腎臓を診ることは全身を診ること

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長崎大学病院 腎臓内科/教授 西野友哉

経歴 1997 年長崎大医学部卒、同大第二内科入局。佐世保市立総合病院、聖フランシスコ病院、国民健康保険松浦市民病院などを経て、2005 年ベルギー・ルーヴァン大腎臓研究部門研究員。長崎大医歯薬総合研究科病態病理学助教、同大病院血液浄化療法部助教、同大大学院組織細胞生物学分野助教、同大病院第二内科(腎臓内科部門)講師の後、2014 年8月から現職。

 今年、新たに腎臓内科教授を置くことになった長崎大学病院。8月に初代の西野友哉教授が就任し、約4か月が過ぎた。まだ新しい教授室に西野教授を訪ねた。

教授に就任して

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 若い先生に腎臓の魅力を分かってもらい、腎臓内科を志す先生がたくさん入局してくれればという思いがあります。今までも毎年3人から6人が入局してくれているので大変ありがたく、特に優秀な女性に人気なのが特徴です。

 4年ほど腎臓内科のグループ長だったので、診療や教育のところは大きく変わっていないと思いますが、公的な講演や会議は増えましたね。そこについては、あまりストレスは感じないほうだと思います。ただ若い人が毎年入ってくれるようにする、その責任はますます重いと感じています。

腎臓内科の魅力とは

 腎臓は神秘的な臓器で、尿をつくるだけではなく体液のコントロールやナトリウム、カリウムといった電解質のバランス調整、赤血球を作り出すホルモン(エリスロポエチン)の産生、血圧コントロール、骨を強くする作用など、たくさんの役割を持っています。全身の中でどう働いて、どの部分が病気になると、どこがどう障害されて...と理論的に考えられる臓器なのが人気の理由かなと思います。

 一方で、腎臓は高血圧や糖尿病、膠原病といった全身の病気の影響も受けるので、腎臓のことだけを知っていても役に立たないんです。つまり腎臓を診るということは全身を診ていかないと、きちんとした診療ができない、それも魅力だと思います。専門の垣根を超えて幅広く知識を持っておく必要がありますね。

 腎臓が悪くなる初期というのは蛋白尿、つまり検尿異常なんです。そして20年30年と長い期間かかって、最悪の場合 には腎不全という状況に陥ります。腎不全になっても、治療法として透析や腎移植という腎代替療法があります。病気の初期から末期まで一貫して診療にあたることができ、患者さんに寄り添う医療ができるというのが腎臓内科のもうひとつの魅力かなと思います。

 今、慢性腎臓病(CKD)をあちこちで取り上げていただいていますが、最近の報告で腎臓の悪い患者さんは腎不全に陥るだけでなく、心筋梗塞や脳卒中といった命にかかわる血管の病気にかかるリスクも高いことが分かってきました。CKDの患者さんは全国に1330万人いると言われていて、成人の8人に1人の計算です。膨大な数の患者さんですので、普段診ておられるかかりつけの先生と大学病院などの腎専門医とがしっかりとタッグを組んでやっていく病診連携がとても大事ということになります。

大学病院の役割は

 蛋白尿など検尿異常をきたした人の原因を明らかにするために腎生検をして、病理で診断し、適切な治療をする、ここが大学病院の大きな役割のひとつだと思います。

 腎臓は沈黙の臓器と言われていて、病気が進行して透析直前になるまで自覚症状はほとんど出ません。ちゃんと検尿さえしていれば早期に発見でき、透析まで至らない場合も多くあります。

 しかし腎臓には、この薬が必ず効きます、という特効薬がないんです。ですから、腎臓病の克服というのが、われわれ腎臓内科医にとっては最大のテーマであり、使命であると考えますね。

 また、透析患者さんが、手術や高度な医療が必要となって大学病院に入院した場合には、透析療法については腎臓内科と泌尿器科とが連携して診療にあたっています。

 大学病院では教育も重要です。回診は教育面で特にいい機会なので、病気の診断名や治療の一般的なことだけでなく、その原因や病態といった病気の根っこの部分について学生や研修医たちに尋ねるようにしています。

 大学にくる患者さんはすでに診断名が付いていることが多いので、「その病気はそもそも何が悪くてこの状態になっているのか」「この検査値の異常はどういう機序でなっているのか」と尋ねると、意外とわからないんです。この病気にこの薬、というのは最終的には調べればわかることですし、その答え、結果だけを知っているというのは危険なことです。病気の本態がここだからこの薬、効かなければ他の薬というふうに考えるくせを付けて、診療の幅を広げていってほしいと思っています。

一人前になるために

 患者さんの選り好みをしないことです。どんな患者さんからも得るものが必ずあります。その病気を1回診たことがあるというのと、本からの知識だけでは全然違います。患者さんを担当するチャンスがあれば積極的にその機会をものにし、しっかり勉強して経験と知識を蓄積する、その積み重ねが大切だと思います。

 そして、我慢強く最後まで自覚症状を表さない腎臓に向き合うので、腎臓内科の医者も、我慢強く長く患者さんを診ていける人が向いていると思います。

腎臓内科医になったのは

 人の役に立てて、行く学部と職業とが直結しているのが医学部だったんです。お世話になった人や親に孝行できて、最期までその命に携わることができるのは医者かな、とも思いましたね。

 腎臓内科を選んだのは純粋に腎臓が神秘的だったから。分からないことも持っている役割も大きいので、小さな臓器ですがキラリと光る魅力を感じました。小さなころからお医者さんと言えば内科だったので、ジェネラルに診たいという思いもありました。

 医者になって良かったと本当に思います。少しでも人の役に立てたかなと肌で実感できるのは、魅力とともにやりがいにもつながっています。その病気が重篤であるほど「なぜ、この人に」と感じます。だからこそ一生懸命がんばって、真摯な姿勢で診療にあたっていかなければと思います。


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