久留米大学病院 病院長 坂本照夫
新年明けましておめでとうございます。
平成27年は久留米大学病院にとりまして、病院前救急診療のさらなる飛躍の年となります。
わが国の病院前救急医療は平成13年4月に厚生労働省のドクターヘリ導入促進事業により、ドクターヘリの運航が川崎医科大学病院で開始され今年で14年となり、今では全国の道府県に43機のヘリコプターが整備されて年間約2万件の病院前救急医療が行われています。このドクターヘリ事業の初期には各自治体の費用負担が大きな壁となり、なかなか導入が進みませんでした。ところが、平成19年に「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」の法律が制定されてからは各自治体のドクターヘリ導入が一気に進み昨年までに36道府県に43機のヘリコプターが整備され、空からの病院前救急医療がほぼ全国で日常茶飯事的に展開されるようになってきました。
一方、陸における病院前救急診療(ドクターカーシステム)は大阪市、船橋市、札幌市などの限られた都市で行われていましたが、このドクターヘリシステムが全国的に広がってくると同時にドクターカーによる病院前救急診療も次第に盛んになり、青森県ではサンダーバード作戦という名の下にドクターヘリとドクターカーの両者による病院前救急医療が開始されて話題を呼んでいます。
このようななかで、福岡県南部の特定機能病院としての久留米大学病院にも久留米市の要請により、久留米広域消防本部が運用する派遣型救急ワークステーションを活用した派遣型ドクターカーシステムを取り入れることになりました。
久留米大学病院では2002年2月より厚生労働省のドクターヘリ導入促進事業により、全国で5番目に福岡県ドクターヘリの運行が開始されました。それから13年となる本年はさらに上記のドクターカーシステムを取り入れて本格的な病院前救急診療を開始することになりました。これは久留米市が事業主となり、久留米広域消防本部と久留米大学病院との協働事業としてこの1月15日より試験運行が開始されます。このドクターカーはドクターヘリの補完としての久留米市の市街地を中心とした救急医療を行うシステムで、久留米広域消防本部の救急車を救命救急センター前に駐車させ、ワークステーションとして研修を行っている救急隊員と一緒に救急専門医と看護師がその救急車に同乗して救急現場へ出動するシステムです。このドクターカーシステムにより久留米市民への救急医療サービスの向上に繋がりさらに住みやすい久留米市となっていくものと確信しています。