小さくても"ならでは"の仕事を

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産業医科大学第2内科学 教授 尾辻 豊

【経歴】鹿児島県鹿児島市出身。1981 年九州大医学部卒。鹿児島大医学部附属病院、鹿児島市立病院を経て1995~97 年、米国ハーバード大学マサチューセッツ総合病院留学。鹿児島大学大学院循環器・呼吸器・代謝内科学助教授の後、2006年8月から現職。

1978年、北九州市に開学した産業医科大学。当初から続く第2内科学は、今、第3代の尾辻豊教授に引き継がれている。同科の特徴や魅力は...。尾辻教授を訪ねた。

―特徴を教えてください。

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産業医科大に赴任する際に贈られた桜島の絵の前で。「鹿児島を忘れるなということでしょうね」と微笑んだ。

 教室としては産業医科大の第2内科学、病院では循環器内科と腎臓内科です。ですから北九州の地で循環器内科部門、腎臓内科部門の教育、臨床、研究を担うということになります。

 大学病院ですので、これからの医療を担う人材を育てることが最も大事なことです。卒前教育にも力を入れていて、私自身も可能な限り学生講義をしています。循環器内科関連講義の2分の1から3分の1ぐらいは私がやっています。韓国のWonkwang大学とKosin大学とは臨床実習の交換医学教育もやっています。

 次に大事にしているのが臨床です。内科は臨床の科ですから患者さんを診ることが中心になるべきだと思います。

 循環器内科には心臓カテーテル、心臓エコー、不整脈の3グループがあります。カテグループでいうと冠動脈のインターベンションの件数は毎年増えていますし、冠動脈以外の腎動脈や下肢のインターベンションも増加しています。高齢化に伴い全国で患者さん自体が増えていること、そして産業医大の医師の質量が充実してきて来院する患者さんが増えていること、その両方が理由だと思います。

 エコーグループは、技師と医師とが一緒にエコー検査をするのが特徴です。病院によっては技師が検査をしてレポートを書くところもありますが、うちでは技師が記録・作成したレポートを医師がチェックして最終的なレポートにしています。これは技師の教育になり検査の質向上につながっています。また、運動負荷エコーや3次元エコーなど新しいエコーもやっています。

 不整脈グループは、日本でも有名なグループの一つで、ペースメーカーや心臓除細動器の植え込み件数は九州沖縄地区の大学病院で1、2を争います。ペースメーカーの電池交換は日帰りの外来手術が可能です。不整脈のアブレーション治療も盛んで成績も良好です。

 心臓血管外科とは違う科ではありますが、同じ患者さんの同じ病気を診る一心共同体です。当院の心臓血管外科は非常に慎重で丁寧な手術をしてくれていますので、ハートチームとしてうまく機能していると思います。

 腎臓内科の方を見ると、透析導入の数は九州・沖縄地区の大学病院で1番か2番です。また腎生検の数が多く、病理の医者に任せるのではなくて腎臓内科医も見ているところが他と違います。自分たちの患者さんですからその腎臓の生検を最も見たいと思っているのは腎臓内科医です。病理の医者が見ることはもちろん大事ですが、腎臓を見続けている内科医が見るメリットもあります。病理の診断は100%確実とは限りません。私たちは患者さんのその後を診ていきますから、病理の診断が当たっていたかを後々考えることができ、そのことによって病理を見る目がまた磨かれていくわけです。

 血液透析のために左手の動脈と静脈をつなぐシャント手術や、腹膜透析用のカテーテルを腹部に入れる手術も当科でします。両方とも外科がやる病院もありますが、当院では腎臓内科医の仕事です。

 研究について言うと内科の研究は臨床研究が基本だと思っています。論文は年20本ほど、学位も年に数人が取っています。世界に通用するまったく新しい病態、概念を見つけたときにはやっぱり心が震えますね。2番煎じ3番煎じは極力避けて、小さくても産業医科大学ならではの仕事をしたいと考えています。

 研究の中心になる大学院生については、臨床研究の大学院生と基礎医学教室に行く大学院生と2種類いるのが第2内科の特徴的なところです。原則本人の希望で、今は10人のうち8人が臨床研究、2人が基礎研究をしています。若いうちは基礎研究をし、その後で臨床に戻ってきてほしいと思うのですが、最近の若い人は基礎をやりたがらないですね。

―若い人に基礎研究を勧める理由は。

 臨床医学は対象になる患者さんが多様ですから結果があいまいになることが多く、その中で何かを見つけるのは大変なことです。しかも患者さんが相手ですからできることは限られています。それに比べて基礎は対象(動物モデル)がほぼ均一です。そして心臓の筋肉の特殊染色も遺伝子治療も投薬もなんでもできます。基礎のほうが厳密なことができ、白黒はっきりした研究をやりやすいんです。

 そして基礎研究で海外留学のチャンスが広がります。日本の医者は海外での医師免許がありませんが、基礎は免許がいりませんから海外で給料をもらって勉強できます。海外に出るのはいい経験になります。世界最高峰の人の考え方や時間の使い方に触れられますし、英語ができるようになり、海外にいるいろんな人と交流できるようになります。異文化に触れられたこともよかったですね。

―若者の研究離れが盛んに言われています。

 研究は人類が発見していないことを発見すること。知的冒険で、すごくおもしろいんです。でも若い人を見ていると、別に冒険しなくても患者さんの診療ができて給料をもらえればそれでいいという感じを受けます。みんな仲良くやっていていいことなんですが、反面、野望がない。私の経験を話したこともありますが、思うようには響かなかったですね。自信がないというのもあると思います。自分はノーベル賞なんか取れないと思っているんです。全員がノーベル賞を目指すとなればそれはそれで問題ですが、アグレッシブに上を狙う人もいてほしいですよね。

―アドバイスは。

 これから大事になるところ、これからも大事であるところ、すなわち治療できる患者さんがいるところに行ってほしいと思います。時代とともに病気は変わり、今メジャーな病気であっても病気自体が消滅する場合もあります。撲滅されつつある病気もあります。今後も大事な分野に進んでほしいと思います。 そして自分を過小評価せずに何にでもチャレンジしてほしいと思います。

―最後に、先生の今後の目標をお願いします。

 第2内科が発展していくためには診療の質と量を上げることが必要です。そのためには外科との協力が大切ですね。うちでまだできていない診療内容も取り入れて地域の中心的な科、病院にしたいと考えています。


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