DMAT隊員の医師に聞く あの3.11から変わったこと

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臼杵市医師会立 コスモス病院 舛友 一洋 副院長

【略歴】1988 大分医科大卒、同大附属病院内科第1医員 89 九州大生体防御医学研究所附属病院気候内科医員 90 国立中津病院内科勤務 91 九州大生体防御医学研究所附属病院気候内科医員 92 同助手 96 緒方町国保総合病院内科勤務 98 米国サウスカロライナ大留学 2000 臼杵市医師会立コスモス病院内科部長 03 同病院副院長/【資格・認定等】日本内科学会認定内科医、日本循環器学会専門医、日本心臓リハビリテーション学会評議委員・心臓リハビリテーション指導士、日本DMAT 統括DMAT、大分DMAT 隊員など

 災害拠点病院で、DMAT指定医療機関でもあるコスモス病院。東日本大震災から4年となる前に、自らもDMAT隊員として活動する舛友一洋副院長に話を聞いた。

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 当院に私が赴任してきたのは15年ほど前です。当時は貯水槽や発電機といったハード面は整備されていたものの、ソフト面はまだまだでした。

 そこで私が最初にしたことは「自分がDMATになる」ということでした。数日間の研修を経てDMATになり、それからは臼杵市消防本部と一緒に訓練をするなどして、顔の見える関係を築いていきました。

 でも、2011年3月11日の東日本大震災前はそこまでだったんですね。DMATに行って習うのも阪神大震災を受けた震災型への対応。津波に対する考えというのは我々にもありませんでした。 ところがあの大震災が起き、津波の前で何もできないことを目の当たりにしたわけです。そして勉強し、少しずつ、よりリアルな想定の下に考えて話ができるようになってきたと思います。

 3・11以降、地震が起きた際に、どの場所にどの程度の高さの津波が想定されるかといった、以前にはなかった数字が出てきました。その想定に基づき、日本DMATの動きなどから私たちも学んでいます。

 昨年8月、大分・宮崎・鹿児島が津波被害を受けたという想定で開かれた内閣府主催のDMAT訓練では、大分スポーツ公園(大分市)からDMATを派遣する計画だということが分かりました。

 また臼杵以南の病院はいずれも津波の被害で機能しなくなり、海抜30mの高さにあって津波の被害がないと予想される当院にDMATが来ることも分かってきました。そして、それによって私たちがすべきこと、できることとできないことも明確になってきています。

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DMATの制服を着た舛友一洋副院長

 中四国で南海トラフ巨大地震が起きた場合には、臼杵市の中心部がすべて浸水してしまうほどの6㍍の津波が想定されています。例えば朝6時に大地震が発生し、巨大な津波が来たとすると、当院の医師は、市外に住んでいる者も多く、すぐには駆けつけられないかもしれません。第一段階は、当院の周りに住んでいる医師会の医師にまずここに避難してきてもらい、活動してもらえたらと考えています。

 そのうち、当院の医師が病院に到着し、またDMATも来て、第二段階はDMATとの活動になります。DMATの活動は災害発生から72時間以内の急性期です。

 第三段階、災害発生から72時間を超えたあたりで日本医師会の医師団JMATが派遣されてきます。JMATは病院だけでなく救護所や避難所でも医療活動をしますが、JMATが到着するまでの間は、災害を逃れた医師会の先生方にも救護所等で診ていただくことが必要になると予想されます。

 行政である臼杵市も、東日本大震災以降、一生懸命に学び、小学生をどこにどう避難させればいいのかなどの想定を作ってきています。3・11から3年余りが経ち、今、お互いの勉強が一致してきたわけです。

 そこで、当院と医師会、行政の3つが一緒になって、災害時にどう対応するのがあるべき姿なのかということを話し合い始めています。

 当院の院内マニュアルは私がDMATになった後に作成したものがありますが津波襲来を想定していません。三者での話し合いの結果によって、マニュアルを改正していくべきだと考えています。

 また、これまでは院内での訓練を年1回してきました。来年は実際に医師会の先生方に当院に避難してもらうなど、津波を想定した大きな訓練をしたいと思います。

 今は国内どこも3・11の分析が終わり、動き始めたところ。対策は始まったばかりです。

地域医療・介護情報連携システムを災害時も活用 「うすき石仏ねっと」

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 臼杵市医師会では、東日本大震災後の2012年4月、地域医療・介護情報連携システム「うすき石仏ねっと」を立ち上げました。病院、医院、調剤薬局、介護施設などが、病気や薬、医療処置の内容や必要な配慮などの情報を共有できるシステムです。

 今後、臼杵市内のすべての歯科医院が参加してくれますし、市などが実施した検診・健診データの登録も始まります。救急車を呼んだ時に救急隊がその人の情報にアクセスできるようにもする予定です。

 この「うすき石仏ねっと」は災害時の活用も想定して始めました。東日本大震災の被災地で困ったことの中に、薬の情報がないこと、亡くなった方の確認を取る方法がないこと、災害弱者がどこにいるのか分からないことがありました。

 このシステムでは、薬、歯型、災害時要援護者の情報が日ごろから集まってきます。普段から使っているシステムを災害時にも応用できるということです。将来は情報の遠隔地保存も検討しますが、まずは当院を免震化し、サーバーを置くことを考えています。

 カードの保有者は3年間で6000人になりました。開業医の先生方がすごく協力してくださり、順調に増えています。これまで医師会が運営してきましたが、これだけ規模が大きくなってきましたので、協議会を立ち上げ、運用していこうと考えています。このシステムは正直、「なかなかいい方法やろ」と自信を持っているんです。


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