広島土砂災害を経て 医療連携、被災者管理の重要性を再認識

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県立広島病院 院長/広島県感染症・疾病管理センター センター長  桑原 正雄

1980 徳島大学卒 同医学部泌尿器科学教室入局 1983 高松赤十字病院泌尿器科 1986 高知高須病院副院長 1994麻植協同病院泌尿器科部長・腎センター長 2003 同診療部長 2007 同副院長 2009 同院長■日本泌尿器学会ボーディングメンバー 日本泌尿器内視鏡学会評議員 日本透析医学会評議員・統計調査委員会地区委員・指導医認定委員会委員・専門医制度委員会委員・専門医試験委員会委員・危機管理委員会委員 日本透析医会徳島県支部長 徳島臓器移植研究会幹事 中国四国臨床臓器移植研究会幹事 徳島透析療法研究会幹事・事務局 四国透析療法研究会幹事

 昨年8月、広島市安佐南区、安佐北区などの住宅が、大規模な土石流に飲み込まれた。県によると死者74人、重軽傷者44人に上る。

 DMATを派遣し、けが人も受け入れた基幹災害拠点病院、県立広島病院の桑原正雄院長に当時の様子を聞いた。

―とても大きな災害になってしまいました。

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 実は、私の自宅も土石流に埋まってしまったんですよ。

 その日は、夜中から豪雨、雷雨が続いていました。朝方には停電になり、それが断続的に続いていたんです。あまりにも長く続くので、「何か異変があったのではないか」と、早朝4時ごろに起きだして、窓から外を見たら、見える景色がいつもと全然違う。慌てて勝手口を開けようとしたら、そこに1mぐらいの高さまで土砂が入り込んでしまっていて、庭には濁流ができているという状況でした。

 外には出られるのですが、道が土砂に埋まってしまっていて、災害拠点病院の院長でありながら、さすがにその日は病院に行かれず「現地で対応するので病院は副院長以下頼む」と指示を出しました。

 外が明るくなってきて、そこで初めて、本当に大変なことになっているということが分かりました。

―当時の病院の対応は。

 当院のDMAT3隊のうち2隊が災害現場と県のDMAT調整本部へ出ました。

 災害拠点病院としては災害モードに入り、一般外来該当科の診療を休止したんです。定期の手術を延期して、手術室を空けました。当院は現場から15キロほどと遠かったので、ドクターヘリを使っての搬送となりました。5人が運ばれ、うち4人が入院しました。

 私の自宅の上、山の手にあった3軒が流されて、私が行って死亡確認をしましたが、全員即死でした。あの時のように大きな災害では、流されたらほとんど即死なんです。ですから、治療の対象になる人とならない人が明確に分かれてしまうんですね。昨夏の土砂災害で、「救命」というところまでDMATが現場でできたかというと、そのニーズは少なかったと思います。

 今回の経験で、災害医療ということを、あらためて考えました。やはり、いかに準備するか、マニュアルもそうですし、どういう状況が考えられるか、どう準備して、どう動くかというリスクアセスメントが必要だと思います。

 災害拠点病院として、DMAT活動だけでなく、被災傷病者の受け入れが必要です。自院が被災した場合には入院患者の治療も継続しなければなりません。そのための準備は欠かせませんが、複数のリーダーを養成するとともに、訓練は遭遇しそうな場面から始めるべきだと思いました。

 また、地域での災害医療の連携や被災直後からの医療の提供、例えば避難した被災者の身体的・精神的管理の重要性を改めて知りました。さらに医療を含めた被害・対応情報も、担当者を置いて最新のものを収集することも重要でした。

―病院の強みを教えてください。

 われわれの病院は創立から140年ほどたっています。地域に根付いて、総合的医療をやっている病院です。また広島大学の最大の関連病院として教育にも力を入れており、初期研修医は8年連続フルマッチ。成育医療、救急、がんなど多くの分野で症例が数多くあること、そして長年の教育実績があるというのが理由ではないでしょうか。バランスのとれた急性期の病院、専門性の高い病院だと思います。

 これから高齢者医療が中心になっていきます。高齢者は多臓器に疾患を抱えていますから、いろいろな科が関係しないとなりません。医師だけでなく他の専門的なスタッフも含めて、院内の良い連携で患者さんに関わっていける病院です。

 例えば、がんを取り上げると、ここは急性期病院でありながら、検査、治療、手術、緩和ケア、診断の初めから終わりまでをかなりの規模で診られる病院です。相談部門も強化しようと、従来の相談に加えて、昨年からカルテを作らない「がん専門医よろず相談所」も始めました。栃木県立がんセンターの名誉所長、児玉哲郎先生に来ていただき、がんと診断された患者さんとそのご家族の悩みを聞いています。

―今後の目標は。

 最近、自治体病院の在り方が問われ、地域医療ビジョンの検討も始まっています。当院は県立病院として県の医療を推進していかなければなりません。他方では、これまで培ってきた医療や教育を県民や職員のためにさらに発展させていきます。

 このために高度急性期病院を目指し、チーム医療、地域連携・支援や人材育成を強化するとともに、麻生飯塚病院のご指導をいただきながら患者視点でのKAIZENに取り組みます。このように「人にやさしい医療」の成果が高く評価されると新規の患者数も増えるでしょうし、経営も安定し、職員や機器、病棟などへの投資も可能になります。県民の健康を守るために、これらの良いスパイラルが続くように、これからの厳しい時期を乗り切っていきたいと思います。

基幹災害拠点病院、DMAT指定病院(広島県指定)
■DMAT 3チーム保有(医師6人、看護師7人、 業務調整員5人、計18 人)、DMAT用資機材、医療 資機材、医療機器、薬剤、通信機器、生活用品、防護服、 DMAT専用車両などを整備
■基幹災害拠点病院として、2014 年3月、給水管破損による貯水の流出を防ぐ緊急遮断弁を設置。2016 年に完了予定。

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