医療法人徳寿会 理事長・鴨島病院 病院長 土橋 孝之
鴨島病院の礎を築いていただいた初代理事長は、今の私たちでは考えつかない先見の明があり、その遺産として現在の病院の要とも言える大きなリハビリ施設と268床の充実した医療施設を残してくれました。
この病院は90年代には高齢者医療中心の病院で、病床稼働はほぼ満床となり、地域住民の要望にお応えしながら、長期療養型の医療を提供させていただいていました。現在では吉野川市、阿波市、石井町等の人口11万の住民の皆さまに医療介護の安心と満足を提供する使命を持つ病院に変革しています。
私が2000年に着任した際、とにかくスタッフが素晴らしいことに一番に目が行きました。それでここで私が目指す病院づくりをしようと決心したのです。
翌年に回復期リハビリテーション病棟を開設し、急性期治療を終えられた患者さんの在宅復帰に向けた支援ができる体制を整えました。今では回復期リハビリテーション病棟2病棟、87床となりリハビリのスタッフ90名は県内トップクラスと自負しています。私たちを選んできてくださる理由に、「鴨島病院は医師、コメディカルのチームアプローチの総合力が素晴らしい」と言われますが、それこそが我々が目指すことなのです。
この病院に来られる方のほとんどが各医療機関からの紹介です。地域唯一の急性期病院である麻植協同病院をはじめとする、各医療機関から当院へご紹介いただき、治療を引き継ぎ、必要なサービスを提供させていただく。さらに後方の支援病院や介護施設と連携を図って患者さんやご家族の要望を重要視し、目標達成に向けた対応を心掛けています。スタッフ全員で患者さんを支援するという姿勢です。
医師の治療やリハビリテーションにおける各種療法を実施しても、疾患によっては完治が困難で、麻痺や痛みのような障がいが残る方もいらっしゃいます。したがって、私たちは病気を診ることと同様に、「人」を診る事を重要視しています。退院後もその方の人生はつづいていきますから。ソーシャルワーカーをはじめ、スタッフは病棟他すべての場所に出入りして職務を遂行してもらっています。病院のなかに壁や垣根はありません。まず地域の皆さんに愛される病院でありつづけなくてはなりません。
また、在宅介護支援として通所リハビリテーションを介護保険がスタートした時期に開始し、現在は訪問リハビリテーションも実施しており、「鴨島病院に来ていただいた患者さまには最後まで(退院まで)責任を持ちます」を合言葉に、介護老人保健施設、認知症対応型グループホームも運営しています。おかげさまで地域の方たちとの信頼関係は良好で、私たちの病院に期待して来てくださいます。責任は重大ですが、やりがいは大きいです。
今医療機関においては介護スタッフ、看護師不足の問題はどこも同じだと思います。私たちは、ベテランの方に責任を持って自由に実力を発揮していただくことと、再就職雇用で数を多く集めています。職場の雰囲気が良ければ必ず人材は来ます。ケア専門士などライセンス取得だけでなく、リハビリするために鴨島に来る患者さんの専門的な対応をしてくれる、看護、介護の専門家として信頼して働いてもらっています。
現在徳島県の医療施設は飽和状態ですが、高齢者は増えますから各部門で提供できる「専門性」と「質」を高め対応していく計画です。
目的志向力とチームアプローチを実践する現場の力。スタッフが鴨島病院の財産です。
回復期リハビリテーション病棟の充実を図り、急性期治療のあとをいかにして引き受けるか。地域包括病棟の開設も検討し、往診や在宅医療に積極的に取り組み、どのような生活支援を提供できるのか。維持期の患者さんの心身のケアをどう支えていくのか。急性期医療後の切れ目のない医療、介護サービスの提供を心掛けたいと思います。
近隣の麻植協同病院が来年5月に新築移転し地域の拠点病院となります。私たちもハード、ソフトの両面から先行医療機関より多くの情報や環境を学ばせていただき、病院連携を強化して地域のニーズに応え得る病院を構築していきたいと考えています。
11月には首都圏で3番目の介護老人保健施設「プラチナ・ヴィラ宮前」を開設することができました。これは在宅生活継続の支援として、身体機能・社会性の維持向上のためにリハビリスタッフ、介護スタッフが機能訓練やレクリェーションなどを行い、医師、看護師、介護士、理学・作業・言語聴覚療法士、管理栄養士など、多職種が連携して、よりご家庭に近い環境でお過ごしいただけるよう、心のこもったケアを提供するものです。
また、鴨島病院においては地域に対するリハビリ支援の一環として、数年前から吉野川市と「阿波踊り体操」プロジェクトを企画しDVDを制作しています。地域住民の健康推進を目的として市の保健師さんや健康推進委員の皆さんと病院のスタッフが共同で活動しています。
鴨島病院は今後も地域に根付いた成長する病院でありつづけたいと考えています。