにも力を入れています。

 男性のアンチエイジングというと、1つ目はテストステロン補充。飲み薬では肝臓を傷めますので、注射で補充します。海外には貼り薬があるのですが、日本では認可されていません。

 2つ目がバイアグラ、レビトラ、シアリスといった勃起障害治療薬「PDE5阻害薬」の服用です。

 研究によって、これらの薬が、勃起障害にだけでなく様々ないい影響を与えることが分かっています。骨盤内の虚血を改善し、排尿障害を改善させます。実際にPDE5阻害薬が前立腺肥大症の適応を取っています。

 またPDE5阻害薬は血管内皮を元気にし、血管を若返らせます。さらに記憶力がよくなるという実験データもありますし、テストステロンも上がってきます。

 いかに元気で長生きするかということを目指す「男性医学」は人を幸せにします。大学院生たちも喜んで研究しています。

男性不妊にも積極的

 男性不妊症の原因の一つに精索静脈瘤があります。これがあると精巣の温度が上がり、精子の質が悪くなったり、運動率が下がったり、数が減ったりしてしまう。無精子症になる人もいるんです。

 われわれは、この精索静脈瘤の手術を鼠径部から顕微鏡で実施します。局所麻酔なので患者さんの負担が少なくて済みますが高い技術が必要です。できる施設はあまり多くありませんので、県外からも患者さんがお見えになります。

 できる施設数が少ないもう一つの理由は、男性不妊を診る泌尿器科医が非常に少ないということ。産婦人科の世界だと不妊はメインのひとつですが、男性不妊はなかなかそうはなりえないんです。

 でも、われわれは男性不妊を診る医師で全国的なNPO法人「男性不妊ドクターズ」を発足させました。さまざまな施設に声をかけて会員を増やしています。

論理的思考と人間性を

 今の時代はエビデンス、データを重視し、それに基づいて話をしないといけません。そういった意味で論理的な頭脳を学生の時から鍛えておかないと、一流の医師にはなれないと思います。

 文献や論文をしっかり読み、明確に解析、評価できる力をつけないといけない。そのためには英文論文も必要ですから、英語の勉強も非常に大切です。

 それにプラスして人間性を養わないといけません。クラブ活動はもとより、学外のいろいろな人物との交流 を通じて人間関係を築きながら、論理的頭脳も鍛えるということが大事でしょう。常に相手の立場に立って考えられる人に。ありきたりかもしれませんが、それが大切だと思います。


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