医療法人シーエムエス理事長 杉循環器科内科病院院長
社会福祉法人木犀会理事長 杉 健三
―医療者が地域の先行きを考える時代です。
大きな問題ですよね。
キーワードになるのは日本の人口の減少と、年齢構成の変化でしょう。ここは有明医療圏という行政上の括りです。柳川、みやま、そして大牟田に、現在約22万の人が暮らしています。でも、2035年には約17万人くらいになるだろうと言われています。
大牟田は南に荒尾市があり、柳川市は北に大川市、みやま市も北に筑後市があって、行政の医療圏とは患者さんの動きにズレがあります。そして少子高齢化で人口減少になることを考えると、荒尾も含めて一体として考えなければならない時代がすぐそこに来ていると思います。さらにその先に、福岡県を4つに分けた1つ、筑後一円を1ブロックとして医療機能を考えることになるでしょう。その時には久留米大学を中心にして、いろんな情報の共有、連携のシステム、あるいは人の流れから全体を見渡した医療従事者の配置も含めて1つの圏域としてとらえることになると思います。
ではうちの病院がどうするかといえば、現在は循環器の急性期医療と透析に対応して、この地域においては一定の機能を果たしていると思いますが、これが今後もやれていけるかということには、国の政策からみて少々疑問があります。
―病院運営にどんな将来像を描いていますか。
これからは回復期リハビリ、その中でも心臓・血管のリハに力を入れていこうと思います。そしてもう1つ、病院の規模からいうと今は81床の一般病床で、昨年から柳川で63床の病院をうちのグループとして運営していますので、そこと移転統合するか、機能を分担するか、それを考えているところです。
もう1つの今後の地域医療や介護に関わる問題として、在宅とそれも含んだ地域包括ケアシステムへの対応があります。それについては、うちに社会福祉法人がありますから、そこと有効に組み合わせて、たぶん今の形態とは全然違う医療経営をすることになると思います。
さらに喫緊の問題として、うちの病院は敷地が狭すぎて駐車場がないし、職員の福利厚生面にも犠牲を払ってもらっている状態です。それから、患者さんの療養環境も決して充分とはいえません。それを含んだ上で、急性期病床を地域包括ケア病床および心血管病に特化した回復期病床に転換し、これらに療養型をミックスさせた病院をつくろうということで、近い将来、当院の移転統合を考えています。
―最期は家で、という願いはかないますか。
国が経済原則で医療費を減らすために、入院医療から在宅に舵を切ろうとしていますが、実際には、在宅というのは、建物(自宅)の構造上、そしてケアする側の人力の問題で難しいんですよ。構造の面は補助金や財政配分で対応が可能ですが、人手については、家族が看ていると、心の問題などで健全な家族が破綻してしまう。だから難しいと多くの医者は言っていますが、一方でサ高住などにはお金がいるわけです。そこにも人手が足りず、受け皿として充分ではありません。
家族にすれば療養病床や介護病床が負担が少ないので、当然そちらも動きがありますが、国の施策によっては受け皿としての医療機関や介護系の施設が耐えきれなくなります。そうすると難民が出て来かねません。
だからそこをどう埋めていくかを医療関係者と介護や福祉に関わっている方とが本気で考えなければならないでしょうね。
―久留米大学の若い医師が多いですね。
幸いなことに教授クラスが非常勤で5人来ていますので、彼らが現場を指導してくれます。うちの自慢といえばそれなんですよ。
久留米大学は医科大学から始まって歴史も古く、いい意味で団結力があります。ここがほかの地域にはない点で、これからは筑後地区を久留米大学がまとめて、きちんとした連携のシステムを作りあげなければならないだろうと思っています。簡単にはいかないでしょうが、そう考えている医師は多いですよ。
当院を建てたのは27年前です。出身は筑紫野市で、親も兄弟も親戚も医者のため、何も考えずに医者になりました。当然友達も医者ばかりですから医者の社会しか知らないんですよ。だから協調性はゼロです(笑)。医師会活動は10年前からで、大牟田を暮らしやすくしたいと思ってのことです。
地域に貢献するために自分に何ができるかと自分に問うたら、やはり医療しかないわけです。
若い人は、自分が何をやりたいか、どんな人生を送りたいかを早く気づくことですね。5年後に何をしているか、10年後はどうか。思った通りにはなりませんが、何も考えずに流されてしまうより着実に前に進んでいますから、そこで主体的に判断や選択ができます。
人生を自分で選択できる立場にいることが大切です。
理念
医学的に正しい医療/心あたたまる医療/地域社会への貢献
社会福祉法人理念
人間の尊厳を守り、誠実に向かい合います/いつも心の声を聞き、優しく包み込む気持ちで接して行きます/一生の心に残る日々をおくってくださることに努めます
医療法人シーエムエス
杉循環器科内科病院
(大牟田市大字田隈950-1)
柳川すぎ病院
(柳川市三橋町高畑263-1)
社会福祉法人木犀会
ケアハウスやぶつばき
(福岡県大牟田市青葉町130 番地2)
小規模多機能ホームこどう
(福岡県大牟田市青葉町130 番地4)
特別養護老人ホームすぎの木
(福岡県大牟田市大字甘木44-1)