テーマは「慢性腎不全医療の原点回帰」

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第47回九州人工透析研究会総会 =大分市=

 11月30日、大分市のiichiko総合文化センター、大分オアシスタワーホテル、全労済ソレイユの3会場で、第47回九州人工透析研究会総会が開催された。総会長は、研究会の会長で、大分大学医学部腎泌尿器外科学講座の三股浩光教授。運営事務局は、㈱コングレ九州支社。217題の応募があり、口演114題、ポスター103題が採択された。主催者発表によると、参加者は1800人を超えたという。

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閉会式であいさつをする三股総会長(右)。

 三股総会長によると、同研究会は慢性腎不全医療に関する九州最大の研究会で、1986年に発足した。同年に発足した人工透析研究会(現日本透析医学会)に次ぐ、日本で2番目の透析に特化した研究会。共同で研究をし、今後は九州から新しいエビデンスをもっと発信していきたいと同氏。来年は研究会の論文集を出す予定もあるという。

 今回の総会は、睡眠障害やうつ、難治性掻痒症、筋力低下などQOLに関するもののほか、認知症や終末期看護など、高齢化社会を反映した演題が多かったことも特徴。

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血液浄化に関する演題で座長を務めた九州大学鶴屋教授。会場からの質問は少なかったが、教授が質問をすることで、各講演の内容が補われた。

 九州大学大学院医学研究院包括的腎不全治療学の鶴屋和彦教授が座長を務めた血液浄化に関する演題では、TEN(中毒性表皮壊死症)や難治性ネフローゼ症候群、RPGN(急速進行性糸球体腎炎)、血漿交換が奏功した食道静脈瘤破裂の例などの症例報告に、多くの参加者が関心を寄せた。聖マリア病院腎臓内科の森山智文氏の発表は、難治性両眼不均衡症候群に関する症例。森山氏によると、患者は慢性糸球体腎炎による末期腎不全で、透析後右の眼圧に著名な上昇が認められたという。高ナトリウム透析が症状改善には有効だったが眼圧管理には難渋し、緑内障手術によって改善したと結果を述べた。また、産業医科大学病院腎センターの坂東健一郎氏は、後天性血友病に対する血液透析導入の報告を行ない、バスキュラーアクセス術前のDFPP(二重膜ろ過血漿交換療法)や術中の血液製剤投与が周術期の出血コントロールに有効と述べた。

腎移植の現状と未来の展望

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上から順に、東京女子医科大学の田邉教授、大分三愛メディカルセンターの野村最高顧問、大分大学の柴田教授、順天堂大学の堀江教授。

 大分三愛メディカルセンターの野村芳雄最高顧問を座長に、東京女子医科大学泌尿器科の田邉一成教授が、ハイリスク腎移植の現状を講演した。腎移植のハイリスクレシピエントには、冠動脈疾患や心機能疾患などの心血管病変、不十分な透析患者、高齢者、長期透析患者、下部尿路障害などの非免疫学的ハイリスクレシピエントと、抗HLA抗体陽性例や血液型不適合、自己免疫疾患などの免疫学的ハイリスクレシピエントに分けられる。今回は特に高齢者のケースについて多くの説明があった。

 田邉教授は、最近10年間の成績の向上は著しいと言い、「高齢レシピエントも腎移植を受けた方が生存率がよい」、「期待予後が1・8年以上なら腎移植を受けた方がよい」、「生体腎移植が最も死亡率は低い」などのデータを示した。未認可だがリツキシマブなどの新しい免疫抑制効果を持つ薬剤が使用されるようになり、移植腎生着率は90%以上、20年生着率も80%近いという。移植の成績が向上した原因としてほかに、免疫学的検査法が発達し、リスク評価が容易になったこと、腎移植直後に発症するCMV(サイトメガロウイルス)、BKウイルス、エプスタイン・バール・ウイルスなどの感染症に対し、検査と治療法が確立されたことをあげた。

 近年の10年生存率は97%前後だが、手術に直接起因するリスクは依然として問題で、高齢者の腎移植では心血管系の内科的精査が特に必要とのこと。項目として心機能や虚血性疾患のチェックのほか、末梢血管も含めた血管病変の評価をあげた。管血管造影は不要だが、負荷心電図思考は施行が望ましいとの意見も述べられた。

 また血液型不適合症例に関する最新研究として、東京女子医科大学泌尿器科の「腎移植における免疫学的寛容誘導の研究」を伝えた。カニクイザルを用いた実験で、19例中17例がキメラになったという。8例は、移植の1年後も正常な腎機能を保っており、キメラ継続を確認して免疫抑制剤を中止したとのこと。

ADPKDの 新しい治療

 大分大学医学部内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座の柴田洋孝教授を座長に、順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科学の堀江重郎教授が、トルバプタンを用いた臨床試験など、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)について説明した。

 ADPKDは3千人に1人の頻度で発症する、遺伝性腎疾患の中で最も頻度が高い疾患。国内の推定患者数は3万1千人だという。日本の透析患者における導入原疾患別割合では3%を占めるとのこと。ADPKD患者の約半数は、70歳までに末期腎不全に至るという、厚労省進行性腎障害調査研究班の推算が紹介された。

 堀江教授は、厚労省進行性腎障害調査研究班のガイドラインによる診断基準のほか、「降圧療法が高血圧をともなうADPKDの腎機能障害を抑制する可能性がある」など、多発性嚢胞腎診療の最新ガイドラインを紹介した。

 このほか、来年元日より施行される「難病の患者に対する医療等に関する法律」と難病医療費助成制度の趣旨と概要を説明した。法の成立によって、助成の対象が110疾病に増えたという。

企業協賛セミナー

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済生会八幡総合病院の安永部長(上)と池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニックの安田副院長。

 日機装㈱の協賛セミナーは立ち見が出るほど好評で、同社の透析通信システムの導入事例が池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニックの安田透副院長から報告された。安田副院長によると、日機装㈱の透析システムはカルテと融合したさまざまな職種が関わることを前提に開発された情報共有システムで、同院では回診時にも活用しているという。情報を見るための端末は、電子カルテに用いるPCのほか、タブレットなどからも参照でき、患者に見せながら説明するのに便利だという。透析記録のほか、投薬履歴、検査結果などを長期にわたって簡単に参照でき、短期的な改善や悪化だけを見ないので、回診時に治療計画が立てやすいと感想を述べた。

 回診は通常医師だけが行ない、その後にコ・メディカルに指示を出すが、池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニックではコ・メディカルが一緒に回診し、その際に医師は指示をする。これはコ・メディカルにとって指示内容の意味を理解しやすい方法で、結果能率的になり労働時間が短縮されるという。また医師も回診時にコ・メディカルの意見を参照できるため、現状にそった指示が可能になると述べた。回診に同行させることで、コ・メディカルの判断力が高くなり、患者の健康状態編の意識や責任感も高まるが、そのためには医師が自分のやり方にこだわることをやめる必要があるという。チーム医療をより良い形にするためには、ツールやコ・メディカルの努力だけでなく、医師の意識の変化が重要だと意見を述べた。 このシステムは、患者体重などの情報を入力することで除水量や除水時間を自動計算するので、ミスが減るという。そのほか、透析記録を自動作成するなどの機能のために時間的なゆとりができ、透析中に患者と看護師が話すことができるようになったと報告された。

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次会総会長の長崎大学酒井教授は豊富を述べた。

 座長は済生会八幡総合病院腎センターの安永親生部長が務めた。座長の時間配分は巧みで、会場からの多くの質問が受け付けられた。

 次会は来年12月6日、長崎ブリックホールと長崎新聞文化ホール・アストピアの2会場(長崎市)で開催される。次会総会長の長崎大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器科学の酒井英樹教授は閉会式で、「教室員一同や県内の透析施設の先生方と力を合わせ、万全の準備をしたい」と述べた。


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