地域から信頼される病院として

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日本郵政株式会社 広島逓信病院 院長  井上 純一

1971 熊本大学卒 同大医学部附属病院研修医 1976 岡山大学医学部第一内科研究生 1980 医学博士 広島市民病院内科副部長 1987 広島大学医学部第一内科非常勤講師兼務 1996 広島市民病院内科主任部長 2003 広島逓信病院副院長2006 同院長

 広島平和記念公園には、3本の被ばくしたアオギリが移植されている。1945年当時は広島逓信局の中庭に植えられていたもので、枯れ木同然の姿であったにもかかわらず春に芽吹いた、広島再生の象徴的樹木だ。広島逓信局内の広島逓信病院では、当時医師や職員たちが負傷しているにもかかわらず、被災者を収容し奮戦したと伝わっている。

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被ばく当時に使っていた病院1階の、復元された無菌手術室で撮影。タイルは当時のもの。奥は医療器具の消毒をした部屋。現在これらは広島逓信病院旧外来棟被爆資料室と呼ばれており、多くの見学者が訪れる。

―逓信省が郵政省と電気通信省に分かれたのはずいぶん前ですが、長く名前を守っていますね。

 分かれたのは1949年のことです。「逓信」という字を書くことはなかなかありませんよね。難しいので全国の院名を変更する案も本社にはあったようですが、結局はこの名が残っています。隣に総務省の中国総合通信局がありますが、これも逓信省時代の名残です。

 日本郵政グループには持ち株会社の日本郵政㈱の下3つの事業会社(※1)がありますが、当院はかんぽの宿などと同じく、日本郵政の直営です。郵便局の傘下と認識している人もいますが、正確には誤りです。また企業立病院ですが、日本郵政の社員でも治療費が安くなったりはしないので、気の毒に感じています。職域病院として開設されましたが、1980年から一般開放しており、今では大部分が一般の患者さんです。歴史的なこともあり、NTT職員(※2)の患者さんも多いですよ。

 本社病院管理部からは年に数回指導に来られますが、企業立病院だということをあまり意識しません。事務職員は病院専門の人で回すべきなんでしょうが、逓信病院は全国に14か所しかなく、転勤先が遠いので、郵便など他の事業に従事していた人が来ます。病院は特殊な用語も多いので、最初は苦労されるようです。

 私も郵便に関する資料に目を通す機会はありますが、専門用語はどの業界も難解ですね。本人は苦労しますが、他業務を知る事務員は様々な手続きに通じており、院内では重宝されています。私は郵政事業庁から日本郵政公社に移管された2003年に副院長として赴任しました。また日本郵政が発足した2007年は院長でした。数年のうちに当院もめまぐるしく変わりましたから、珍しい経験だったと思います。大変でしたが、院内外の多くの人の協力で医療の質を落とさずにすみました。

―「ヒロシマ日記」(※3)の病院として有名ですが、現在力を入れていることは。

 私は蜂谷博士から6代あとの院長で、医局の後輩です。広島赤十字病院とともに、被ばく者治療の中心になった病院で、当時収容された重症者は250人に達したと伝わっています。

 そういう歴史を守り伝えていくことは大切なことです。しかし院長としてもっと大事なことは、今の患者さんのことです。

 当院は院内連携が良好で、他科のベットに患者さんを入れることもあります。他科の患者が来ても、対応できる看護師がそろっていることはありがたいですね。看護師自体はもっと増員したいので、募集には力を入れようと考えています。ほかに、高齢化の進展による整形外科領域の診療を強化していきたいと考えています。

 また分娩を中心とした産科を今後も維持したいと考えています。助産師からの提案で、今年から出産直後の育児不安の解消や休養を目的に、産後母子ショートステイサービスを始めました。他院で出産したお母さんも受け入れています。

 私を含めて7人の内科医がいますが、うち6人が日本消化器病学会の専門医なのも特長です。私自身は指導医で、その他の専門医や認定医も積極的に推奨する方針です。また全員、内視鏡に習熟しています。

―出身地は。

 私は久留米市の生まれで、高校の同級生は20人くらい久留米大学医学部に進学しています。私は熊本大学を卒業し、長島秀夫教授と一緒に熊本大学の第3内科から、岡山大学第1内科に移籍しました。岡山に4年住んだのち、医局人事で広島に赴任しましたが、九州に近くなったので私は喜んで縁もゆかりもなかった土地で働き始めたわけです。蜂谷博士だけでなく、当院の院長は私が知るかぎり、岡山大学第1内科の先輩ばかりです。

 また市内には同門の先生方も多く、連携は取りやすい環境です。以前は広島市民病院で内科主任部長をしており、今も当院の設備では手におえない患者さんを頼む関係が続いています。退院された患者さんを受けることも数多くあります。

 同門のつながりは心強いですが、しかし今は近隣の先生方と、出身大学や医局を超えて連携する時代です。ここは昭和40 年代から地域連携を重視しており、月に1回開催する開業の先生たちとの合同カンファレンスは、もう383回(12月20日現在)行なっています。

 当院の機能は、中軽度急性期・亜急性期・回復期の診療であり、110床の病院なので、経営を考える上でも病床稼働率と回転率は重要で、そのためには近隣との協力関係はこれからも強めていくべきだと考えています。連携強化のために来年からは電子カルテを導入し、HMネット(ひろしま医療情報ネットワーク)に加入する予定もあります。

(※1)日本郵便㈱、㈱ゆうちょ銀行、㈱かんぽ生命保険の3社。(※2)前身の電電公社は、逓信省が運営管理をした時期がある。(※3)1945年当時広島逓信病院院長だった蜂谷道彦博士の著作。原子爆弾の威力や被災地の惨状を伝えただけではなく、当時の医療を伝える史料としても評価され、18か国語に翻訳され出版されている。


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