医療と法律問題|九州合同法律事務所 弁護士 小林 洋二

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医療事故と法律18

前月号に引き続き、「医療事故調査制度の施行に係る検討会」の議論です。報告・調査の対象となる範囲を狭いものに限定しようとする一部の委員たちは、このようなことを主張しています。

 検討会の結論として「行った医療又は管理に起因して患者が死亡した事例」となっていたのに、改正医療法が「...提供した医療に起因し」という文言になったのは、「管理に起因する死亡」は除外されたということを意味する。医療事故情報収集等事業に関する厚労省の平成十六年の通知は、報告すべきケースを、
①医療行為にかかる事例、
②医薬品・医療用具の取扱いにかかる事例、
③管理上の問題にかかる事例、
④犯罪、その他に分類しており、今回の改正医療法で報告・調査の対象となるのは、そのうちの①に限定されたのだ。

 しかし、法律上同じ文言が使われていても、その言葉の意味内容は、立法内容等によって合理的に解釈されなければなりません。同じ文言だから同じ意味だと機械的に言えるようなものではないのです。ましてや、この委員たちが持ち出しているのは、法律ではなく「通知」です。しかも、「医療行為」や「管理」を定義するような性質のものでもありません。例えばこの通知が「管理」の問題として挙げているものには、「熟練度の低い者が適切な指導なく行った医療行為による事故」という類型があります。これはおそらく平成十四年に起こった慈恵医大青戸病院事件のような場合をおいたものでしょう。腹腔鏡下前立腺手術の執刀経験のない医師ばかりでそれをやってしまったというこの事案において、医療機関の管理体制の問題を指摘されるべきことは当然であり、通知がこれを「管理」の例として挙げていることは理解できます。しかし、それと同時に、この事案が、腹腔鏡下前立腺手術という医療に起因する死亡に該当することもまた明らかではないでしょうか。

 つまり、この通知は、単に報告対象となる事例を例示するための便宜として①〜④を挙げているだけであり、その四つを区別するなどという目的は全く含んでいないのです。このような通知にしたがって改正医療法の文言を解釈し、「管理に起因する死亡は報告・調査の対象外」などと主張するのは、法律解釈として極めて不合理というほかありません。

 この検討会に先だって厚労科学研究として行われていた「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究」では、多くの委員が「医療と管理を二分することは難しい」、「医療に伴う管理による事故は医療事故に含まれる」というごく常識的な意見を述べています。改正医療法が「医療又は管理」ではなく「医療」という文言になっているのは、医療行為とは無関係な、いわば事務的な管理による事故を対象から外す趣旨と考えるべきでしょう。手術、処置、検査、投薬、医療機器の使用、医療上の管理などに起因する又は起因すると疑われる死亡で予期しなかったものは、当然、「...提供した医療に起因し」という範疇に含まれ、報告・調査の対象になるというのが合理的な法解釈です。

 こんな分かりきったことを議論するのに時間を費やすのではなく、もっと議論すべき重要なことがあるのではないかとつくづく思います。

 ■九州合同法律事務所=福岡市東区馬出1丁目10―2メディカルセンタービル九大病院前6階TEL:092-641-2007


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