「看護を通じて豊かな人生を」
1968 年九州大学医学部卒業 1988 年国立療養所南福岡病院(現・国立病院機構福岡病院)院長 2006 年~ 2009 年国立病院機構本部審議役 2009 年~国立病院機構福岡病院名誉院長 2012 年~福岡女学院看護大学学長福岡大学医学部・福岡歯科大学客員教授、医薬品医療機器総合機構専門委員、環境省独立行政法人評価委員長、同省疫学研究に関する審査検討会座長、厚労省免疫アレルギー疾患等実用化研究事業プログラムディレクター
【学会等】
日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会監事日本小児アレルギー学会名誉会員日本アレルギー学会監事日本アレルギー協会常任理事・九州支部長
約130年の歴史がある福岡女学院を母体とする福岡女学院看護大学。福岡県古賀市に開学してから7年が過ぎようとしている。この3月末に辞職する西間三馨・同大学長に、学生への思いなどを聞いた。
この春、4期目の学生が卒業します。九州大学病院に20人、隣接する福岡東医療センターに20人など、多くのすばらしい病院に就職が決まっています。
昨年までの就職状況をみても就職率は100%。国立病院機構をはじめ、大学病院、総合病院が多いのも特徴です。
―優れた就職実績の理由はなんでしょうか。
実習先がいいということは大事でしょうね。当大学は、福岡県内の国立病院機構の病院すべてに当たる6病院のほか、大学病院や総合病院、施設などから臨地実習への協力をいただいています。
学生たちにとって、実際に働く人たちの後ろ姿を見ることはいい経験になります。知識や技術を身に着けるだけでなく、この場所で自分が働くとしたらどうだろうという視点で病院やスタッフを見ることができます。
一方で病院側も学生を見ていますから、お互いに品定めしているということですね。うちの学生、優しい、素直、明るい、となかなか評判がいいんですよ。
―看護大学を取り巻く環境の今後は。
かつては看護職を養成する場といえば専修学校が多かったですが、現在は大学がどんどん増えてきています。世界的に見ても看護職は四年制大学を出ていますし、この流れはさらに進んでいくでしょう。
医師が"看護婦"を指導し、育てていた時代から、看護職の人たちが自分たちで看護師を養成する時代に変わってきています。
わが校でも、将来の教員を養成したいと取り組んできました。しかし、医療のものすごい進歩に教員が追い付いていくのはたやすいことではありません。
これからは看護大の教員を定期的に臨床に回して医療の進歩を実感してもらうことが必要だと思いますし、また同時に、現場の人に1年でもいいので大学に教員として来てもらい、現場のことを学生に伝授してもらったり、大学でどういう教育がされているか知ってもらったりする、そんな交流が必須になってくると思います。
―学長としての3年間、心がけてきたことは。
職員たちには「すべては学生のために」と伝えてきました。卒業していく看護学生たちには、「すべては患者さんのために」と言っています。
「一番の教科書は患者さん」と昔から言われてきました。吸引するにしても、痛みの表現の仕方にしても、患者さんのほうがずっとうまい。看護師といっても、若いときには分からないこともできないことも多いですから「教えてください」という姿勢が大事です。
教育というのは自分の経験を次世代に伝達すること。医療や看護はけっこう楽しいんですよ。人の人生を共有し、たくさんの人生を経験できる。そして自分が充実していれば、相手によりよいものが出せます。たとえ1回目はうまくいかなくても確実に成長できるんです。私は学生たちに「いい看護師になれ」とは言いません。看護を通して、豊かな人生を過ごしてほしいと願っています。
―4月からの予定は。
昨年、アレルギー疾患対策基本法が成立しました。これからの1年間はそれに関する厚労省の仕事と、新たにできる日本医療研究開発機構(AMED)の審査担当を主にすると思います。
現在、福岡東医療センターのアレルギー科での外来と、福岡大学病院のポリクリ、5年生の臨床講義を兼ねた外来のことですが、そちらも診ていて、それらは継続する予定です。外来で患者さんを診るのが一番好きなんです。
当大学では来年度、シミュレーションセンターや大講堂などが入った3階建ての建物の建設を計画しています。模擬訓練などもできるようになり、教育環境はさらによくなりますよ。
いい教育のためには、学生に心が向いた、いい教員を集めることが大切です。その結果として将来、卒業生が「教員として戻ってこよう」と思ってくれたらうれしいですね。
病院や医院に行った時に、福岡女学院看護大学の卒業生が生き生きと働いている姿に会える、そんな日を楽しみにしています。