第26回日本脳循環代謝学会総会

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国際化を強く意識

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 11月21日と22日の2日間、岡山市北区の岡山コンベンションセンターで第26回日本脳循環代謝学会総会が開催された。会長は岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学の阿部康二教授(写真左)。運営事務局は日本コンベンションサービス(株)関西支社に置かれた。同支社によると、参加人数は500人ほど。

 昭和42年に第1回総会を開催した日本脳循環代謝研究会は、平成元年に学会へと組織変更した。今回は研究会時代から数えて57回目の開催となる。シンポジウムに84題、ポスターセッションに165題が採択され、総計264題という過去最大の演題数になった。

 阿部会長は開会式で「岡山で日本脳循環代謝学会総会が開催されるのは初めてだと思っていたが、研究会の時代に岡山大学脳神経外科の初代教授である西本詮先生と、岡山大学麻酔蘇生科初代教授の小坂二度見先生が開催されていた。岡山では49年ぶり3回目の開催ということになる。今回は特に、学会の国際化と若手医師を勇気づけることに気を配った。若い人の活性化は大事なことで、若い力で学会が今後発展していくことを願う」と述べた。

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多彩なシンポジウムも今回の狙いだった。

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岡山大学脳神経内科学から出口健太郎講師(上)と山下徹講師も登壇した。

 総会のウェブサイトや、抄録集での会長挨拶が日英中の三か国語で書かれたことも特徴の一つ。すべてのシンポジウムの口演で用いる言語は、日英のどちらでも構わないなど、国際化を強く意識した総会だった。今回の総会の海外招待者は、台湾から3人、韓国から2人、中国から5人、タイから1人、米国から5人、欧州から2人の計18人。特にブレインアジアと題されたセッションでは、中韓タイ台の3か国1地域から招待した7人とともに、阿部会長も講演を行なった。このために特別な会長講演は設けなかったという。ポスターセッションでも、韓国5題、中国1題、台湾1題の計7題が採択された。

 次期総会は来年の10月30日と31日に富山市の富山国際会議場で開催される。会長は富山大学附属病院神経内科の田中耕太郎教授。第28回は徳島大学脳神経外科の永廣信治教授が会長。再来年の11月11日と12日の2日間、徳島市のホテルクレメント徳島で開催予定。

 近年学会は神経内科と脳神経外科の寡占的傾向があったというが、今回は、脳科学や脳機能の研究者のほか、血管や麻酔、救急、認知症、新生児脳障害などの、さまざまな分野の専門家が出席したという。そのため、シンポジウムは3会場で講演された。演者も多彩で、大学教授など多くの専門家が登壇した。新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野の下畑享良准教授は、血栓溶解薬「t│PA(組織プラスミノゲン・アクチベーター)」の静注療法後の脳出血合併症を抑制する治療としてVEGF(血管内皮増殖因子)抑制療法を紹介した。現在VEGF抑制療法はベンチャー企業を設立し、臨床試験の実現を目指しているとして、特許出願についての経験も伝えた。下畑准教授は「特許は新規性と非公開が要件なので、学会発表や論文として公知できず、研究意欲の維持が困難だ。特許取得が大学院生教育のジレンマになっている。また医薬品特許は海外出願が不可欠であるため高額で、これも障害だ」と述べた。また「強固な動物実験のデータ、知的財産権の取得、産学連携の理解が、死の谷(資金調達などの問題で、開発された技術が事業化に至らないこと)をこえるためには不可欠だろう」と述べた。

脳梗塞急性期の診断・病態と治療

 徳島大学脳神経外科の永廣信治教授と国立循環器病センターの峰松一夫副院長を座長に、「脳梗塞急性期の診断・病態と治療」のテーマで6人の演者が登壇した。

 日本医科大学大学院医学研究科神経内科学分野の木村和美大学院教授は、発症時間が不明な脳梗塞患者の発症時間をFLAIRで推測する方法を説明した。発症時間不明な患者の約30%には、t│PAが使えると推定できるという。

 川崎医科大学脳神経外科の宇野昌明教授は、急性期血行再建術の現状を説明した。課題として、t│PA無効例の患者に対し、素早く血管内血栓除去術が施せる院内環境を作ることをあげた。また治療選択は、内科と外科が協力して行なうが、その時間を短縮することが必要だと述べた。

 川崎医科大学脳卒中医学教室の八木田佳樹教授は、血管を標的とする急性期脳保護療法について講演。「一酸化窒素ドナーを急性期に投与することで、有効な脳保護効果が得られる可能性がある。脳保護療法は再灌流が得られない場合に一般的な療法に追加し、また再灌流療法に加えることでより転帰改善につながる」と説明した。また急性期での血圧上昇は再発や予後不良と相関するが、脳梗塞急性期の降圧療法も機能予後悪化傾向にあるというデータを示し注意を呼びかけた。

 東北大学大学院薬学研究科・薬学部機能解析薬学講座薬理学分野の福永浩司教授は、「脳虚血・再灌流障害とグルタチオンの脳保護作用」のタイトルで講演。マウスを用いて経口グルタチオンの脳保護作用を検討した。

 台湾脳中風学会理事長も務める台北長庚紀念医院神経内科の李宗海主任教授は、頸動脈が与える脳血流への影響を、英語講演で話した。国立循環器病センターの横田千晶脳血管内科医長は「脳卒中急性期におけるバイオマーカー」というタイトルで講演し、ペントシジンが脳卒中発症リスクのバイオマーカーになる可能性をデータで示した。


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