医療と法律問題|九州合同法律事務所 弁護士 小林 洋二

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

医療事故と法律(19)

 引き続き、「医療事故調査制度の施行に係る検討会」の議論。前回まではどのような事例を報告・調査の対象とするかという問題でしたが、今回は、いったい何を報告・調査するのかという問題です。

 改正された医療法が求めているのは、「その原因を明らかにするために必要な調査」です。この法律の文言からして、調査の対象が、当該医療事故が発生するに至った診療経過のみならず医療事故の原因まで含むことは明らかです。また、いうまでもないことですが、医療事故調査制度は、再発防止を目的とした制度です。それは、この制度が医療法の「医療の安全の確保」の章に位置付けられていることからも明らかです。そのことからするならば、再発防止策まで検討してはじめて医療事故調査として完結するものといえます。

 ところが、一部の委員は、再発防止策を報告書に書くと、当該事故でそのような防止策を講じていなかったことを理由として責任追及される可能性があるとして、再発防止策はこの制度においては検討すべきではないとの考え方を表明しています。

 もちろん、この医療事故調査は責任追及のための調査ではありません。

あくまでも再発防止を目的とするものです。しかし、調査の結果として責任追及が行われる可能性を排除することを最優先に考えていると、本来の目的である再発防止もできなくなってしまいます。このような考え方は、今回の医療法改正の趣旨に反するものと言わざるを得ません。

 なお、調査の結果、今日の医療においては再発防止が不能であるというケースもあり得ると思います。それはそれでひとつの結論であり、その検討過程を報告すればいいはずです。こういうケースがあり得ることは、はじめから再発防止策を検討しない理由にはなりません。

 また、こういった委員たちは、原因分析について記載する場合には、可能性のある原因を複数記載することが重要で、特定の理由に絞り込む必要はないし、どちらの可能性が大きいかを記載する必要もないといいます。これもおそらくは、特定の理由に絞り込んでしまえば、医療行為と死亡との因果関係が明らかになり、責任追及に利用される可能性を考えてのことでしょう。

 医療事故というのは人間の身体に起こるものですから、その機序が全て解明できるとは限りません。むしろ、さまざまな機序の可能性が否定できないまま残ることの方が多いのではないかと思います。そのような場合には、報告書にその旨を記載すればいいでしょう。しかし、医療安全確保、事故再発防止という観点からすれば、いったい何の再発を防止するのかというテーマが明らかになってはじめて再発防止策の検討が可能になります。そのためには、原因の絞り込みは必要ですし、複数の可能性があり得る場合においては、最も可能性が高いものから優先的に再発防止策を検討するといった考え方が必要になってくるはずです。そのような検討を行わず、考えられる可能性をただ列挙せよというのでは、「原因を明らかにするための調査」ではなく、「原因を曖昧にするための調査」になってしまうでしょう。これは決して大袈裟な表現ではなく、一部の委員たちの真意であるように思えてなりません。

 ■九州合同法律事務所=福岡市東区馬出1丁目10-2 メディカルセンタービル九大病院前6階TEL:092-641-2007


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

博多水引×九州医事新報

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【2018年8月の1冊】
イメージ:今月の1冊 - 83.古生物学者、妖怪を掘る 鵺の正体、鬼の真実
古生物学者、妖怪を掘る 鵺の正体、鬼の真実

Twitter


ページ上部へ戻る