徳島大学大学院循環器内科学教授 / 徳島大学病院循環器内科科長 佐田 政隆
徳島大学大学院循環器内科学教室は、前身の第一内科と第二内科の循環器グループが再編されて誕生し、佐田教授が初代教授に就任、現在に至っている。
6月12・13日、徳島市のホテルクレメント徳島で開催される「第二回心血管脳卒中学会学術集会」の副会長を務める佐田教授に、学会や教室の今後の展望などについて聞いた。
―第二回心血管脳卒中学会学術集会の副会長を務めます。学会の概要について教えてください。
心臓と脳は離れた位置にあるので、一見無関係だと思うかもしれません。しかし、脳卒中が心臓病の原因になるケースがあります。また現在、脳卒中の原因の約3分の1が、心原性のものだと言われています。
心原性脳卒中とは、心臓に血栓ができ、それが脳に至るもので、高齢化の進行とともに増加しています。
今学会は元々、頸動脈のカテーテル治療の学会でした。そのテーマは残しつつも、循環器医、脳卒中医、心臓血管外科医などが、患者さんに対してどのような治療をするべきかを議論する学会です。たとえば循環器医による不整脈の最新の治療がどのように行なわれるのか、また循環器の患者さんが脳卒中を発症して治療をする際に、脳外科、神経内科ではどういう治療をするのか、お互いの情報を共有することが今学会の意義ですね。
学会ではハンズオンセミナーも企画しています。脳卒中の医師はなかなか心エコーをやる機会がなかったと思うのですが、新しい技術を学び、スキルを高める機会にしてもらえれば幸いです。
学会で会長を務める徳島大学脳神経外科の永廣教授は熊本高校の柔道部の先輩です。高校2年の合宿時にOBとして来てくれたのが最初の出会いです。当時、永廣教授は若手の脳神経外科医で、稽古で嫌というほど投げられたのを記憶しています。
高校卒業後、東京大学医学部に進学し、そこでも柔道部に入部しました。日夜練習に励んで、四段を取得することができました。私は特別体力があるわけでもセンスがあるわけでもありませんが、寝技は研究と練習量が物をいいます。対戦相手が東大だと舐めてかかってくることがありましたが、得意の寝技で国士舘や東洋大などの強豪を打ち負かし続けました。
―循環器内科学教室について教えてください。
高度医療や心筋梗塞などの急性期疾患に対して、最新の治療、最良の治療、全国のどの病院と比較してもひけをとらない治療を提供すべく教室運営を行なっています。新しい機器も積極的に導入し、東京や大阪など大都市でできる治療がここ徳島でもできるように、教室員も積極的に研修に行かせています。
急性期の患者さんを診る場合、一刻でも早い治療を施さなければなりません。治療が成功して回復をすれば、その患者さんは病気になる前と同様に健康に過ごすことができます。逆に治療が遅れてしまえば、本来は助けられたはずの患者さんを救えません。
私が20年以上前に治療した患者さんが、いまだにあいさつに来てくれます。その元気な姿を見ると循環器医になって良かったと思いますね。
―眉山循環器カンファレンス(病診連携の会)を開催しています。
急性期の患者さんを診るには、地域の医師たちとの連携が不可欠です。お互いの顔が見える連携をして、実際に紹介していただく開業医の先生たちの顔はすべてわかります。
カンファレンスでは紹介してくれた患者さんに対して我々がどのような治療をするかを知っていただき、その後のフォローについて情報の共有をします。開業医の先生からも要望を聞き、今後の治療の改善をしています。
私がこちらに赴任して地域の先生から多く出た意見が、連絡してから治療までに時間がかかるということでした。夜間に急性期の患者さんが来て、当大学に連絡を取ると事務から当直医師に連絡を取っている時間が長い、その間も患者さんは苦しんでいる。それを解消するためにホットラインを設置しました。
連絡すると直接ICUにつながり、その場で判断して救急車で搬送する体制が整っています。
昔から県の南にある徳島赤十字病院が県全域の急性期医療を担っていました。もちろん日赤の近隣に住む人はいいのですが、大学の前を通って日赤に搬送される患者さんの姿を見て、「このままではいけない」との思いが強くなりました。
学生や研修医にとって急性期疾患を診ることはとても勉強になります。急性期の患者さんを数多く受け入れられるようになり、教育面でも効果が出始めていますね。
―卒後臨床研修センター長を兼務されています。センターの概要について教えてください。
研修制度が充実していないと優秀な医師が残ってくれないので、初期研修の教育システムを改善していかなければなりません。当大学の特色は日本全国の病院の協力を得ている点です。たとえば沖縄の浦添総合病院に一年間研修に行ってもらい、アメリカ式の研修プログラムを学ぶことも可能です。
研修医にはそれぞれの希望があります。救急を学びたい人、大学で学びたい人とニーズは各人各様です。個々の希望を聞いてプログラムを組む必要があります。専属の教官もそろっているので、うちほど充実した教育制度がある大学病院はないと自負しています。