南海トラフ巨大地震に対応するための病院へ

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市立八幡浜総合病院 副院長 越智 元郎

越智 元郎(おち げんろう)市立八幡浜総合病院副院長兼救急部長兼麻酔科科長。1978 鳥取大学卒 同医学部附属病院 1982 松江市立病院 1987 愛媛大学医学部附属病院 2003 県立新居浜病院 2005 市立八幡浜病院■日本麻酔科学会専門医 日本蘇生学会蘇生法指導医 日本救急医学会指導医 日本DMAT 隊員 愛媛県災害医療コーディネーター

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 本館は地上6階、塔屋1階の鉄筋コンクリート造、免震構造。これに地上2階鉄筋コンクリート造耐震構造の別棟が付随する。駐車場は204台駐車可能な既存のものを残すほか、92台分の駐車場を建築物正面に設ける。建築面積約7,900㎡、延べ床面積約23,600㎡(別棟および駐車場を含む)。本館の1・2階には外来などを配置し、病棟部分は3階から5階。総病床数は1割減の256床。別棟には急患センターと除染施設などが配置される。屋上にはヘリポートを備える。6階には非常用ディーゼル発電機を設置し、72 時間の連続稼働が可能なほか、変電設備、高置水槽、熱源設備、圧搾空気なども配置し、津波の発生時も医療機能を継続させる。飲料水は3日分(3.6㎥)のペットボトルを備蓄。衛生設備の洗浄水、医療用水・透析用水は高置水槽にて3日分(74.2㎥)を確保するほか、給水主管に下階切離用の手動バルブを設置。また上水道による供給途絶時に、給水車による供給を可能にするポンプを計画。3日分の容量を持つ非常用排水貯留槽も設けている。またHCU病棟の給気系統には、放射線除去装置を設置し、原子力災害の際の避難所として利用できる設計。

 私は救急診療も担当する麻酔科医で、当院が置かれている状況から、災害医学にも多大な関心を持っています。現在は愛媛県災害医療コーディネーターとして、非災害時における地域の災害準備を推進したり、災害時に地域の情報を集約し愛媛県の担当者と調整にあたる役目を担っています。

 そして、この災害医療コーディネーターの立場で考えると、災害拠点病院である当院の役割が非常に大きいということを、改めて認識させられます。

 災害拠点病院として、当院には考えるべきことがいくつかあります。第一は、南海トラフ巨大地震の問題です。南海・東南海地震は80年から150年の周期でおこっており、前回の南海地震(1946年)がやや小さい規模の地震だったことから、次回は大きめのものが早めに発生する可能性があると言われています。また東日本大震災のような500年あるいは1千年に1回というような、大規模な地震・津波に襲われる可能性もあります。

 愛媛県が2013年に発表した地震被害想定調査によると、南海トラフ巨大地震による当市の最大震度は7、最高津波水位は八幡浜港で9m、市街地の大部分が浸水すると予想されています。当院敷地の海抜は5m余りであり、2階床面まで浸水する可能性があります。人的被害が最も大きいのは「冬・深夜・強風時」に発災した場合で、当院がカバーする八幡浜市と西宇和郡伊方町で約1千人の死亡者が出るほか、負傷者の総数は約1,800人(うち470人は重症者)と想定されています。地域で唯一の救急告示病院である当院には、重症者のほとんどが搬送されると考えられ、その対応は容易ではありません。地震発生から1mの津波が来るまでに約50分、最大津波の到達までには約70分の猶予がありますが、津波到達までにどのくらいの職員が集結できるかも、災害時対応の鍵になると考えられます。

 現在の病院は免震構造ではなく、発電設備が地下にあるなど、災害に強い病院ではありません。しかし、たまたま、病院建て替えの計画を立てている時に東日本大震災が発生し、この災害の教訓を十分に織り込み、南海トラフ巨大地震にも対応できる病院として建設を進めています。完成は2016年の11月を予定しています。

 新病院は、免震構造の災害に強い病院として整備され、1階部分が津波浸水を受けても、病院としての機能を維持できることを目指しています。ですから、普段の外来患者さんにとってはやや不便なことですが、CTなどの高度医療機器は2階に設置し入院設備は3階以上に設けられます。

 また、この地域で考えるべきもう一つの重要な災害は、伊方原子力発電所(隣町である伊方町に所在する、四国唯一の原子力発電所。病院から直線距離11㎞)の原子力災害です。当院は初期被ばく医療機関で、被ばく傷病者の受け入れ、除染、高次被ばく医療機関への転送などを担当します。初期といっても、二次被ばく医療機関のある松山市などへは50㎞以上の距離があり、除染できた患者の入院治療を担当したり、蘇生処置を実施するなど、当院には大きな役割が求められています。

 さらに、原発から30㎞圏内には入院患者が約1,800人おり、社会福祉施設入所者も2,300人に上ります。伊方原発の過酷事故時にはこれらの要配慮者の避難も考えなければなりません。特に、ストレッチャーでなければ運べない、大型バスなどでの避難が困難な患者・施設入居者が合計で約1千人いて、この人たちの搬送についてはまだ具体的な計画ができていない段階です。

 一方、原子力災害時には患者の搬送体制が整うまで、入院患者が当院で待機する可能性もあります。その場合の患者や職員の被ばく防止、食糧・医薬品などの補充などに関しても事前の計画が必要です。また、原子力災害が南海トラフ巨大地震との複合災害として起こることは考えたくないシナリオですが、原発の安全性を十分に高めた上で、さらに「残余リスク」として想定し準備をする必要があります。これらの計画を立案し、県や国に提案することも災害医療コーディネーターとしての重要な役割であると考えています。

 現在は多くの対策がまだ十分であるとは言えません。私は毎月、市の危機管理・原子力対策室の職員と意見交換をさせていただいています。また、4か月に1回、八幡浜・伊方地区災害医療実務者会議を開催しています。そして同じく4か月に1回、八幡浜・大洲圏域災害医療対策会議に参加し、災害医療に関する協議をさせていただいています。八幡浜市と伊方町は2015年2月に、八幡浜医師会との間に災害時の医療救護活動についての協定を結びました。その次のステップとしては、災害時救護所の整備や救護計画を充実させることなどが期待されます。

 今後も行政など関連各所に働きかけ、準備を整えることが私の仕事だと考えています。ハードが整わない部分は人的な練度で補うしかありませんので、訓練もまた重要だと考え、当院を挙げて熱心に取り組んでいます。

 当院では毎年11月に、患者さんを看ている職員や夜勤明けの人を除く全職員が参加して、防災訓練を実施しています。大津波・停電対応、時間外大地震への対応、病院集会時に発生したマスギャザリング対応など、毎回違ったテーマで訓練を行ないます。この訓練に先立って、緊急連絡網運用訓練、トリアージ訓練、搬送訓練、本部や治療ゾーンの立ち上げ、情報伝達など、課題を絞った災害講習会も実施しています。緊急被ばく医療の訓練や災害派遣医療チーム(DMAT)の屋外訓練なども毎年実施しています。訓練を積み重ねることで、様々な問題点が明らかになります。

 200ページを超える災害医療計画(マニュアル)を毎年更新することも、大変ですが欠くことのできない災害対策だと考えています。


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