宮部治恵(NPO法人キャンサーサポート代表)
昨年11月1、2日と2日間大分で行われた「日本死の臨床研究会」に初めて参加しました。
まずは大会会長の山岡憲夫先生のお話から。
女性の患者さんを驚かせようと「結婚式を挙げる」計画を進めるが、肝心の相手の男性が「これから死んでしまうから結婚式をするのは嫌です」と拒否。しかしそこで、「死んでしまうから結婚式をするのではなく、これから2人で一緒に生きていって欲しいから」という想いを告げたところ、この計画を承諾。初っ端から号泣でした。
本当に考え方を少し変えるだけで、素敵な出来事に変わっていくのだと実感し、「死」と向き合うことはすごく難しいけどとっても大切な事なんだと改めて感じました。
シスターである髙木慶子先生のお話は特に心に残っています。
優しい口調でゆっくりと語りかける先生の言葉が、私には「死」の恐ろしさを全く感じさせず「今を生きる」ために、自分の最後は「ありがとうございました」と言える生き方をしなさい! と語ってくださり、私もシスターになりたい! と思うほどとっても素敵な方でした。
一番楽しみにしていたのは友人出演のフォーラム。壇上に3人のサバイバーが現れて体験談を熱弁。3人とも友達ではあるものの改めて「がんの体験」を聴き号泣。そして3人の底力にまた号泣。こんな素晴らしいサバイバーを友にもって私は幸せだと感激し、私ももっともっと必死に生きよう! って反省しました。
夜の懇親会ではさまざまな医療者の方々とサバイバーとのふれあいで、これまた最高の時間を過ごした。正直この研究会に来られている医療者の方は「真の医療者」だと思いました。医療者は治療するだけでなく、こうした治療後のケアもとっても大切だと改めて感じた。ここまで出来てこそ医療者なのだと思います。
2日目は障害と共に生きる方々の体験談を聴きました。とっても印象に残った言葉は「私は、私を人として扱ってくれる人といる時だけ人になれた」。障害者であろうと、サバイバーであろうと、そして健常者であろうと、みんな想いは一緒なんだと思いました。
そしてアルフォンス・デーケン先生のユーモアたっぷりのお話。「真の強さとは人を許すこと」。何となくだけど意味がわかりました。なかなか許すことが出来ないからイライラしちゃうんだろうな。
研究会最後は「いのちのバトンタッチ」の話。養護教諭であった山田泉先生( 通称、山ちゃん)が乳がんになり、自分の命に期限があると知った時、子供たちに「いのちの授業」を伝えていった。残念ながら山ちゃん先生は49歳の若さで亡くなってしまいましたが、その山ちゃん先生のある日の授業を受けた女の子が、山田先生からしっかり「いのちのバトンタッチ」を受けて成長し、小児科の看護師を目指しているというのです。実は彼女は小学校1年生の時に白血病を経験していました。 彼女のこれからがとても楽しみだし、こうしたバトンタッチがあちらこちらの見えない所で行われているんだろうな〜と思います。
もしも自分が、または大切な人が死んでしまったらどうなるのかは誰もわからない。天国? 地獄? 本当にあるのかな。わからんけん怖いんだろうな。
この奥深い研究会、今年初めて参加しましたが、本当に意義のある素敵な会でした。来年は岐阜で開催されるそうで、必ず行こうと思っています。
死としっかり向き合えた時に人間は輝ける。この言葉を胸にこれからもがんばります! そして、こうした研究会にもっともっと医療者が来てほしいなぁとも思いました。