九州一円、アジアからも患者や留学生が訪れる患者に優しい消化器病センターを目指して

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福岡大学医学部消化器内科学講座 主任教授 向坂 彰太郎

向坂彰太郎(さきさか・しょうたろう)氏【経歴】1978 年久留米大卒、1982 年同大大学院医学研究科博士課程修了。1985 ~ 87 年米エール大内科留学。久留米大医学部第二内科講師、助教授を経て2000 年から福岡大医学部第三内科( 現:消化器内科) 主任教授、2007 ~ 2011 年福岡大学病院副院長、2015 年1月から日本消化器病学会九州支部長。【学会会員・役員】日本消化器病学会財団評議員/米国消化器病学会 (AGA) フェロー /日本肝臓学会評議員・指導医/米国肝臓学会 (AASLD) 会員/ヨーロッパ肝臓学会 (EASL) 会員/日本移植学会評議員・認定医/日本内科学会大学評議員/日本臨床分子形態学会理事長/日本移植学会移植認定医/日本肝移植研究会常任世話人/日本肝癌研究会幹事/日本急性肝不全研究会世話人/脳死肝移植評価適応委員会委員/肝臓移植の基準等に関する作業班委員

 日進月歩の医療界で、近年特に急速に変化していると言われる消化器内科の領域。今回は福岡大学医学部消化器内科学 の向坂彰太郎教授を訪ね、取り組みや思いを聞いた。

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 福岡大学医学部消化器内科は、2000年( ミレニアム)4月に、福岡大学内科の再編に伴い、肝胆膵と消化管疾患を担当する内科( 当初は第三内科と呼ばれた) として開講され、私はその初代の教授として赴任しました。

 最初の5年間は福岡市における消化器病の中核病院となるよう、まず、臨床力向上に専念することを目標としました。これは、人種のるつぼである米国が、国旗の下では国民が一丸となることを見てきた経験を踏まえ、統一した目標を掲げることが、久留米大、福大、九大など色々な出身の医師が集まっている当科を、臨床的に一流の教室( 医局) へと導くと考えたためでした。

 そのため、肝疾患では、ウイルス肝炎のインターフェロン治療や抗ウイルス療法、肝がんに対するラジオ波焼灼術( 現在すでに約1900例の患者に本治療を行い、患者数ならびに治療成績は全国で5本の指に入る)、肝動脈塞栓化学療法、食道・胃静脈瘤に対する結紮(さつ)術ならびに硬化療法、原発性胆汁性肝硬変に対する治療などを多数例行なってきました。

 一方、消化管疾患では、食道がん、胃がん、大腸がんの診断と内視鏡治療、特に内視鏡的粘膜切除術(EMR)および内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を精力的に行なってきました。今後、早期がんに対するこれらの治療は、その術後のQOLの高さから外科手術に取って代わるものと考えられます。また炎症性腸疾患であるクローン病や潰瘍性大腸炎の多数の症例に対しての免疫療法は、多くの患者に驚異的な病気の改善をもたらしています。

 肝疾患に対する治療として特筆すべきものとして、昨年9月より始まったC型ウイルス肝炎に対するインターフェロンを使用しない内服治療があります。この治療では、まだ治療対象に制限はあるものの、インターフェロンやリバビリンなどの副作用が見られることが多い薬剤を使用しないため、患者さんにとっては夢の治療と言えます。恐らく85〜90%の患者さんで永久にC型ウイルスが体内から消失するものと期待されています。

 当科のモットーは「患者に優しく、科学に厳しく」です。

 患者さんに対するこの思いは、私が江戸時代から続く医師の家に生まれ、幼いころから父(内科医)と母(眼科医)が開業していた病院で、患者さんたちに接する両親の姿を見て育ったことの影響が大きいと思います。

 このため患者さんに対する治療では、「自分がもし目の前の患者さん本人あるいはその家族であった時、その治療が最も良いかどうかの基準で考えなさい」と若い医者に言っています。

 一方の「科学に厳しく」は、私が30代前半に2年間米国のエール大学内科に留学したときの経験が大きいと思います。

 その研究室では、それは厳しい研究検討会が行なわれました。月一回はノーベル賞受賞者ジョージ・パラーデ教授(細胞生物学者)も参加していました。そこでは、研究で自分が提唱した仮説が、いかに客観的に証明できているかが重要であり、「こう思います」と言おうものなら、どの結果からそのことが言えるかについて、矢継ぎ早に多数の質問に合いました。

 またそこには、世界中からトップレベルの研究者が集まり、知識においては到底彼らと戦えないと思いました。そこで、この優秀な研究者の中で生き残るためには発想が大事であると考えました。

 その後、私の研究のモットーになったのが「人の行なった研究はしない」でした。これは、人と同じことをしても、それは初めにみつけた人のオリジナルであり、結果を発表する際、惨めな気持ちになると考えるようになったためです。人の後塵を拝するぐらいなら、大変であっても、まだ誰もしたことのない研究をする方が、結果が出たときの喜びあるいは他の研究者に対するインパクトは大きいと思います。

ら数学が非常に好きでしたから、まず研究で証明したいことを先に考え、そして、そのために必須の実験あるいは解析法は何であるかを考えてから研究を始めるという手法をとってきました。

 このアプローチのためか、私の研究あるいは直接指導した大学院生などの研究が、インパクトファクターが10点以上の雑誌に25編の論文として掲載され、そのうち3編は「Gastroenterology」と「Hepatology」という、いずれも消化器病学と肝臓病学では世界で最もレベルの高い雑誌(TopJournal)の表紙を3回飾っています。

―ご自身のことを聞かせてください。

 私の専門は消化器病、特に肝臓病学です。特に難治性肝疾患の診断および治療に携わってきました。また、日本肝移植研究会の常任世話人もしており、内科では最も肝移植医療に関係しているひとりかもしれませんね。肝硬変や肝がんになった患者さんの肝移植に関わりました。

 移植施設に患者さんを紹介した後も責任がありますから、北海道大や京都大での移植の手術では手術開始から終了するまで立ち会いました。脳死肝移植のため、オーストラリアに患者さんを紹介したときは、移植までは2か月半も待たされましたので、オーストラリアで手術を行う教授に直接会いに行きました。「肝がんが転移するから早く手術を」とお願いしたところ、2週間後に手術が行われ、移植は成功でした。移植後すでに十数年たちますが、その患者さんは今も肝がんの再発もなく元気にジョギングされていますよ。

 また、私の患者さんで、福大で生体肝移植を受けた後、出産された方もいます。患者さんと一緒に感動しましたよ。

 自分ができることは限られていますので、少なくとも出会った患者さんには最善の治療をしたいと思っています。だから多くの患者を診るというより、他の医療機関では診断がつかない、あるいは治療が困難な患者さんを診たいと考えています。

―日本消化器病学会九州支部の支部長にも就任されました。

 今年1月から日本消化器病学会九州支部の支部長を務めることになりました。九州支部は会員同士が非常に仲良く、そして、常に全国のお手本となるようなプロジェクトを推進してきた歴史があります。私もその伝統をさらに発展させていきたいと思います。

―医学生、若い医師にアドバイスを。

 今後の日本の医学会を背負う人たちは、先達の後を追うのではなく、世界に飛び出していって、日本の医学を広めていってほしいと思います。どうせ1回の人生ですからチャレンジしてほしいですね。

 当科では、若い医者には、率先して新しいことに挑戦するように言っています。「迷ったら1回やってみたらどうだ、だめだったら戻ればいい」と話しています。今までこうだったからとか先輩がどうとか言わずに、自分がベストのことをやっているかを常に自分自身で判断することが大事だと思います。


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