社会福祉法人 済生会みすみ病院 院長 藤岡 正導
藤岡院長の取材は宇城市にある病院ではなく、熊本市南区の済生会熊本福祉センターで行なった。熊本県内の済生会はすべて、済生会熊本病院から派生した施設で、連携が密であるという。済生会熊本福祉センターには医師が常駐しておらず、何かあった場合は医師がすぐに向かう体制ができているそうだ。
院長になって5年目です。
国立療養所三角病院が済生会に移譲され、済生会みすみ病院として開院したのは、2003年3月のことですが、当時私は済生会熊本病院の副院長でした。何年も前から移譲の計画に関わっていましたが、当時は自分が院長になるとは全く思っていませんでしたね。
当院は140床の病院で、ケアミックス型の病院です。40床の回復期リハビリテーション病棟と、30床の地域包括ケア病床を持っています。半径20㎞以内に病院がないため、多くの役割を担っており、患者さんは隣の上天草市からもお見えになります。
当初は熊本市内の急性期病院への橋渡し的な機能を考えていました。でも地域住民の強い要望があり、急性期も担っています。効率的な病院運営のためには、多くの病床機能を持たない方が良いのですが、地域住民に求められているならば喜んでやろうと考えを改めました。急性期から地域包括ケアまでカバーすると、特に看護師の配置が難しいことになりますが、看護部が協力的なので、大きな問題はありません。
地域包括ケア病床はいち早く導入したことになりますが、亜急性期病棟を転換し、スムーズに済みました。新しく始まった区分なので、導入に踏み切れない病院もあると思いますが、在宅との橋渡しの病床が必要ならばぜひ作るべきだと私は思います。当院では良く機能しています。
私は脳外科医なのですが、急性期の病院に長くいましたので、脳卒中の患者さんが最終的にリハビリでどの程度回復するのかを、きちんとは知らずにいました。この病院に来て現代のリハビリの威力を目の当たりにし、驚きましたね。どれぐらい治るのか半信半疑で後方の病院に送っていましたが、改めて凄いということが分かりました。
当院は急性期からお宅に帰すまでを通しで診ることができます。急性期で頑張りたい脳外科医も、一度ケアミックスの病院で研修を受けるべきだと、私は考えるようになりました。当院には済生会熊本病院などから脳外科医や神経内科医、研修医などが勉強に来ます。先日は済生会横浜市南部病院(横浜市港南区)からも研修に来られましたよ。
病院機能の分化は良いことだと思いますが、急性期の医師が最終的な回復の程度を知らなくなったのは弊害かも知れません。回復することを知っていれば、モチベーションも上がります。
病院は小高い丘の上にあり、木々に囲まれ、また海を見渡せます。もとは結核の病院で眺めは良く、職員の募集には苦労していますが、患者さんには喜ばれる環境です。以前は屋内でのリハビリテーションしか行なっていませんでしたが、私は屋外でもできるように庭園をリハビリ用に整備しました。復帰意欲を高めるようなせっかくの景観ですから、屋外でリハビリをしていただきたいと考えたのです。
また、PTやOT、STも私が院長になってからずいぶん増やしました。院長になったころは全部で7人でしたが、今は40人近いスタッフが働いています。最初は苦労しましたが、働いている人が出身校にアピールしてくれましたので、今は希望者が多くあります。学会への参加を推奨していることも魅力のようです。
当院の一番の売りは回復期リハビリテーション病棟だと考えていますので、環境の整備と人員の増強は頑張りました。今は患者さんがいつも入っているような稼働率で、6割から7割くらいは脳卒中の患者さんです。
また、多職種のスタッフが全体で脳疾患診療に関わっています。全職種のスタッフが脳疾患に精通すれば、脳神経外科医の不足を補うだけでなく、それ以上に質の高い医療を提供できます。今後はこの試みを全科に広げたいですね。
院長になってからは、病気に対する啓発活動も強化しました。
以前は糖尿病や脳卒中など、重症化してから来院する人が多かったのですが、それでは大変です。私は自ら出前講座に行き始めました。現在は病院全体の取り組みとなり、年間70回ほど行なっています。
また毎年10月に院内を開放し、健康フェスタというお祭りを始めました。出店のほか、健康講座やメディカルチェックなどの催しがあり、今年は850人を超える住民が参加しました。
これらは確実に効果があり、今は軽度の状態で受診する人が増えていて助かっています。