患者に潜む認知症に気が付くために「おいくつですか」の一言を

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川崎医科大学副学長・神経内科学 砂田 芳秀 教授

砂田芳秀(すなだ・よしひで) ▽1983岡山大学医学部卒、国立病院医療センター内科研修医 1985同センター神経内科レジデント 1987同内科チーフレジデント 1988東京大学医学部脳研神経内科医員 1991米国アイオワ大学医学部ハワード・ヒューズ医学研究所(Kevin P.campbell教授)留学 1994帝京大学医学部神経内科学教室講師 1999川崎医科大学神経内科教授 2009同大学副学長 ▽日本神経学会神経内科専門医・指導医 日本内科学会認定内科医・指導医 日本頭痛学会認定医・専門医 日本認知症学会専門医・指導医

 今や多くの医療従事者に求められる認知症の知識。川崎医科大学副学長で同大学附属病院の認知症疾患医療センター長も務める砂田芳秀・神経内科学教授に、認知症の現状などを聞いた。

―認知症の現状や今後を聞かせてください。

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 日本では65歳以上の高齢者の約4人に1人が認知症またはその予備軍。厚労省の統計が出るたびにその割合が増えています。世界的に見ても、先進国共通の大きな問題として取り組まなければいけないとされています。

 昨年11月には認知症サミット日本後継イベントがあり、それを受けて今年1月には「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が発表されました。これまでのオレンジプランは厚労省単独のものでしたが、新オレンジプランはほかの省庁と共同で出され、国策として高齢者認知症対策を総合的に進めていく点が大きなポイントです。これもあって、認知症への取り組みはより強化されていくと思います。

 まずは「認知症」がどういうものなのかを正しく理解しないといけません。認知症は物忘れから始まりますが、「歳をとれば当然のこと」という認識が強く、なかなか早期の段階で医療に結び付いていかない。一般の方にも、できるだけ正しい知識を持ってもらうことが必要だと思います。

 また、アルツハイマー型認知症は高血圧や糖尿病という生活習慣病が危険因子であることがはっきりとわかっていますから予防が特に大事になってきます。中年のころから生活習慣病にならないよう取り組むことが、高齢になった時の認知症予防につながります。

 国は認知症の方も住み慣れた地域で生活できる在宅中心のモデルを目指しています。一時的に症状が悪化して興奮や徘徊という問題が出てきた時に適切に医療が受けられるように、また認知症以外の病気になられた時に認知症を理由に受け入れてもらえないことがないように、さらには再び在宅に戻れるように、体制を整えていく地域包括ケアが重要です。

 当大学の附属病院でも認知症の患者さんが増えています。認知症疾患医療センターは認知症専門医療の中心です。地域包括ケアの連携の要とならなければと思っています。

―認知症が専門ではない医師にも必要なことは。

 患者さんの認知症に気が付くことが第一歩になります。診察で普通に会話しているだけでは意外と分からず、見逃されているケースがあります。ちょっとでも「あれっ」と思ったら、患者さんに「おいくつでしたかね」と何気なく年齢を聞くのがいいですね。正確な年齢は記憶がきちんとしていないと答えられません。

 それから、認知症の患者さんに対する診察の際は患者さんのペースに合わせることが必要です。医師は、診療時間が限られていますから自分のペースで診療を進めたがり、時間が延びないようにしがちです。でも、認知症の方に対しては相手に合わせる心のゆとりが必要だと思いますね。

―神経内科学の教室について聞かせてください。

 こじんまりとした教室で、和気あいあいと仲良くやっています。それぞれが自分の興味のある分野を勉強できるよう、みんなでサポートしあうのが基本的な姿勢です。

 認知症、電気生理診断、筋ジストロフィーを含めた筋肉の病気、末梢神経の病気、それぞれ専門分野があります。しかし基本的に神経内科医には広く脳や神経、筋肉の病気に対応、診断できる総合的な臨床能力が必要です。それを勉強した上で、専門分野をより高いレベルで勉強していくことになります。

―これからの目標は。

 認知症の患者さんの増加などもあり、神経内科医の需要は増えています。しかし、神経内科を志す若い医師は増えていない。脳の神経は非常に複雑ですし、病気の数や種類も桁外れに多い大変な分野です。ですから本当に興味があって何とか解明していきたいという気持ちがある人しか選択しない分野になっているのが現状です。

 今後はもっともっとその重要性と魅力をアピールして、たくさんの神経内科医を養成し、社会に貢献していきたいと思っています。

 研究ではミトコンドリア脳筋症の一種「MELAS」の患者さんにタウリンを内服してもらう医師主導の臨床治験に取り組み、効果があることが分かりました。その薬事承認を目指しているところです。

 さらに、薬の開発にも取り組んでいます。私の専門の一つである筋ジストロフィーを含めて、筋肉が痩せていく病気がありますが、今は世界のどこにも筋肉を増やす薬がないんです。そこで、痩せた筋肉をもう1度大きくする薬の研究をしています。筋ジストロフィーは遺伝の病気ですから、その薬が根治につながるわけではありませんが、生活の質の維持や向上に必ず役に立ちます。

 加齢によって筋肉量が減る「サルコぺニア」という現象にも効果があると思います。筋肉が弱ってくるとその先にあるのは寝たきりです。骨も弱り骨折もしやすくなります。筋肉をしっかりさせることは骨折予防、寝たきり予防になります。病気の方もお年寄りも、運動で筋肉をつけるのはなかなか難しい。そういう意味でも大切な研究です。


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