「なにか違う」の直感を信じて病院へ

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欧州で第1 相試験を開始/アルツハイマー病新薬を開発した大分大学医学部医学科 神経内科学講座 松原 悦朗 教授

1985 旭川医科大学医学部卒 1989 群馬大学医学部附属病院神経内科助手 1992 ニューヨーク大学医療センター病理学講座研究員 2001 岡山大学医学部附属病院神経内科助手 2005 国立長寿医療センター(研究所)アルツハイマー病研究部疾病制御研究室長 2008 弘前大学大学院医学研究科脳神経内科講座准教授 2013 より現職。日本脳血管・認知症学会理事 日本内科学会評議員 日本神経学会代議員などを務める。

3月20日発行の本紙(第610号)で、国立菊池病院の木村武実院長に、認知症の治療について話してもらった。2月に福岡で開かれた第67 回済生会学会で炭谷茂理事長は「特に認知症の問題はきびしい」と基調講演で取り上げた。

研究者はどうとらえているのか...。

大分大学の松原悦朗神経内科教授に聞いた。

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「治らない」ではなく「治したい」の姿勢で

認知症を皆さんがどう思っているか? おそらくテレビで見るイメージの影響が大きいのではないかと思います。

そのイメージの中でどうとらえられているかを推し量ることは難しいのですが、1回なったらちょっと困るなとか、治らないものなんだとかの印象を持たれている方が多いのかもしれません。でも我々は、そうしたネガティブなとらえ方はしたくないので、「治らない認知症」という言葉は使いません。治らない認知症でなくて、「治したい認知症」。病気があるけれども打つ手がないというような姿勢は医師として取るべきではない。そうではなくて「治したい」。戦わずして負けるべきでない、希望が持てる認知症なんだというところを示したいと思っています。と言いますのも、認知症の中には一割にも満たないかもしれませんが、治し得る、治せる認知症がありますので、治せる認知症に該当するかをまず診ます。そのあと、治したい認知症のどのタイプかを診るわけです。今は早く対応することで、本人や家族の生活の質を保ち、あるいは改善が望めるような状況に、もうなってきています。だから昔の、「恍惚の人」であるかのようなイメージとは変わってきています。

でも私たちが皆さんの家を一軒ずつ回って、この人が認知症であるか否かを言えるわけではありません。では誰がもっとも強い味方になるかといえば、ずっと一緒に生活していて本人のことをよく分かっている家族です。だから「あれ? おかしい。なにか違う」と直感を働かせることが大事です。その直感を信じて、何かおかしいと思ったら誰が何と言おうとすぐ病院に連れて行くことです。

自分の出来ないことや困ったことにいろんな理屈をこねて、ごまかし始めたら、その時点で「この人は...」と思えばいいのです。

欧州5か国で新薬の第1相試験を開始

私は薬をつくっている立場でもあり、製薬企業にライセンスアウトした薬がヨーロッパで昨年中旬ごろから第一相の臨床試験に入っています。その新薬は認知症を根本的に治すもので、今の保険診療で使われている薬とはまったく違い、アルツハイマー型認知症の原因となる分子を想定してつくったものです。

今までの研究では、認知症が出て、それを治せるかどうかで効果判定をしていました。でもそれでは、いろいろな複合的な要因があって真の原因となる標的を突き止めることは出来ないんです。本当の標的を見つけるためには、想定したものを早期から叩いて、結果的に認知症の発症を未然に防げることを示さなければなりません。だから予防的な動物実験を行ない、想定した標的分子に間違いないことを証明しました。逆に認知症になったあとも、その回復が可能なことを証明しました。そして製薬企業への売り込みに成功し、薬になって今ヨーロッパ5カ国で治験の第1相に入っているわけです。日本でどうなるかはまだわかりませんが、そんなに先の話ではないと思います。

大学に認知症先端医療推進センターを設置

認知症はどこにかかるかで受け取り方が変わってきます。受診にハードルが高い科があるのも事実で、国の対策の中で、認知症はまず内科が診るのだということになれば国民への理解も進んでくると思います。だから大分大学は、認知症の窓口となる認知症先端医療推進センターを設置することにし、明日(3月27日)学長が会見し、私も説明に加わります。どの科が最初に診てもセンターに情報が集約されるシステムで、このようなシステムのある大学病院は珍しいと思います。(右図)

地域について言えば、たとえば臼杵市という地域では、認知症とは何の関係もない開業医の先生方が献身的に認知症検診をやり、その情報が市医師会に集まり、そこに大分大学が関わる仕組みになっています。いちばん多く診ている先生は循環器内科の藤野先生です。臼杵モデルとして大分全域に広がればと思っています。

認知症のまま安心して暮らせる地域づくりも

もうひとつ、認知症の人をそのまま受け止めて、安心して暮らしてもらおうという国策もあります。がんの緩和ケアのようなもので、治すわけではなく痛みを取ってあげる、そのような地域社会を認知症患者さんのためにつくろうという方向に進んでいます。徘徊している人に地域住民が声をかける模擬訓練なども行なわれています。外国でも、自由に徘徊させて、買い物先でお金を払わなくても、自動引き落としされるような地域もあります。

私は神経内科医で、その疾患の研究医でもありますから、自由にさせておけばいいというスタンスではありませんが、広い選択肢の中の一つとして決して悪いことではありません。それよりも、認知症にならない予防治療を社会に提供できれば良いわけですから、そちらのほうもしっかり手がけたいと思います。

いろんな体験を積み「考える」を極める

大分大学の神経内科は、薬をつくり、予防法をつくり、診断法をつくる、そしてどこにも真似できないことをやる教室です。開かれた教室として、のびのびと忌憚のない意見を述べられ、なおかつ公平性を確保するようにしています。自分の思っていることを客観的に、自由に話せる環境は科学者にとって最低限必要なもので、それがなければ後輩も育ちません。医局長や病棟医長、外来医長がリーダーシップを発揮できるためにも、自由に意見を言えなければ駄目なんです。そこを各長はうまく吸い上げることです。そして物事を決める時も教授のトップダウンだけでは駄目で、開かれた教室運営を心がけています。そのなかで個人個人がどう判断・行動するかは、それぞれの個性だということになりますし、互いに助け合い、お互いが成長していけるような教室であればと思っています。

医療者を目指す若い人に伝えたいのは、学力で勝負できる学生時代と異なり、医師・医学研究者としての社会は、人間性の勝負です。人間を相手にする仕事はどれでも、相手が人間性を見てきます。だから若いうちはいろんな経験をしてほしい。そして医者として大事なのは、「考える」ことです。答えが出るまで考える。それがあるから次の何かが生まれるんです。

私の医者としての夢は「薬をつくって時代をつくる」です。先ほど話した新薬は国立長寿医療研究センターにいた時に開発したもので、アカデミア初の、しかも純日本製です。

大分は温泉がいいですね。出身の群馬県も草津温泉が有名ですか、大分の地に住み着くことにしました。食べ物もおいしく、でも思ったより寒いですね。


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